Amazon S3やSageMakerで作るドローンサービス AWSを使う理由とは?スタートアップのAWS活用術

ドローンサービスを手掛けるマレーシアのAerodyneは、世界規模でサービスを提供するためのインフラとしてAWSのクラウドサービスを利用する。AWSを利用する狙いと、生み出している成果とは。

2024年02月27日 08時00分 公開
[Aaron TanTechTarget]

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 マレーシアを拠点にして世界各国でドローンの運用を支援するスタートアップ(創業後間もない企業)Aerodyneは、独自のSaaS(Software as a Service)「DRONOS」を提供している。ドローンを介したデータの取得やデータ分析を可能にするインフラとして同社が利用しているのが、Amazon Web Services(AWS)の同名クラウドサービス群だ。

 Aerodyneは衛星画像や気象データ、ドローンが取得したデータを格納するストレージとして、オブジェクトストレージ「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)を使用。データ分析のための機械学習モデルの構築や訓練、アプリケーションへの実装には、機械学習モデル構築サービス「Amazon SageMaker」を使用している。同社がAWSを利用する理由と、ドローンサービスが創出している成果を探る。

世界各国で提供 AWSを活用したドローンサービスとは

 Aerodyneの創業者兼グループCEOのカマルル・A・ムハメド氏によると、ドローンは幾つかの産業分野において成果を上げているという。下記はその一例だ。

  • 農業の種まきや植物分析などの作業にドローンを使うことで、農家の収穫量を60%以上増加させることに成功。
  • 電話会社やガス会社など、生活インフラの運用や保守に関わる企業がドローンを利用することで、設備管理コストを削減。

 具体的な例としてAerodyneは、マレーシアのエネルギー大手Petroliam Nasional(PETRONAS)の設備管理業務のデジタル化を支援した案件を挙げる。PETRONASは合計2000キロに及ぶガスパイプラインを監視するために、航空機や車の代わりにドローンを使っている。センサーが異常を検知したとき、AI(人工知能)技術を搭載したドローンが調査を実施する。「ドローンは検知した内容が対処不要なものなのか、深刻なリスクがあるものなのかを判断できる」と、ムハメド氏は説明する。

 2014年の創業以来、Aerodyneは通信分野を中心にドローンによる支援を続けてきた。携帯電話の基地局をドローンで監視できるようにすれば、作業員が現場に出向いて点検する回数が減り、基地局の運用コスト削減につながる。

 AWSのサービスを使う理由や利点として、ムハメド氏は以下の点を挙げる。

  • 世界各国でDRONOSを提供し、さまざまな業種の複雑な課題解決に貢献するためのインフラを構築できる。
  • 拡張性のあるクラウドサービスを利用できる。
  • 機械学習サービスを活用することで、ユーザー企業はドローンが取得したデータを使い、迅速かつ正確な意思決定を実施できるようになる。

 Aerodyneは45カ国に1000人以上のドローン専門家チームを有しており、各国の需要に応じてシステムを拡張できることが重要だ。創業当初はユーザー企業ごとに特注でシステムを開発していたが、拡張性を持たせるために、ユーザー企業が必要とする共通の機能をシステムに組み込んだ。ユーザー企業はシステムのダッシュボードに、自社で測定したい指標を選択して組み込むことが可能だ。例えば機器の故障予知に熱検査の検査結果を使いたい場合、温度差に着目するか、絶対温度に着目するかを選択できる。「ユーザー企業が望む機能を、望む方法で使用できるようにさまざまな選択肢を提供している」とムハメド氏は説明する。

 SAPやOracleのERP(統合基幹業務システム)と連携するAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を提供していることも、Aerodyneのサービスの特徴だ。「データが孤立する状態は望ましくないため、ERPとのデータ連携に注力している」(ムハメド氏)

 Aerodyneはテキストや画像などを生成するAI技術「生成AI」の活用に向けた準備を進めている。ユーザー企業がドローンの飛行計画を作成したり、保有資産を管理したりする作業をより容易にすることが狙いだ。それに当たり、1PB(ペタバイト)規模のデータを学習した大規模言語モデル(LLM)を構築する計画だという。

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