JavaとVMware、まさかの同時ライセンス再編が招いた“二重苦”の真相IT基盤の新たな標準はどうあるべきか【前編】

JavaとVMwareのライセンス体系が大きく変わったことが、企業のITコストを増大させる新たな懸念となっている。仮想化基盤に密接に結び付いたJavaアプリケーションの見直しは、今後のIT戦略にも影響を与える。

2025年07月15日 07時15分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

 プログラミング言語およびその実行環境を含むアプリケーション基盤「Java」と、VMwareの仮想化ソフトウェアのライセンス体系変更は、多くの企業にとっての運用コストに影響を与える問題だ。実際、多くの企業がJavaアプリケーションをVMwareの仮想化基盤で実行しており、この2つのライセンス変更は、密接に関連して企業のITコストやIT戦略に直結している。今後はクラウドネイティブ(クラウドインフラで稼働させることを前提にした設計)化を見据えた再設計を進める必要性も高まってくる中だ。

 IT部門にとって、長年にわたって基幹業務を支えてきたアプリケーションの最新化(モダナイゼーション)は、依然として大きな課題となっている。そうしたアプリケーションの開発において、Javaは主要な選択肢の一つであり続けてきた。

JavaとVMwareのライセンス再編による“ダブル打撃”

 Javaで開発されたアプリケーションは、Java実行環境「JRE」(Java Runtime Environment)上で動作するため、特定のOSやハードウェアに依存せずに幅広い稼働環境での運用が可能だ。「一度書けばどこでも動く」という理念に基づくJavaは、企業のアプリケーションの実行基盤として広く支持されてきた。Javaは、Java仮想マシン「JVM」(Java Virtual Machine)によって、プログラムの実行時に最適化処理を行う「ジャストインタイム(JIT)コンパイル」という仕組みを採用している。これはJavaアプリケーションがハードウェア性能を効率よく活用できる理由の一つとなっている。

 クラウドネイティブアプリケーションが一般化する以前に設計されたアプリケーションの中には、クラウドインフラでリホストしても効率よく動作しないものがある。中には、比較的容易にクラウドインフラに移行でき、その恩恵を受けやすいJavaアプリケーションもあるが、全てがそうとは限らない。特に、コンポーネント間の結合が強く、ハードウェアやソフトウェアを垂直統合(特定の機器やソフトウェア構成に最適化された一体型にすること)して設計されたシステムは、クラウドインフラではパフォーマンスが出にくく、スケーラビリティやリソース変更のしやすさといったクラウドインフラの利点を引き出し切れない可能性がある。

 Javaに特化したソフトウェア企業Azul Systemsの社長兼CEOであるスコット・セラーズ氏は、さまざまなレガシーアプリケーションが残るシステム環境では、企業が競争力を維持するために必要なスピードを確保することも、継続的にイノベーションを推進することも難しいと指摘する。セラーズ氏によれば、現在世界中で稼働しているJVMは約600億台に上り、そのうち約380億台がクラウドインフラで稼働しているという。「Javaは非常に広く普及しており、あらゆる種類のアプリケーションに利用されている」(同氏)

 クラウドインフラで稼働しているJavaアプリケーションの多くは、パブリッククラウドベンダーが提供する独自の仮想化インフラで実行されている。ただしVMwareの仮想化ソフトウェア群や、コンテナプラットフォーム「Red Hat OpenShift」などのインフラを使用していることや、ハードウェアで直接実行される必要があることもある。セラーズ氏によれば、余分なソフトウェアのレイヤーを望まない場合は現在でも仮想化されていない高性能アプリケーションが見られるが、アプリケーションの大部分は何らかの形の仮想化を取り入れていることが一般的だという。

Oracle、VMwareのライセンス変更が招く二重苦

 2023年にOracleはJavaのライセンス体系を「Java SE Universal Subscription」に一本化し、簡素化した。従来、VMwareの仮想化ソフトウェア「VMware vSphere」で稼働するJavaの場合、ライセンス価格はサーバの物理コア数に基づいていた。これに対してJava SE Universal Subscriptionは、従業員数に基づく課金となっている。ライセンス体系は簡素化された形ではあるが、これはJavaのライセンス価格の値上げにつながる可能性がある。

 Azul Systemsのような企業は、Oracleが提供するJavaの商用実装「Oracle JDK」を使用している企業に対し、オープンソースのJava実装「OpenJDK」を使った独自の代替ソフトウェアに移行させる機会を見出している。Azul Systemsの場合は「Azul Platform Core」として提供している。

 VMwareの仮想化ソフトウェアを使用してJavaアプリケーションを実行している企業は、Java SE Universal Subscriptionに加え、VMware製品群のサブスクリプションモデル「VMware Cloud Foundation」(VCF)の両方を契約する必要がある。これはBroadcomがVMwareを買収後、従来の個別ライセンス販売を終了し、仮想化ソフトウェア群をVCFにバンドルしたサブスクリプション形式にライセンス体系を一本化したためだ。多くのVMwareユーザーは、VCFのサブスクリプションに切り替えることでコスト増の問題に直面する可能性がある。


 次回は、Javaアプリケーションの移行を進める際に考慮すべきポイントを取り上げる。

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