ガスなら人もサーバも生き残る? データセンター火災の“消火と復旧”いざというときの火災対策マニュアル【後編】

データセンター火災が発生した場合の消火手段としては、水とガスの2種類がある。それぞれ何が違うのか。火災からの復旧に備えて、消火手段の特性を知っておくことが欠かせない。

2022年05月24日 05時00分 公開
[Robert McFarlaneTechTarget]

 中編「サーバを水没させない――データセンター火災から機器を守る消火方法」は、データセンター火災が発生した場合の、水による消火手段を紹介した。データセンターの消火手段としては、水だけではなくガスによるものもある。

 ガス系の消火設備は、クリーンエージェント(蒸発後に残留物を残さない消火薬剤)を使うものと、不活性ガスを使うものの2種類ある。クリーンエージェントは、燃焼の3要素(熱、可燃物、酸素)の一つである熱を奪うことで消火する化学物質を含んでいる。不活性ガスは人間が呼吸できる範囲内で酸素濃度を低下させ、燃焼を抑止する。

人とIT機器が生き残れる範囲でガス消火

 クリーンエージェントの製品としては、例えば「FE-36」がある。これは携帯型のハンドヘルド消火器に使われている。「3M Novec」は消火剤を液体として保管し、ガスとして放出する。3M Novecはハロカーボン(オゾンを分解する効果を持つハロゲン元素を含む炭素化合物)類に属するが、大気中には5日間しか残存せず、オゾン層への影響を抑えている。

 不活性ガスによる消火設備は、大気に含まれる気体を混合した不活性ガスを放出し、酸素濃度を15%以下まで低下させる。火は燃え続けることができず、人間は呼吸できる程度の酸素濃度だ。不活性ガスには、「イナージェン」(窒素52%、アルゴン40%、二酸化炭素8%)や、「アルゴナイト」(窒素50%、アルゴン50%)などがある。

 こうした不活性ガスは大気中の気体から成るため、地球環境に悪影響を与えにくい。ただし消火には膨大な量が必要だ。そのため超高圧タンクで大量に貯蔵するスペースを用意しなければならない。不活性ガスだけで消火しても火がくすぶり、煙を出す場合がある。

 ガス系の消火設備は、部屋を密閉する必要があり、データセンターの建設費がかさむ懸念が生じる。この問題は、水系の消火設備では考慮せずに済む。

データセンター火災からの復旧

 データセンター火災からの復旧はコストが高くつく傾向にある。サーバなどIT機器を強制的にシャットダウンした場合は、完全な復旧までに数日かかる可能性がある。被害状況によっては、代替機器を入手しなければならない。

 水はIT機器内部に入らなければ、有害ではない。ただし後処理に手間がかかる。一方、煙の除去は極めて困難な場合がある。

 最良の方策は、まずは火災が発生する可能性を最小限に抑え、早期に火災を感知するシステムを稼働させ、アラートが出た場合は誰かが迅速に対処できるようにすることだ。

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