MicrosoftとGoogleが欧州委員会を巻き込んで激しい舌戦を繰り広げている。両社が批判するお互いの問題点とは何か。クラウドサービス市場で何が起きているのか。
MicrosoftとGoogleがお互いのクラウドサービス事業を巡り、泥沼の争いを繰り広げている。
Googleは2024年9月、Microsoftのクラウドライセンス慣行が反競争的でベンダーロックインを招いているとして、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会に苦情を申し立ている。それに対してMicrosoftは、後述する「アストロターフィング」をGoogleがしていると批判している。クラウドサービス市場で何が起きているのか。
Microsoftの顧問弁護士リマ・アレイリー氏は、Googleが「競争当局や政策立案者に対するMicrosoftの信用を失墜させ、公衆を欺く」目的でアストロターフィング(草の根運動を装ったロビー活動)団体の立ち上げを計画している、と主張している。アストロターフィングは、実際にはほとんど支持されていないアイデアや政策が広く支持されているように見せかけることによって、消費者や政策立案者に影響を与える手法だ。
アレイリー氏は「GoogleはMicrosoftの信頼を失墜させる他の組織に自社が関与していることを隠してキャンペーン(宣伝)を展開している」と批判する。
Microsoftの公開書簡に対してGoogleは、「Microsoftのクラウドライセンスに関する懸念については公に論じてきた」と反論する。
「Microsoftの反競争的な慣行は顧客を囲い込み、結果的にサイバーセキュリティ、イノベーション(革新)、意思決定に悪影響を与えると、われわれを含めて多数の企業が考えている」とGoogleの広報は述べている。
「MicrosoftとGoogleの争いが、現時点でユーザー企業のITやクラウドサービスに関する意思決定に影響を及ぼすことはないだろう」と調査会社Forrester Researchのアナリスト、ダリオ・マイスト氏は分析する。「MicrosoftとGoogleの問題に関して、経営層から懸念の声は聞いていない」(マイスト氏)
マイスト氏によれば、欧州のクラウドサービス市場はかつでないほど活気がある。GoogleとMicrosoftの争いが解決することで長期的にはさらに活発になる可能性があるが、「現時点でユーザー企業が懸念している様子はない」とマイスト氏は話す。
MicrosoftとGoogleの対立はこれにとどまらない。アレイリー氏は、「Googleが自社のクラウドサービス『Google Cloud』を強化するためにMicrosoftのクラウドサービス『Microsoft Azure』を攻撃している」と主張する。
Googleは複数の反トラスト法(独占禁止法)訴訟を起こされている。「Googleは自社のビジネスに関する正当な疑問への回答に専念すべき時であるにもかかわらず、他社を中傷することに集中している」(アレイリー氏)
GoogleがMicrosoftの信頼を失墜させる目的でアストロターフィング活動を展開している、というMicrosoftの主張が真実だったとしても、「ユーザー企業がMicrosoftとGoogleへの見方を変えることはないだろう」と調査会社Deep Analysisの創業者アラン・ペルツシャープ氏は指摘する。
ペルツシャープ氏は「IT大手はどこも倫理観が驚くほど欠けている」と話す。MicrosoftがGoogleのアストロターフィング戦略に対して熱弁を振るっても、関心を持つユーザー企業は限られていると同氏は分析する。「MicrosoftとGoogleのどちらに対しても、ユーザー企業の同情心は薄いだろう」(同氏)
「過去にはMicrosoftもアストロターフィング戦略を使ったとして批判されたことがある」とペルツシャープ氏は指摘する。「悲しいことに、ITにおいても政治においても、ライバルに対する攻撃を隠すために見せかけの独立組織を利用するのは常套手段だ」(同氏)
Googleは米国で複数の反トラスト法訴訟に直面していることから、規制当局の監視下にある。MicrosoftはEUからの懸念を受けて、ユニファイドコミュニケーション(UC)システム「Microsoft Teams」をオフィススイート「Microsoft 365」から2024年4月に切り離すと発表した。
これらの要因から「両社の対立が欧州委員会に直接的な影響を与える可能性は低い」とペルツシャープ氏は分析する。
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