業務で発生するさまざまな形式のドキュメントを自動で処理する技術「IDP」は、多様な業務や分野での活躍が見込める。その仕組みと主要機能、具体的な活用例を紹介する。
「インテリジェントドキュメント処理」(IDP:Intelligent Document Processing)は、紙の書類や画像からデータを自動で抽出するためのワークフロー自動化技術だ。書類のスキャン、データ抽出、分類、整理といったプロセスを自動化できる。本稿は、IDPの仕組みやメリットを紹介する。
現代の組織は、構造化データ、非構造化データ、半構造化データといった膨大なデータを扱っている。特に非構造化データは、決まった形式を持たないため、組織は非構造化データの処理や分析に手を焼いてきた。IDPツールは、そうした形式が異なるドキュメントを扱うことが可能だ。
一般的なIDPツールは人工知能(AI)技術、「自然言語処理」(NLP)、紙文書を検索可能なデジタル形式に変換する「光学文字認識」(OCR)といった技術を活用する。これによって手作業でのデータ入力を削減し、書類の処理速度を向上させる。
以下のステップを通じてドキュメントからデータを抽出し、そのデータを分類、管理する。
最初の工程では、データを本格的に処理する前に、ドキュメントや画像の品質を向上させる。画像のノイズ除去やコントラストの調整を実施することで、抽出するデータの精度を高める。
あらかじめ定義されたルールや学習パターンに基づいて、ドキュメントを分類する。NLPとOCRを活用することで、より効率的なドキュメントの振り分けが可能になる。
AI技術やOCR、NLPを使用し、関連データを識別して抽出する。抽出後のデータは正規化や構造化といった技術を用いて処理する。
取り込んだデータの正確性を自動的に確認する。
データを分類し、保存、もしくは他の業務システムに送信する。
アルゴリズムを活用して、各処理の経験を学習し、時間とともに精度を向上させる。
企業はIDPツールを導入することで、以下に挙げる6つのメリットを享受できる。
さまざまな種類の大量のドキュメントを、追加の手作業を発生させずに処理できる。
ドキュメント処理を自動化させることで、手作業のデータ入力や書類整理にかかる人件費を削減できる。
人間による入力ミスや判断のばらつきを軽減し、データの正確性を高めることができる。
手作業よりも効率的にドキュメントを処理できる。
人間が定型的なドキュメント処理を実施せずに済むため、他の業務に集中できる。
IDPツールを他の業務システムと連携させることで、円滑なデータフローを構築できる。
一般的に、IDPツールは以下の機能を備える。
PDFファイル、Microsoftの文書作成ツール「Microsoft Word」用ファイル、メール、画像などを扱うことができる。
画像データに含まれる文字を認識し、テキストデータとして抽出できる。
AI技術を中核技術として、ドキュメント処理を自動化する機能を実現する。
抽出した文章の文脈や意味を理解して、データを抽出、分類できる。
ドキュメントの種類を自動で識別し、定義されたルールに基づいて整理できる。
ERP(企業資源計画)システムやCRM(顧客関係管理)システムといった業務システムと連携させることができる。
IDPツールは、以下をはじめとする分野で活躍している。
患者の医療記録を作成する際に、IDPツールを使ってさまざまな文書から情報を正確に抽出可能だ。保険請求処理の確認や、手作業による書類処理の削減にも貢献する。
経費管理、ローン申請、請求書処理といった、紙の書類のデジタル化を自動化することに活用できる。金額、日付、領収書、請求書などの重要なデータを文書から抽出することも応用可能だ。
膨大な法的文書や訴訟記録の処理、保管、管理に活用できる。
履歴書の処理、入社手続き、給与記録といった業務を自動化する。
保険証券の詳細、請求フォーム、関連書類などからデータを抽出し、保険金請求処理を効率化する。
発注情報、関連書類、コンプライアンス管理のデータ抽出に利用する。ERPシステムと連携させて運用することも一般的だ。
税務申告、許可申請、身元確認に関する文書の処理を自動化する。
次回は、IDPツールを導入する際の注意事項や具体的なツールを紹介する。
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