「VMwareライセンス変更」でユーザーはある現実に直面 Broadcomの思惑は?VMware買収によるライセンス変更は妥当か【前編】

VMwareの買収に伴って、同社製品のライセンス体系が大きく変わった。一部のユーザーは新しいライセンス体系にメリットを見いだしているものの、懸念する声も上がっている。変化の意図と、ユーザーの声は。

2024年05月29日 07時15分 公開
[Aaron TanTechTarget]

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 Broadcomは仮想化ソフトウェアベンダーVMwareを買収してから、VMware製品のライセンスおよび製品戦略を刷新した。具体的には、永続型からサブスクリプション型へのライセンス体系の変更、製品バンドルの再編成などの変更が盛り込まれている。この動きを、APAC(アジア太平洋地域)のユーザー企業や有識者はどうみるのか。

「VMwareライセンス変更」のある狙い

 「Broadcomの主な目的は、VMwareの製品ポートフォリオを簡略化することと、時間をかけて製品の価値を高めていくことだ」。VMwareでクラウドプラットフォーム、インフラストラクチャおよびソリューションマーケティング担当バイスプレジデントを務めるプラシャント・シェノイ氏はそう語る。かつてVMwareは製品をさまざまな組み合わせで提供してきた。「これがユーザー企業の混乱の元だった。どの組み合わせを購入すればよいのか、何に役立つのかといった問い合わせを受けるのが常だった」とシェノイ氏は振り返る。

 VMwareのハイブリッドクラウド構築用の製品群「VMware Cloud Foundation」(VCF)は、コンピューティングやストレージ、ネットワーク、サービス管理といった各分野の製品を担当する部門が別々だった。「そのために製品同士が独立して連携が取れていない状態になり、複雑さを生んだ」とシェノイ氏は指摘する。

 そこでVMwareがまず取り組んだのは、VCFに含まれる製品群を扱う事業体を、1つの事業部門に統合することだった。シェノイ氏は、以下の分野および製品を扱う部門を例に挙げる。

  • コンピューティングリソースを抽象化するSDC(ソフトウェア定義コンピューティング)
    • サーバ仮想化ソフトウェア「VMware vSphere」によって実現する。
  • 物理的なストレージをソフトウェアで抽象化するSDS(ソフトウェア定義ストレージ)
    • ストレージ仮想化ソフトウェア「VMware vSAN」によって実現する。
  • ネットワーク機器をソフトウェアで制御するSDN(ソフトウェア定義ネットワーク)
    • ネットワーク仮想化ソフトウェア「VMware NSX」によって実現する。
  • ハイブリッドクラウドの管理、オーケストレーション、運用自動化
    • クラウドサービス運用管理ツール群「VMware Aria」によって実現する。

 VMwareは個々の製品ではなく、VCFと「VMware vSphere Foundation」(VVF)という、さまざまなニーズに応える製品群をユーザー企業に導入してもらう方針だ。シェノイ氏によると、VCFはプライベートクラウドの構築を目指す企業に適する。一方でVVFは、クラウドネイティブアプリケーションなど、モダンなアーキテクチャを持つアプリケーション用のコンピューティングインフラ最適化を目指す企業のニーズに適する。「VMwareのユーザー企業の大部分が、VCFとVVFを通じてサービスを受けることになる」と同氏は見込む。一部のユーザー企業は、特定の製品を単体で購入するよりも、VCFを利用する方が料金を抑えられる場合もあるという。

 「ユーザー企業に対して、長期的により多くの価値を提供するサブスクリプションモデルに移行するために、われわれは数年を費やした」。VMwareのアジア太平洋および日本部門でエンタープライズセールスリーダーを務めるサチン・シュリダー氏は、そう述べる。同社はユーザー企業と協力して、ユーザー企業がいま何を利用しているのか、何が必要なのか、VCFとVVFから価値を引き出せるようになるまでにどのぐらいの時間がかかるのかについて、理解を深めていくことも目標に掲げている。

 「われわれがユーザー企業に提供しなければならないのは、時間をかけて機能を導入できるようにする製品モデルだ。当社の各チームはそこに注力している」(シュリダー氏)

ユーザー企業とアナリストの反応

 アジア諸国を対象に金融サービスを提供するDBS Bankや、シンガポールの港湾運営会社PSAといった一部のVMwareユーザーは、VMwareの価格および製品戦略が自社に及ぼす影響に関するコメントを差し控えた。一方、見解を示したユーザー企業の中には、コストの上昇に対する懸念を募らせるものもある。

 インドでBurger King(バーガーキング)を運営するRestaurant Brands Asiaで、IT部門のアソシエイトバイスプレジデントを務めるマノジ・グプタ氏は、次のように述べる。「新しいライセンスモデルの導入により、会社の予算が大幅に増えた。サブスクリプションモデルへの移行は、金銭的な意味でユーザー企業側の重荷になるのは間違いない」

 今回のライセンスモデル変更についてグプタ氏は、プライベートクラウドだけではなく、パブリッククラウドにも影響が及ぶと考える。ただし、その影響がRestaurant Brands Asiaの損益計算書にすぐに現れることはないという。同社が購入済みの永続ライセンスを継続して利用できるからだ。ただし懸念もある。「一部のVMware製品のサポートは終了する。サポート対象外になれば、ライセンスの延長はできない」と同氏は述べる。

 BroadcomのCEOホック・タン氏は、2024年4月に投稿したブログエントリ(投稿)で、サポート対象となるVMware vSphereの各バージョンには、ゼロデイ脆弱(ぜいじゃく)性に対するセキュリティパッチ(修正プログラム)を無料で提供すると述べた。ゼロデイ脆弱性は、パッチが未配布の脆弱性を指す。他の製品に対しても、セキュリティパッチを順次提供する意向だという。こうしたBroadcomの対処により、「利用中のVMware製品のメンテナンスおよびサポート契約が終了し、サブスクリプション契約を結んでいないユーザー企業も、購入した永続ライセンスをセキュアに利用できる」とタン氏は主張する。


 次回は、ライセンス体系の変更に関する他の意見を紹介する。

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