GPUの“絶対王者”NVIDIAを襲う「まさかの死角」とはAI需要で業績好調が続く

GPUベンダーNVIDIAの業績はAI需要を追い風にして好調が続いている。ただし同社の事業の全てが順調なわけではない。今後、同社の事業が失速する可能性はあるのか。

2024年12月10日 08時00分 公開
[Antone GonsalvesTechTarget]

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 GPU(グラフィックス処理装置)ベンダーのNVIDIAは、2025年度第3四半期(2024年8~10月期)の決算発表で好業績が続いていることを印象付けたが、同社の事業が全て順調に進んでいるわけではない。データセンターGPUの最新アーキテクチャ「Blackwell」について報じられている過熱問題や、米政権交代による情勢の変化などが懸念される中だが、同社のGPU事業は失速せずに成長を続けることができるのか。

NVIDIAに待ち受ける「まさかの死角」とは

 NVIDIAが2024年11月に発表した2025年度第3四半期(2024年8~10月期)の業績は、売上高が前年同期比94%増の約351億ドルとなった。データセンター事業の売上高は過去最高の約308億ドルに達し、前年同期比で112%伸びた。同社は2025年度第4四半期(2024年11月~2025年1月期)の売上高については、375億ドル前後になるとの見通しを示している。

 GPUの最新アーキテクチャBlackwellについては、その設計が原因となり過熱が発生する問題が報じられている。投資家は、この報道がNVIDIAの今後の売上高に影響するのではないかと懸念している。この問題に関してNVIDIAのCEOジェンスン・フアン氏は決算発表で質問を受けたものの、直接的な回答はせず、Blackwellの生産がフル稼働していて、需要は数四半期にわたって旺盛な状態が続くと説明。「Blackwellは出荷予定量が当初の予測を上回っており、至って順調だ」と語った。

 NVIDIAはGPU市場では支配的なサプライヤーとなっている。同社のGPUは、Amazon Web Services(AWS)やGoogle、Microsoftといった主要クラウドベンダーが生成AIモデルを使用するのを支えている。NVIDIAは、ソーシャルネットワークキングサービス(SNS)「Facebook」を運営するMeta PlatformsにGPUを供給する主要ベンダーでもある。

 Blackwellの事業が軌道に乗った今、NVIDIAの次の課題になると考えられるのは、米国と中国の貿易戦争を乗り切ることだ。同社の2025年度第3四半期の中国における売上高は、54億ドルだった。米国のドナルド・トランプ次期大統領は、中国製品に60%の関税をかけると主張してきた。経済学者は、そうなれば報復関税を招いたり、中国における米国企業のビジネスが制限されたりする恐れがあると指摘している。

 こうした不穏な動きはあるものの、フアン氏はあくまでも政権を支持すると強調する。「当社は今後施行するあらゆる規制を順守しながら、顧客をできる限り支援する」(同氏)

 長期的に見ると、NVIDIAの売り上げが伸びる余地はまだ残されている。クラウドベンダーのような大規模データセンターを運営する企業だけでなく、その他の一般的な企業の間でもAI向けのGPUの需要は増大する。Blackwellやその前の世代のアーキテクチャである「Hopper」よりも非力なGPUでも動作するAIアプリケーションの利用が増えれば、それがNVIDIAにとっては売上高拡大の好機になる。

 ただしそうしたチャンスが生まれることは、NVIDIA以外のプロセッサベンダーにとっても同じ。Advanced Micro Devices(AMD)やIntelのような競合ベンダーも、AI市場で売上高を大きく伸ばす可能性を秘めている。

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