国家支援型のサイバー犯罪集団が生成AIツールを利用した攻撃活動を繰り広げている。企業はどの国やサイバー犯罪集団からの、どのような攻撃を警戒すべきなのか。Microsoftの調査を基に説明する。
生成AI(エンドユーザーの指示を基にテキストや画像、音声などのデータを生成する人工知能技術)を悪用した攻撃活動が盛んだ。Microsoftは積極的に生成AIの開発に取り組む一方で、国家が支援するサイバー犯罪集団による生成AIツールの利用が広がっているとみて注意を呼び掛けている。活動が目立っているのは5つのサイバー犯罪集団だ。それぞれどの国との関連があり、攻撃活動に生成AIをどのように活用しているのか。
Microsoftが運営しているセキュリティ専門家コミュニティー「Microsoft Threat Intelligence」は以下の5つのサイバー犯罪集団を詳しく調査しているという。それぞれ、特定の国家によって支援されているとみられる。
Microsoft Threat Intelligenceの調査で分かった、各サイバー犯罪集団の主な動きをまとめてみよう。
Forest Blizzardはウクライナの軍事作戦を把握するために、大規模言語モデル(LLM)をベースとした生成AIツールを使用。衛星やレーダー技術の利用方法を調べている。
上記の動きとは別に、Forest Blizzardは2023年12月、Microsoftのメールサーバ製品「Exchange Server」とメールサービス「Exchange Online」の脆弱(ぜいじゃく)性を悪用し、政府機関の他、防衛やエネルギーといった分野の企業を攻撃した。その際にも、生成AIツールを利用した可能性があるという。現在、Microsoftはこの脆弱性のパッチ(修正プログラム)を提供している。
Emerald Sleetは生成AIツールを利用し、北朝鮮に詳しい世界各国のシンクタンクや専門家を調査。脆弱性情報の収集やマルウェアのスクリプト記述、フィッシングメール作成にも生成AIツールを取り入れている。
例えば、Emerald Sleetは生成AIツールによってMicrosoftのサポート診断ツール「Microsoft Support Diagnostic Tool」(MSDT)の脆弱性「CVE-2022-30190」(通称「Follina」)の情報を集めていた。生成AIツール利用の効果については、現時点で確かな情報を得られていないという。
Charcoal Typhoonは生成AIツールを使い、攻撃活動に必要な技術調査や脆弱性情報を収集。それに加えて、生成AIツールによって攻撃作業の効率化や自動化も図っている。
Salmon Typhoonは著名な人物やさまざまな地域の情報、米国の内政問題などを把握するために、生成AIツールを利用している。
Crimson Sandstormは生成AIツールにより、ソーシャルエンジニアリング(人の心理を巧みに操って意図通りの行動をさせる詐欺手法)の手口の他、標的システムにおける防御策を調べている。
後編は、生成AIツールを利用したソーシャルエンジニアリング攻撃のリスクと防御策を考える。
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