「メインフレームの現状維持」が必ずしも“正解”じゃないのはなぜかこれからのメインフレームに必要な議論【前編】

「負の遺産」と考えがちなメインフレームは、現代のITシステムを支える重要な存在でもある。メインフレームの真の価値を引き出すために、メインフレーム戦略の中心に据えるべき考え方とは。

2024年10月14日 07時30分 公開
[Dale VileTechTarget]

 メインフレームについて学べば学ぶほど、私はその世界に魅了されている。私がメインフレーム関連のスキルという話題を調べ始めたときは、メインフレームという重要なシステムの管理を、高齢化が進む世代に依存することについて、リスクを管理すべきだという前提に立っていた。しかしある人と話をするうちに、別の視点があるのではないかと感じるようになった。私が考えを変えるきっかけになった出来事と、その人の考えを紹介しよう。

「メインフレームの現状維持」は正解ではないのか?

 2024年4月にメインフレームのスキルに関する記事を書いた時点では、私の態度は明確ではなかった。だがある時点を堺に、私のスタンスは変わった。きっかけは先日、メインフレーム「IBM Z」と、OS「Linux」の専用機「IBM LinuxONE」のワールドワイドエコシステム担当バイスプレジデントを務める、メレディス・ストウェル氏と語り合ったことだ。先述の記事で私がメインフレームのスキルを取り上げると、ストウェル氏からすぐに反応があった。「客観的に検討するには、いったん一歩引いて、より広い文脈でメインフレームそのものを考える必要がある」というのだ。

 ストウェル氏の主張は、メインフレームを「保全する」という観点のみで考えるべきではないというものだ。メインフレームを扱うスキルへの投資に関する議論の根底には、自社のビジネスや経済にメインフレームがどれだけ貢献するのかという見積もりがある。

 「IBM Zは世界経済を支えるITインフラにおいて、今も重要な役割を担っており、勢いは健在だ」。ストウェル氏はそう説明した上で、IBMのメインフレーム製品「IBM z16」の成功に触れた。IBM z16は、クラウドネイティブ(クラウドサービスで稼働させることを前提としたアーキテクチャ)なアプリケーションや、AI(人工知能)関連のタスクを処理する能力を備える。メインフレームはほこりをかぶった遺物ではなく、活気があり、成長と進歩を続けているシステムなのだ。

なぜ「メインフレーム=現状維持」になりがちなのか

 ストウェル氏の言葉を聞いて、私はこう思った。メインフレームがそこまで活躍しているのに、メインフレームを扱うスキルの議論が単なる現状維持の話になりがちなのはなぜなのか。同氏に言わせると、われわれは議論の根底を改める必要がある。メインフレームの真の価値を理解する第一歩は、「メインフレームをハイブリッドクラウド(クラウドサービスとオンプレミスシステムの併用)戦略の一部にすること」だという。「メインフレームを『保護すべき対象』だと考えるのをやめて、サービス提供の戦略全体に組み込むよう努めなければならない」と同氏は主張する。

 この視点は、メインフレームに関するスキルの議論を、リスク軽減の話から機会創出の話にシフトさせるものだ。メインフレームで機会を創出するには、メインフレームとクラウドサービス、分散型オンプレミスシステムの分野にまたがって、設計、運用プロセス、スキルなどを融合させる必要がある。「メインフレーム運用チームに新しい人材を入れるだけではなく、考え方や経験の多様性が大切だ。経験豊富な人から新人への指導だけでなく、新人から経験豊富な人への指導も重要になる」とストウェル氏は述べる。

 ストウェル氏はある従業員の話を紹介した。この若い従業員は、メインフレームの熟練者と組んで、構成管理ツール「Ansible」で自動化できる重要なプロセスを複数突き止めることができた。その結果運用の効率が劇的に上がり、メインフレーム運用チームが、ミスを犯しやすい単調な手作業から解放されたという。

 この話から学ぶべきことは明らかだ。新しい視点と最先端のスキルは、メインフレームの維持に加えて、メインフレームにおける真のイノベーションを可能にする力がある。メインフレームとモダンな分散型システムの間で、運用方法を融合させることもできるはずだ。そうした取り組みは、効率と進歩の障害になりやすいサイロ化(システムやデータが連携せずに孤立した状態になること)を打破する上で、プラスに働くはずだ。


 次回も引き続き、ストウェル氏の見解を基に、今後のメインフレーム運用に欠かせない存在について議論する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

IOPSが5倍に向上&コストも80%削減、エクシングが選んだ大容量ストレージとは

カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。

製品資料 プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

データソート性能向上でここまで変わる、メインフレームのシステム効率アップ術

メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

従来ストレージの約8倍の容量を確保、エルテックスが採用したストレージとは

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

空冷だけではなぜ不十分? データセンターの熱負荷対策をどうする

CPUやGPUの性能向上に伴い、データセンターでは今、発熱量の増加にどう対応するかが課題となっている。特に高密度なサーバ環境では、従来のファンやヒートシンクに頼るだけでは熱管理が難しい。こうした中、企業が採用すべき手段とは?

製品資料 Dropbox Japan株式会社

ファイルサーバをアウトソーシング、「クラウドストレージサービス」の実力

中堅・中小企業の中には、IT担当者が社内に1~3人しかいないという企業も少なくない。そのような状況でも幅広い業務に対応しなければならないIT担当者の負担を減らす上では、ファイルサーバをアウトソーシングすることも有効だ。

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

「メインフレームの現状維持」が必ずしも“正解”じゃないのはなぜか:これからのメインフレームに必要な議論【前編】 - TechTargetジャパン サーバ&ストレージ 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

TechTarget郢ァ�ク郢晢ス」郢昜サ」ホヲ 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...