データセンターでバッテリー電源搭載のUPSを使用する場合は、火災リスクに留意する必要がある。大量のリチウムイオンバッテリーを使用する場合、どのようなリスクがあるのか。事前に検討すべきことは何か。
データセンターの電力供給が止まった際に、非常用電源として機能する「無停電電源装置」(UPS)。バッテリー式のUPSを使用する場合は、火災のリスクがあることを忘れてはいけない。UPSを導入して安全に運用するためには、どのような点を押さえておけばいいのか。
以前は主に、制御弁式鉛蓄電池(VRLA)が普及していたが、昨今はリチウムイオンバッテリーの採用が進んでいる。消防設備の販売企業Control Fire Systemsは、蓄電システム(ESS:Energy Storage System)にリチウムイオンバッテリーを使用することにはメリットがある半面、重大なリスク要因もあると公式Webサイトで指摘している。セル(リチウムイオンバッテリーの最小構成単位)の誤作動は熱暴走(部品が高温になることで制御不能になること)を引き起こす可能性があるからだ。そうなると高熱で可燃性のガスが発生し、周囲のバッテリーが爆発し、損傷が広がる可能性があるという。
バッテリー火災は、爆発のリスクを伴う。その原因になる熱暴走は、バッテリー内のショート、過度な充放電、高熱などの外部要因によって生じる。火元がなくても、有毒な化学物質が流出するリスクにも備えなくてはならない。
英国の防火協会Fire Protection Associationによれば、商用・産業用でESSを用いる場合、満たすべき安全性評価要件は広範囲に及ぶ。物理的な損害と事業中断の両方を考慮に入れ、バッテリーの種類、ESSの設置場所、レイアウトなどに基づき、防火戦略を策定する必要がある。「安全なシステム設計、熱暴走の防止、早期発見、自動消火などの措置を組み合わせることが望ましい」と同団体は説く。
リチウムイオンバッテリーは小型の電子機器や電気自動車、産業用ESS 、グリッドストレージ(送電網の内部に電力を蓄える仕組み)などへの採用が進むにつれ、注目度が高まってきた。それと同時に、リチウムイオンバッテリーの規制に関する議論も活発になっている。
フライホイールという回転体でエネルギーを蓄える「フライホイール式」のUPSと比較すると、リチウムイオンバッテリーは火災のリスクが大きくなる上、リスク管理にかかるコストがかさむ。特に大型バッテリーの導入を目指す場合、火災保険や冷却システム、監視システム、物理的なスペース、メンテナンスコスト、廃棄コストなどを事前に検討する必要がある。
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