BroadcomがVMwareを買収したことを受け、VMware製品のライセンス体系が大きく変わることになった。この変更を有意義に感じている人がいれば、理不尽に感じている人もいる。それぞれの意見とは。
Broadcomは仮想化ソフトウェアベンダーVMwareを買収してから、VMware製品のライセンスおよび製品戦略を刷新した。具体的にはサブスクリプション型へのライセンス体系の変更、製品バンドルの再編成といった変更がなされた。
この変更では、CPUのコア数に基づいて利用料金を決めるライセンス体系が導入された。これに対して、一部のユーザー企業は不安を募らせている。インドでBurger King(バーガーキング)を運営するRestaurant Brands Asiaもその一社だ。
Restaurant Brands AsiaでIT部門のアソシエイトバイスプレジデントを務めるマノジ・グプタ氏は、CPUコア数に基づくライセンス体系が及ぼす影響に関して、「この変更は年間を通してコストに大きな影響を及ぼすはずだ」と懸念する。
Oracleの「Oracle Database」や、SAPの「SAP HANA」など、CPU数に応じてライセンス料がかかるデータベースもRestaurant Brands Asiaは使用しており、それらの利用料金もすでにかさんでいるという。「この点を踏まえると、今回の変更により、アプリケーションやソフトウェアのコスト全体がさらに上昇する見込みだ」(グプタ氏)
こうした潜在的な課題はある一方で、「サブスクリプションライセンスへの移行が、長期的にはユーザー企業にメリットをもたらす可能性もある」とグプタ氏は言う。ただし価格や製品の有用性、ライセンスが受ける影響といった、短期的なリスクも潜んでいることを同氏は警告する。
「永続ライセンスからの移行が及ぼす影響に対処するには、専門知識が必要だ。だがこうした専門知識を持ち合わせる人材は、必ずしも社内にいるわけではない」というのがグプタ氏の見解だ。同氏が想定するのは、クラウドサービス運用管理ツール群「VMware Aria」や、ハイブリッドクラウド運用ツール「VMware HCX」だけではない。「SDN(ソフトウェア定義ネットワーク)やマルチクラウドセキュリティといった、VMwareの先進技術に関する専門知識が必要になる場合もある」と同氏は話す。
VMwareは、VMwareのライセンスを別ベンダーの製品やサービスで利用できるBYOL(Bring Your Own Licence)の選択肢も用意する。これによりユーザー企業は、システムがクラウドサービスにあるかオンプレミスシステムにあるかにかかわらず、VMwareのサブスクリプションを活用可能だ。
オンプレミスシステム用のVCFライセンスを、クラウドサービスでも使えるようにする枠組みもある。最初のパートナーになるクラウドベンダーはGoogle Cloud Platformで、その他のパートナーも後に続く見込みだ。
「VMwareの製品バンドルは、IT製品やサービスの管理や統合の合理化という点でメリットをもたらす可能性がある」。インドのIT変革を支援する非営利団体CIO Klubのプレジデントを務めるウメシュ・メータ氏はそう述べる。ただしその価値は、企業のニーズや使い方によるという。
メータ氏は、「VMwareの製品戦略に対する信頼は、過去の製品移行で経験したことや、自社の事業目標との合致度に応じて、ユーザー企業ごとに異なる」との見解を示す。リスクを最小化しようとして代替製品を探そうとする企業に対して、同氏は「他製品への乗り換えには互換性や機能を評価するための多大な労力が伴う」と指摘する。
次回は、VMware製品のライセンス変更を受けてユーザー企業のCIO(最高情報責任者)が下す決断の一例を紹介する。
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