NVIDIA、OpenAIとコラボするMicrosoft「Azure強化」の中身とはMicrosoftが「Azure AI」に新機能投入【後編】

Microsoftは2023年11月、AI技術に関する新サービスや新機能を相次いで発表した。同社がNVIDIAとの連携を強化して取り組もうとする「Microsoft Azure」のサービス強化などのアップデート情報を取り上げる。

2024年01月04日 05時00分 公開
[Esther AjaoTechTarget]

 2023年11月、Microsoftはカンファレンス「Microsoft Ignite 2023」を開催した。その中で同社は、AI(人工知能)技術に関するさまざまな新サービスや新機能を明らかにした。具体的には、ユーザー企業が生成AI(テキストや画像などのデータを生成するAI技術)をカスタマイズできる「Azure AI Studio」、AIモデルをAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)経由で利用できる「Azure OpenAI Service」などがある。それ以外にはどのようなアップデート情報があるのか。

AzureとNVIDIAのコラボレーション

 MicrosoftはNVIDIAとのパートナーシップを拡大し、Microsoftのサービスに活用することに取り組んでいる。2023年11月には、NVIDIAのGPU(グラフィックス処理装置)「NVIDIA H100 NVL」を搭載する仮想マシン「NCads H100 v5」のプレビュー版を、クラウドサービス群「Microsoft Azure」で提供開始した。2024年にはGPU「NVIDIA H200 Tensor Core GPU」を追加することも計画中だという。

 企業が自社のカスタムAIモデルをMicrosoft Azureに接続できるようにするため、NVIDIAはMicrosoft Azure向けに「AIファウンドリサービス」を提供することを2023年11月に発表した。AIファウンドリサービスは企業がカスタム生成AIモデルを作成することに活用できる。以下の構成要素から成る。

  • NVIDIA AI Foundation Models
    • 訓練済みのAIモデルのコレクション
  • NVIDIA NeMo
    • 生成AI用のAIモデルを構築、カスタマイズ、展開するためのクラウドサービス
  • NVIDIA DGX Cloud
    • AIモデルを訓練するためのクラウドサービス

 NVIDIAによると、カスタムモデルの構築にAIファウンドリサービスを利用しているユーザー企業の一社が、写真画像代理店Getty Imagesだ。

 ナグ氏によると、AIファウンドリサービスは業界特化の大規模言語モデル(LLM)を求める生成AI市場のニーズに合っている。こうしたニーズに呼応するモデルの例が、金融・経済関連の情報配信を手掛けるBloombergの金融機関向けLLM「BloombergGPT」だ。

 NVIDIAのCEOジェンスン・ファン氏は、Microsoft Ignite 2023の基調講演にMicrosoftのCEOサティア・ナデラ氏と一緒に登壇し、次のように語った。「生成AIは、コンピュータの歴史上、最も重要なシステムの変化だ」

その他のMicrosoftのAI関連アップデート

 MicrosoftはMicrosoft Ignite 2023において、これまでに紹介した以外にもAI関連サービス群「Azure AI」の新機能を複数発表した。以下はその例だ。

  • 自然言語処理アプリケーションを開発するためのマネージドサービス「Azure AI Language」の要約機能
    • 「GPT-4」「GPT-3.5 Turbo」などのLLMを活用する。
  • 「顧客データを利用してAIモデルをカスタマイズし、業界の慣習に合わせて翻訳する機械翻訳モデル
  • 音声用の生成AI「Azure AI Speech」において、入力されたテキストと、そのテキストを人が話している動画に基づいて、テキストを話している人のリアルな似顔絵を生成する音声合成アバター(パブリックプレビュー版)
  • コンピュータビジョン(画像情報を通じて対象の内容を認識し理解するAI技術)サービス「Azure AI Vision」のアップデート
    • なりすましの防止に役立つ顔認識機能である「Liveness」や、モバイルアプリケーションに顔認識機能とLivenessを追加する機能などが加わった。
  • AI技術を利用した検索サービス「Azure AI Search」における、「ベクトル検索」と「セマンティック検索」の追加
    • ベクトル検索は、テキストや画像をベクトルに変換して類似性を計算する検索手法。
    • セマンティック検索は、エンドユーザーの意図をくみ取って情報を探す検索手法。
  • 機械学習モデルを構築、運用するためのクラウドサービス「Azure Machine Learning」における、「モデルカタログ」のアップデート
    • 新しいAIモデルとして以下が利用可能になった。
      • Meta Platformsのソースコードに特化したLLM「Code Llama」
      • ミュンヘン大学(Ludwig-Maximilians-Universitaet Muenchen)の画像生成モデル「Stable Diffusion」
      • OpenAIの自然言語と画像を一体的に処理するためのAIモデル「CLIP」(Contrastive Language-Image Pre-training)
      • NVIDIAの企業向けLLM「Nemotron-3 8B」ファミリー
    • プレビュー版では、AI技術を活用したデータ分析ツール「Microsoft Fabric」とAzure Machine Learningの間での移行を作成する目的で、Microsoft Fabric用のデータレイク「OneLake」が可能利用になっている。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news060.jpg

Z世代が考える「日本が最も力を入れて取り組むべき課題」1位は「ジェンダー平等」――SHIBUYA109 lab.調査
SDGsで挙げられている17の目標のうち、Z世代が考える「日本が最も力を入れて取り組むべき...

news061.png

高齢男性はレジ待ちが苦手、女性は待たないためにアプリを活用――アイリッジ調査
実店舗を持つ企業が「アプリでどのようなユーザー体験を提供すべきか」を考えるヒントが...

news193.jpg

IASがブランドセーフティーの計測を拡張 誤報に関するレポートを追加
IASは、ブランドセーフティーと適合性の計測ソリューションを拡張し、誤報とともに広告が...