BroadcomはVMwareの買収を完了してから、業界を困惑させる方針を矢継ぎ早に打ち出してきた。今回の事業売却の発表も例に漏れない。VMware製品が置かれた現状と、Broadcomの思惑を探る。
半導体ベンダーBroadcomが仮想化ベンダーVMwareの買収を2023年11月に完了させたことが話題を呼んだが、騒ぎはむしろ買収完了後に大きくなっている。ちまたの臆測を裏切らない形で、Broadcomが一連の方針を明かしてきたせいだ。ソフトウェアの永久ライセンス終了だけでなく、新たに発表したVMware製品群“売却”の話もそれに含まれる。いったん現状と、Broadcomが何を見据えているのかをまとめておこう。
Broadcomによる買収後のVMware(以下、VMware by Broadcom)は2023年12月、製品ポートフォリオの簡素化とライセンス体系の変更を発表した。ソフトウェアに関して永久ライセンスの販売を終了し、サブスクリプション型の提供モデルに全面的に移行するという内容だ。この際同社は、決断の理由を併せて説明した。それは「顧客やパートナーから、製品が複雑過ぎるという声が出ていた」といった趣旨の説明だった。
一部の製品は売却になる。対象になるのは、仮想デスクトップインフラ(VDI)「VMware Horizon」を含むエンドユーザーコンピューティング(EUC)事業だ。2024年2月26日(現地時間)、投資会社KKRが、BroadcomからEUC部門を約40億ドルで買収することを発表した。対象の製品には、統合エンドポイント管理(UEM)製品「VMware Workspace One」も含まれる。2023年12月にBroadcomのCEOホック・タン氏が説明した通り、同事業が切り離しになる話は、水面下で着々と進んでいたようだ。
今後、VMware by Broadcomの主力は「VMware Cloud Foundation」と、「VMware vSphere Foundation」の2つに集約される。同社の説明によれば、VMware Cloud Foundationは、大企業が必要とするハイブリッドクラウド構築用の製品群。VMware vSphere Foundationは、中小規模の企業が必要とする、より簡素化された製品群だ。これら2製品では、ストレージやセキュリティ、災害復旧(DR)など、アドオンとして利用可能な製品もある。
この製品ポートフォリオ変更の発表に伴い、VMware by BroadcomはVMware Cloud Foundationについて、従来のサブスクリプション料金を引き下げると説明した。サブスクリプションの購入を促す狙いを鮮明にした形だ。「より多くのユーザー企業が恩恵を受けられるように、サブスクリプション料金を引き下げると同時に、より高いレベルのサポートサービスを提供する」と同社は説明する。
調査会社Freeform Dynamicsの主席アナリストを務めるブライアン・ベッツ氏は、VMware by Broadcomがサブスクリプションモデルに舵を切ったことに関して、ユーザー企業は注意を払うべきだと指摘する。長期的に見ると、サブスクリプションのコストが買い切り型のライセンスのコストより安くなることはめったにないからだ。「サブスクリプションを購入する場合は、コストメリット以外の観点で購入理由を探す必要がある」とベッツ氏は言う。
その一方で、ベッツ氏はBroadcomの戦略についても一歩踏み込んだ見方をしている。着目するのは、Broadcomの過去の戦略をたどると、買収した企業の価値を2~3年で最大化しようとしている点だ。“価値を最大化”するには、コストを削減すると同時に、売上高を増やすことが欠かせない。この1本の筋に沿って、サブスクリプションへの移行や、一部製品の切り離しや提供終了、VMware従業員のレイオフ(一時解雇)といった一連の動きが進んでいると見ることができる。
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