VMwareを買収した後にライセンス体系を大きく変更したBroadcomは、強硬な姿勢を軟化させ、VMware製品の販売戦略を修正している。ただし懸念材料は残されたままだ。Broadcomの方針転換の内容と、専門家の見解は。
半導体ベンダーBroadcomは、2023年11月に仮想化ソフトウェアベンダーVMwareを690億ドルで買収した。その後、VMware製品の永久ライセンスを廃止し、プライベートクラウド構築用製品群「VMware Cloud Foundation」(VCF)を全面的に押し出す方針を発表した。
こうした方針転換はユーザー企業から反発を受け、混乱を生んでいる。Broadcomはユーザー企業をつなぎ止めるために、どのような“迷走”をしているのか。同社の動きは、ユーザー企業やパートナー企業にどのような影響を与えているのか。
VMwareの買収後、Broadcomは永続ライセンスを廃止し、VMware製品をVCFとサーバ仮想化ソフトウェア群「VMware vSphere Foundation」に統合し、サブスクリプション料金を引き上げた。この動きはユーザー企業やパートナー企業の怒りを買い、Broadcomは2024年10月にVMware vSphere Foundationのサービス内容を変更することになった。
Broadcomは2024年11月、パートナー企業の抗議を受けて、VMwareのユーザー企業上位2000社と直接取引するという計画を変更し、500社に減らしたと報じられた。AWS内でVMware製品を実行するサービス「VMware Cloud on AWS」の、AWS社とBroadcomのリセラーを通じた販売は、同年5月に終了した。その後同年11月にAWS社が新しくAmazon EVSを発表したことで、BroadcomとAWS社の関係が改善したことがうかがえる。
VMwareの買収以来、Broadcomの業績は好調だ。2024年12月の決算説明会によると、Broadcomの2024年度(2023年11月~2024年10月)の総売上高は過去最高の516億ドルと、前年比44%増加した。
BroadcomのCEOホック・タン氏は、プライベートクラウドを重視する戦略を打ち出している。買収以前のVMwareが、マルチクラウド(複数クラウドサービスの併用)やハイブリッドクラウド(クラウドサービスとプライベートクラウドの併用)戦略を掲げていたのとは対照的だ。
このような施策をもってしても、長期的にはVMwareのユーザー企業は大幅に減少すると予測する業界アナリストがいる。調査会社Gartnerによると、2024年のハイパーコンバージドインフラ(HCI)市場全体において、VMware以外の製品のシェアは30%を占める。この割合が、2029年には60%に増加すると予測する。同じく調査会社Forrester Researchは、VMwareユーザーの20%が最終的に他社製品に移行するとみる。とはいえ、VMware製品を使ってすでに数万台規模のVM(仮想マシン)を稼働させている大手企業にとっては当面の間、移行は難しいとの見方もある。
VMware製品からの移行先が複数に分かれる。VMwareのHCI製品とクラウド運用自動化製品に完全に入れ替わる、単一の製品は存在しない。
「Broadcomが失うシェアとユーザー企業について、結論を出すのは時期尚早だ」と話すのは、米Informa TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)のアナリスト、トルステン・フォルク氏だ。「VMware製品からの移行を希望する企業を狙うベンダーは複数存在するが、それらのベンダーが、VMwareユーザーがすでに他社製品に移行済みなのか、移行を計画中なのかを見極めるのは難しい」とフォルク氏は話す。
一部の戦略を変更したものの、Broadcomの問題が全て解決したわけではない。Broadcomのパートナー企業であるIngram Microは同年12月末、2025年1月にVMwareとの取引を縮小することを報道機関に伝えた。
バックアップツールベンダーVeeam Softwareのプロダクトストラテジー部門シニアディレクターであるリック・バノーバー氏は、Broadcomの戦略修正がVMware製品からの大量離脱を防ぐかどうかはまだ分からないと考える。「ユーザー企業をなだめようとするBroadcomにとって、Ingram Microのニュースは、逆風に思える」とバノーバー氏は語る。
次回は、AWSの戦略を紹介する。
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