データセンターにおいてSSDはさまざまな用途に使われるようになったとはいえ、HDDの代替が難しいと考えられる用途もあった。だが状況は変わりつつある。背景にどのような変化があるのか。
SSDの用途が拡大する中にあっても、SSDとHDDを併用するのがデータセンターにおいては一般的だ。だがSSDがあればHDDは不要とする考え方が一部で受け入れられつつある。そうしたHDD不要論が台頭する背景には、SSDの利用や進化に関わる“ある変化”がある。何がストレージの常識を変えたのか。
一部の用途ではHDDをSSDに置き換える動きはあっても、SSDよりもコストを抑制しやすいと考えられてきたHDDには依然として一定の需要があった。だがSSD1台当たりの容量増加の進化が続く中で、これをSSDのみにするという構想が以前よりも現実味を帯びてきている。
コンシューマー向けだけではなく、デーセンター分野でもSSDはシェアを伸ばしてきた。ストレージアレイを提供するベンダーの中には、SSDのみで構成する「オールフラッシュストレージ」のみを提供するベンダーもある。
とはいえ、SSDの容量や耐久性、コスト効率が改善されてきているとしてもHDDの需要は依然としてある。業界の有識者の見方を参考にすると、少なくとも2027年、2028年ごろまではSSDとHDDの併用は主流であり続ける。クラウドサービスを提供する規模のハイパースケールデータセンターや、メディア企業など保管データ量が多くなりがちな企業では、さらに先までSSDとHDDを併用する期間が続くと考えられる。
オールフラッシュデータセンターでは、全てのHDDがフラッシュストレージに置き換えられる。ただし使われるフラッシュストレージは、HDDのインタフェースとの互換性があるSSDだけに限らない。ストレージインタフェース「NVMe」(NVM Express)を採用した独自フォームファクター(形状や大きさなどの仕様)のフラッシュストレージとして導入される可能性もある。例えば、オールフラッシュストレージアレイを提供するPure Storageは、NAND型フラッシュメモリ搭載の独自モジュール「DirectFlash」を使用している。
オールフラッシュストレージ専業のストレージベンダーであるPure Storageでさえ、オールフラッシュの考え方が受け入れられるまでには時間がかかったと認めている。
「『オールフラッシュに移行しよう』と考える人は2012年時点では存在しなかったが、2015年、2016年ごろにはそうした考えを受け入れる人が出てきた」。Pure StorageのEMEA(欧州・中東・アフリカ)担当フィールドCTO(最高技術責任者)であるパトリック・スミス氏はそう語る。ただしそうした人であっても、想定するオールフラッシュストレージの用途は一部に限定されていた。主に対象になっていたのは、業務で頻繁に使用するデータだ。あまり頻繁には使用せず、入出力の高速性が重要ではないデータはオールフラッシュストレージの対象外だと捉えられていた。
スミス氏によると、状況は変わりつつある。以前と違う点は、今やフラッシュストレージは価格面でHDDと戦えるようになっていることだ。
業界のアナリストも、SSDの価格競争力が高まっていることを強調している。IDCの欧州担当シニアリサーチディレクターであるアンドリュー・バス氏によると、SSDの価格競争力が高まっている要因の一つは、「SLC」(シングルレベルセル)のフラッシュストレージから「QLC」(クアッドレベルセル)のフラッシュストレージへの移行が進んでいることだ。SLCとは1つのメモリセル(記憶素子)に1bitを格納する記録方式であり、QLCとは1つのメモリセル(記憶素子)に3bitを格納する記録方式だ。
データセンターでフラッシュストレージの採用が進み始めた当初は、SLCのフラッシュストレージの価格が比較的高価であったため、用途はデータ入出力の高速性が必要な用途に限定されていたという。これに対して昨今台頭してきたQLCのフラッシュストレージは、以前よりも導入しやすい価格になっている。「オールフラッシュストレージはミッドレンジやエントリーレベルのストレージシステムでも使われるようになりつつある」とバス氏は語る。
「QLCベースのストレージシステムがHDDベースのストレージシステムと同程度の価格帯で手に入る時代が来た」と、調査会社GigaOmのストレージアナリストであるマックス・モーティラーロ氏は語る。
次回は、オールフラッシュストレージ導入のハードルが下がりつつある中でも、オールフラッシュストレージへの移行が簡単ではない理由を解説する。
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