BroadcomがVMwareの買収を2023年11月に完了した。買収後も開発や提供が続く可能性が高いVMware製品、売却になる可能性のある製品は何か。VMware製品が今後どうなるのかを考える。
半導体メーカーのBroadcomは2023年11月に、仮想化ベンダーVMwareの買収を完了した。Broadcomの最高経営責任者(CEO)のホック・タン氏は合併後の会社について、「ユーザー企業のハイブリッドクラウドインフラの構築や、インフラのモダナイゼーションを可能にすることに重点を置く」と述べていた。ただしBroadcomがこれまで買収と売却を繰り返す戦略を取ってきたことを考えると、VMwareの全製品に同じように重点が置かれ、従来と変わらず提供が続けられるとは考えにくい。
Broadcomが計画しているのは、ハイブリッドクラウドインフラを構築するためのソフトウェア群「VMware Cloud Foundation」への投資だ。その他に同社は今後も、コンテナ管理製品群「VMware Tanzu」や、エッジコンピューティング関連製品の提供を重視すると考えられる。
BroadcomのハードウェアとVMwareのソフトウェアという組み合わせがうまく機能する分野の一つが、エッジコンピューティングの領域だ。エッジコンピューティングには、店舗や病院、工場の作業場など、データの発生源の近くにおけるデータ処理が含まれる。「Broadcomのハードウェア事業は、VMwareのエッジコンピューティング戦略を強化する可能性を秘めている」。ITコンサルティング会社Enterprise Management Associatesのアナリストを務めるシェイマス・マクギリクディ氏はそう話す。
マクギリクディ氏はBroadcomの事業方針の中心が今後、セキュリティやアプリケーション開発、ネットワーク監視といった過去に同社が買収した企業の事業分野から、VMwareのソフトウェアに移ると予測している。
一方で売却される事業も出てくる可能性がある。Broadcomは2023年12月、仮想デスクトップインフラ(VDI)製品の「VMware Horizon」を含むエンドユーザーコンピューティング(EUC)事業が売却対象になる、という方針を明らかにしている。
VMwareの買収計画をBroadcomが最初に発表したのは、2022年5月のことだった。買収後にBroadcomが、どのVMware製品の販売やサポートを継続するのかという点で、ユーザー企業から不安の声が上がっていた。
BroadcomはセキュリティベンダーSymantecの法人向けセキュリティ事業を2019年11月に約107億ドルで買収した。その後2020年1月に、同社はSymantecのサイバーセキュリティサービス事業をAccentureに売却することを発表した。2018年には、ソフトウェアベンダーCA Technologiesを189億ドルで買収した数カ月後に、アプリケーションの脆弱(ぜいじゃく)性をテストするツール「Veracode」の事業を売却している。
VMwareの事業のサポートと拡大に全力を注ぐために、Broadcomは年間20億ドルを投資することを計画していると、とタン氏は主張している。その投資額のうち半分は研究開発に、残りの半分は「VMwareとパートナー企業の専門サービスを組み合わせたサービスの提供」に回されるという。
「Broadcom傘下に入ったVMwareは、独立時代のように技術革新を進められるかどうか疑問が残る」。TechTargetの調査部門であるEnterprise Strategy Groupでアナリストを務めるポール・ナシャワティ氏はそう見解を語る。買収が完了した以上、VMwareは自社の製品戦略をBroadcomの戦略に合わせざるを得なくなるからだ。
VMwareがBroadcomによる買収に前向きだったと考えるアナリストもいる。企業の業務システムのSaaS(Software as a Service)移行が進み、アプリケーションを実行するために必要なオンプレミスインフラの規模が小さくなった。それに伴い、同社の仮想化製品のニーズも小さくなりつつあったからだ。
それに対してVMwareは、マルチクラウドインフラの構築や管理に事業の軸足を移すことで、IT市場での競争力を維持しようとしていた。同社は災害対策(DR)ツールの「VMware Cloud Disaster Recovery」といったSaaSの提供を開始していたが、ナシャワティ氏は「競合企業に比べるとSaaSの提供は遅れていた」と話す。
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