システムの停止時間(ダウンタイム)が長くなれば、企業に深刻な影響を与えかねない。どう備えればよいのか。「2種類」のダウンタイムを踏まえて考える。
ダウンタイム(システムの停止時間)は2種類ある。震災やサイバー攻撃による「計画外のダウンタイム」と、システムの保守や刷新のための「計画的なダウンタイム」だ。企業はこれらのダウンタイムが業務やビジネスに与える影響を軽減するために、事前に対策を講じる必要がある。当然ながら計画外のダウンタイムに備えることは難しい。外部要因によるものなので、いつ、どういう形で発生するかが分からないためだ。
MicrosoftやGoogle、Amazon.com(Amazon)など、レジリエンス(システムの回復力)の向上に積極的な巨大IT企業でもシステム停止がゼロではない。この事実から、投資力があり安定したシステム運用に注力してもダウンタイムを完全になくすことは難しいことを読み取れる。
データセンターなどの施設が災害によって崩壊した場合、企業が業務を継続するにはDRサイト(災害復旧用の代替拠点)にシステムを移す必要がある。一方、設定や設計の問題によるシステム停止には異なる対処が必要だ。この場合は「綿密に原因を調査して対処しなければならない。そのため、解決まで時間を要することもある」と、ダウンタイム対策に詳しい調査会社Info-Tech Research Groupのリサーチアドバイザー、フランク・トロバト氏は言う。
計画外のシステム停止の「引き金」を予測することは簡単ではない。それを前提にすると、企業はさまざまなシナリオを想定し、震災にもサイバー攻撃にも強いレジリエンスをシステムに持たせることが欠かせない。本社と支社の間のネットワーク接続がビジネスにおいて極めて重要な場合を考えよう。「その企業は複数のネットワーク事業者を使い、複数のネットワークを構築すれば、1つが使えなくなってもビジネス継続ができる可能性が高まる」とトロバト氏は語る。
それに対し、計画的ダウンタイムはあらかじめ時間を決め、業務やビジネスに影響しないよう事前に準備ができる。出勤している従業員が少ない週末や平日の早朝の時間帯に実施すれば、業務への影響を最小限に抑えることが可能だ。年中無休でサービス提供をする企業は、一部が停止してもシステムが稼働し続ける仕組みを構築し、保守作業を部分的に実施するとよい。
計画的ダウンタイムに際して注意する必要があるのは、影響を受ける部署や従業員と事前に必ず情報を共有することだ。「基本は平日出勤でもイレギュラーで土日勤務する人もいる。いきなり『今日はシステムが使えない』となると困るはずだ」とトロバト氏は話す。結局、計画的ダウンタイムの“計画性”が不十分であれば、従業員が仕事をできなくなり、ビジネスに影響が及びかねない。
情報を共有したり、システム復旧の手順を決めたりすることは、災害によるシステム停止のときも重要だ。企業はダウンタイム対策の予算が限られている中、インフラやアプリケーションが使えなくなった場合のビジネスへの影響を評価し、優先順位を付けてレジリエンスの向上に取り組むことが有効だ。「システムの重要度を『高』『中』『低』に分類すれば、それぞれにかけるお金や時間を効率的に配分できる」とトロバト氏は言う。
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