「Microsoftが市場競争を阻害」は本当か? GoogleとAWSの主張で“泥沼状態”にMicrosoftクラウドライセンス慣行の問題

Microsoftのクラウドライセンス慣行を英当局が調査している件で、MicrosoftはGoogleやAWSの主張が調査を「泥沼化」させていると批判した。各社の主張は何か。

2024年11月01日 05時00分 公開
[Caroline DonnellyTechTarget]

 Microsoftのクラウドサービスに関する価格やライセンス体系が市場競争を妨げている恐れがあるとして、英国競争市場庁(CMA)が調査を進めている。Microsoftは、競合するGoogle とAmazon Web Services(AWS)が調査への意見書を提出し、事態を「泥沼化」させたと批判した。GoogleとAWSはどのように主張し、Microsoftはいかに反論したのか。

「泥沼化」させたGoogle、AWSの主張とは?

 CMAは2024年6月、Microsoftのクラウドサービスライセンスについて調査した暫定報告書を公開した。英Computer Weeklyが以前報道した通り、CMAは「Microsoftが他社のクラウドサービスでMicrosoftのライセンスを利用するユーザー企業に対して料金を高く設定することで、市場競争を妨げている恐れがある」と指摘し、その証拠があると述べている。

 英国のクラウドインフラ市場の関係者はCMAの暫定報告書に対するフィードバックを求められており、Microsoftとその競合が意見書を提出した。

 Googleは、提出した意見書の中で次のように述べている。「Microsoftのライセンス慣行は競合他社のコストを上昇させ、顧客需要の相当部分を奪い合う競合他社の競争力を弱めさせるもので、競争に対する明白な悪影響がある」

 「CMAの証拠は(懸念に対する)是正装置が直ちに必要なことを裏付けている。われわれはCMAの見解を支持し、Microsoftがこれ以上競争を阻害しないための解決策が存在する」。Googleはそう主張した。

 一方、Microsoftは、法律事務所Latham & Watkinsがまとめた意見書を通して、Googleの見解に反論した。この意見書は「Microsoftの知的財産ライセンス条件は、競合他社のコストの実質的な上昇にはつながっていない」という主張で始まる。

 CMAはMicrosoftのライセンス慣行について、競合するAWSとGoogle Cloud Platform (GCP) は「相当の」運営コスト上昇を強いられる可能性があり、「genuine foreclosure」のリスクがあるとしていた。「genuine foreclosure」とは、競合他社による新興市場への進出を妨げ、実質的に競争から締め出す慣行や戦略を意味する用語だ。

 Microsoftの意見書はこの部分に反論し、自社の行為がAWSやGCPに対してそこまでの影響を及ぼすとは考えていない。Microsoftは「AWSとGoogleはあらゆる観点から見て、競争して利益を出す十分な余裕(現金)がありそうだ」と主張する。

 「AWSは500億ドル、Googleは300億ドルの設備投資がある。これは『口先だけの約束ではない』という信念の表れであり、クラウドサービスの将来の収益性と競争力を確信しているものだ。Microsoftの(知的財産を)大規模に利用したことに対し、補償という重荷を背負ったために、弱体化したライバルの行動とは言えない」(Microsoft)

 MicrosoftはAWSとGCP、欧州のクラウドサービスの業界団体Cloud Infrastructure Services Providers in Europe(CISPE)にも矛先を向け、Microsoftのライセンス慣行が市場競争に悪影響を及ぼしているという偽情報を拡散させていると批判した。

 Microsoftは「要約すると、Amazon、Google、CISPEなどによって、『正しい』市場競争への影響と対処法について混乱が生じた」と主張する。

 CISPEは過去にMicrosoftのライセンス慣行を批判し、繰り返し「不当」と表現していたが、両者は休戦状態に向かっている。2024年7月のComputer Weeklyの報道によると、CISPEはMicrosoftがEU競争法(欧州における独占禁止法)に違反に対する欧州委員会への長年の申し立てを取り下げ、和解した。

 一方、AWSは2024年7月にCMAに提出した意見書の中でMicrosoftのライセンス慣行に矛先を向け、Microsoftがレガシー技術を利用して、クラウドインフラサービス市場の在り方をゆがめていると批判した。

 AWSは「Microsoftと異なり、他のITベンダーのほとんどは、競争をゆがめて顧客に不利益をもたらすこともある『必須の』レガシー技術を持たない傾向がある」と主張。「ライセンス慣行は人為的に顧客の選択肢を制限して移行を難しくさせる目的で使用すべきではない」と批判した。

 Microsoftは意見書の結論部分で、自社のライセンス慣行について「どのような形や程度であれ、競争に悪影響を及ぼすほどAmazonやGoogleのコスト上昇につながることは、まずない」と述べ、Microsoftのライセンス慣行について浮上した懸念をCMAが却下するよう「謹んで提案する」とした。

 「CMAはそうした懸念について、競争への悪影響に関する暫定的な判断のために、ましてや蓋然性の均衡に関する確固たる結論を出すためには根拠不十分として退ける十分な理由がある」とMicrosoftは言い添えている。

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