クラウド時代にあえて「メインフレーム」を選びたくなる理由はこれだメインフレームはオワコンか【中編】

長年の実績が裏付けるように、メインフレームにはさまざまな強みがある。それは具体的に何なのか。クラウドサービスが普及する中、あえてメインフレームを選ぶ理由とは。

2022年09月22日 05時00分 公開
[Tony LockTechTarget]

 クラウドサービスは“新顔”としてメインフレームに挑戦状を出し、システムの主役を奪おうとしている。進化を遂げ、セキュリティも含めて信頼性が高まってきた。クラウドサービスがあるのに、そもそもメインフレームは必要なのか――。こうした「メインフレーム不要論」さえ登場する状況だが、メインフレームは必ずしも役割を終えたわけではない。そう言い切るための根拠は何なのか。メインフレームの強みを考える。

あえて「メインフレーム」を選ぶ理由とは

 クラウドサービスはメインフレームに追い付いたのか。答えは「イエス」だが、あくまで「条件付きのイエス」だ。拡張性、スループット(データ処理能力)、運用効率に関しては、クラウドサービスは確実にメインフレームに匹敵するようになっている。耐久性やフェイルオーバー(システム停止の際、待機システムに切り替える仕組み)についても同じことが言える。しかしメインフレームも進化が止まったわけではなく、クラウドサービスに対する強みを磨き上げてきた。

 例えばセキュリティの議論がある。クラウドサービスはセキュリティとプライバシー保護に関して大きく進歩したと言って間違いはない。しかしメインフレームはシステムのさまざまな層にセキュリティが組み込まれており、安全運用の観点では2022年現在も理想的な技術と認識されている。

 企業はシステムの利用形態を決める際、レイテンシ(通信の遅延時間)やデータの保存場所といったことも考えなければならない。メインフレームの場合、企業はコンピュータを物理的に保有する。そのためデータがどこにあるのか、誰がアクセスできるのかといったことが分かりやすい。メインフレームの運用管理に関する企業の経験値は豊富だ。メインフレームはレイテンシを抑えやすく、プロセッサ技術の進化も追い風になって「頼りになるシステム」として活躍している。

 2022年4月、IBMは人工知能(AI)技術の活用を想定したメインフレーム「IBM z16」を発表した。この発表からも分かるように、メインフレームは決して「終わった」のではなく、進化を遂げ、たくましく戦っている。最近のメインフレームは機械学習(ML)や量子コンピューティングといった技術を取り入れ、より一層の高速データ処理を追求するとともに、障害のリスクを減らすようにしている。

 ワークロード(コンピュータの仕事や作業負荷の総称)最適化についてはどうか。メインフレームとクラウドサービスはそれぞれ違う形でワークロード最適化に力を入れている。メインフレームは幅広いワークロードを処理し、それを1つのツールで管理できるのが特徴だ。一方でクラウドサービスはAI技術を使ったデータ分析といった、特定の分野に特化したワークロード最適化を目指している。


 後編は、メインフレームと比べた場合のクラウドサービスの強みを考える。

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