「オンプレミス版のSharePoint」をあえて選んだ方がいいのはどんな企業?いまさら聞けない「Microsoft SharePoint」の基本【後編】

「Microsoft 365」を契約すれば「Microsoft SharePoint」が付いてくる。それでもあえて「SharePoint Server 2019」を選んだ方がいい、という状況はあるのか。クラウドサービス版とオンプレミス版の違いを探る。

2024年04月09日 05時00分 公開
[Tim MurphyTechTarget]

 社内広報やナレッジ共有、マーケティングコンテンツの保管など、社内ポータルサイト構築ツール「Microsoft SharePoint」(以下、SharePoint)が役立つ場面は幅広い。

 SharePointが誕生した2001年以来、Microsoftは幾つもの後続バージョンをリリースしている。提供形態もクラウドサービスとオンプレミス版がある。バージョンや導入方法を選ぶヒントとして、それぞれの特徴を紹介する。

SharePointのクラウドサービス版、オンプレミス版の違い

クラウドサービス版

 MicrosoftがSaaS(Software as a Service)として提供する「Microsoft SharePoint Online」は、月額または年額で使用料が掛かる。SaaSであるため、企業がサーバライセンス費用やハードウェア費用、運用管理のコストを負担しなくてよい。

 インターネットに接続できる環境があれば、アカウントを持つ従業員はどこからでもMicrosoft SharePoint Onlineにアクセスできる。そのため、Microsoft SharePoint Onlineはテレワークに役立つ。ただしユーザー企業がサーバを所有しているわけではないため、システムのカスタマイズやデータプライバシーの制御には一定の制限がある。

オンプレミス版

 企業が自社データを完全に制御したい場合や、高度なコンプライアンス機能が必要な場合は、オンプレミス版SharePointの導入が選択肢になる。こうしたメリットを考慮すると、金融機関や政府機関などの法規制が厳しい業界は特に、オンプレミス版を選ぶ価値がある。

 オンプレミス版を使用するには、自社所有のサーバにSharePointをインストールすることが必要だ。長期的に見れば、オンプレミス版を選択することは費用の節約になる可能性がある。だが初期費用はSaaSに比べれば高く、サーバの運用やSharePointのバージョン更新を管理するIT担当者が要る。

ハイブリッド型

 クラウドサービス版とオンプレミス版を組み合わせることも可能だ。その場合はコンテンツをオンプレミスシステムからクラウドサービスに一度に移行するのではなく、段階的に移行するのが望ましい。機密性の高いデータはオンプレミスシステムに、機密性がそれほど高くないデータはクラウドサービスに保存する、という使い分け方もある。

 ハイブリッド型を選ぶ企業は、導入時の手間や運用管理の手間軽減といったクラウドサービスのメリットと、セキュリティ強化といったオンプレミスシステムのメリットの両方を享受できる。ただしハイブリッド型は、標準的な構成でMicrosoft SharePoint Onlineのみを採用する場合よりも高額な初期費用とメンテナンス費用が必要になりやすいことに注意が必要だ。

SharePointのバージョン

 SaaSのMicrosoft SharePoint Onlineと、原稿執筆時点で最新のオンプレミス版「SharePoint Server 2019」は、どちらも同等の機能を搭載しているが、導入と価格のオプションは異なる。以下に示す価格は、2024年4月時点の情報に基づく。

Microsoft SharePoint Online

 SaaSのMicrosoft SharePoint Onlineは月額または年額の使用料が掛かる。企業はサブスクリプションサービス「Microsoft 365」を契約し、その一部としてSharePointを利用することが一般的だ。Microsoft SharePoint Onlineだけを契約し、スタンドアロン製品として利用することもできる。

 Microsoft SharePoint Onlineと、アドオン(機能追加)ライセンスの「SharePoint Premium」(旧称Microsoft Syntex)を組み合わせると、人工知能(AI)技術を活用したドキュメント整理や分析が可能になる。請求書からベンダーの名前と住所を自動的に抜き出して、ワークフローの効率化を後押しする、といった自動化が実現可能だ。

 スタンドアロンのMicrosoft SharePoint Onlineの月額使用料はユーザー1人当たり749円(年間契約)だ。Microsoft 365ならば、月額使用料899円(年間契約)の「Microsoft 365 Business Basic」から、月額使用料8208円(年間契約、Teamsなし)の「Microsoft 365 E5」まで、幅広いオプションがある。

SharePoint Server 2019

 SharePoint Server 2019を使用する企業は、ソフトウェアをホストする複数のサーバ(SharePointファーム)を用意する必要がある。システム運用管理も自社でしなければならない。

 サーバごとにサーバライセンスを、エンドユーザーごとにクライアントアクセスライセンス(CAL)を購入する必要もある。米国ではサーバライセンスが1台当たり4000〜8000ドル、CALはユーザー1人当たり100〜300ドルというのが標準価格帯だ。


 SharePointのコンテンツ管理機能は、企業がワークフローを合理化し、チーム間でやりとりするデータを保護するのに重宝する。導入前にはシステムのカスタマイズとセキュリティに関する要件をまず検討し、自社のニーズに最適な導入モデルを選択するのが望ましい。

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