2023年11月開催のカンファレンスで、MicrosoftはAI技術に関する新サービスや新機能を次々に発表した。その中で明らかになった、API経由でのAIモデル利用や著作権侵害への対処を可能にするアップデートとは。
Microsoftは2023年11月に開催したカンファレンス「Microsoft Ignite 2023」の中で、AI(人工知能)に関する複数の新サービスや新機能を公開した。目玉となったのは、ユーザー企業が生成AI(テキストや画像などのデータを生成するAI技術)をカスタマイズできる「Azure AI Studio」だ。それ以外にも同社は、AI関連サービス群「Azure AI」のさまざまな新機能を発表した。以下でそれらを紹介する。
「Azure OpenAI Service」は、OpenAIのAIモデルをAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)経由で利用できるサービスだ。Azure OpenAI Serviceを使うことで、ユーザー企業は生成AIによる画像、テキスト、動画の生成が可能になる。2023年11月のアップデートで、新たにOpenAIの画像生成モデル「DALL-E 3」のパブリックプレビュー版、大規模言語モデル(LLM)の「GPT-3.5 Turbo 1106」、「GPT-4 Turbo」のプレビュー版を追加した。同年12月には、「GPT-4 Turbo with Vision」が利用可能になった。
MicrosoftのCEOサティア・ナデラ氏は、Microsoft Ignite 2023の基調講演に登壇し、次のように語った。「当社からの約束はシンプルだ。OpenAIがイノベーションを実施すれば、当社はそのイノベーションの全てをAzure AIの一部として提供する」
調査会社Gartnerでリサーチアナリストを務めるシド・ナグ氏によると、DALL-E 3やGPT 3.5 TurboなどのAIモデルをAzure OpenAI Serviceで利用するメリットは、「さまざまなAIモデルを1カ所にまとめられること」だ。「コンテンツを生成する企業なら、別々の生成AIを使うために異なるツールにアクセスしたいとは思わないはずだ」と同氏は話す。
Azure OpenAI Serviceには他にも、動画から要約テキストを生成する機能や、大規模言語モデル(LLM)を使って動画を検索可能にする機能も提供するという。
Microsoftは同社の「Copilot Copyright Commitment」(CCC)の対象にAzure OpenAI Serviceユーザーを含めるようにし、責任あるAIの懸念に対処する。CCCは、同社のAIアシスタント「Copilot」やそれが生成した結果を、著作権に違反せずに利用できること、もし違反する場合は責任を同社が負うことを宣言したものだ。
OpenAIやMicrosoftなどのAIベンダーは、著作権の対象となる作品の著作権を侵害していると主張するAI訴訟に巻き込まれている。2023年11月時点でMicrosoftはCCCの内容を明らかにしていないものの、「CCCの条件に当てはまるユーザー企業はCCCを最大限に活用できる」と、市場調査会社Futurum Groupのアナリストであるマーク・ベク氏は話す。
ただし、CCCのようなドキュメントでAIベンダーのユーザー企業がどの程度の安心感を得られるかは、「ユーザー企業によって異なる」とベク氏は補足する。「マーケティングや広告の文面を考える企業であれば、生成AIを利用したテキスト生成は問題になる可能性がある。AI技術による画像生成の問題は既に世界中で議論されている」(同氏)
Azure OpenAI Serviceユーザーは、AI技術を利用して不適切なコンテンツを検出するサービス「Azure AI Content Safety」を、API経由で使用可能だ。
次回は、MicrosoftとNVIDIAの連携を含めてその他の新たな動向を紹介する。
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