AWS、Microsoft、Googleが“独占問題の渦中”に メガクラウドの疑惑とは?メガクラウドに反競争的との批判

英国のクラウドサービス市場において、主要ベンダーが英国競争市場庁(CMA)に反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで調査されている。特にMicrosoftはライセンス慣行について複数の問題がある。

2024年11月05日 07時30分 公開
[Caroline DonnellyTechTarget]

 市場に対する取り締まりを担う英国競争市場庁(CMA)は、クラウドサービス市場の調査を目的としてAmazon Web Services(AWS)、Google、Microsoftに実施した公聴会の結果を2024年9月16日(現地時間)に公開した。調査はこれらのクラウドサービスベンダーが反トラスト法(独占禁止法)に違反していないかを調査する目的で、CMAが2024年7月に実施したものだ。3社の何が問題視されているのか。特にMicrosoftには複数の疑惑がある。

AWSとMicrosoftとGoogleの反競争的なサービスとは

 AWS、Google、Microsoftの3社が提出した書類にはそれぞれ、英国のクラウドサービス市場における反競争的行為についての反論が含まれていた。具体的には以下の要素が、英国のクラウドサービス市場の競争に悪影響を与えているかどうかに関する主張が含まれる。

  • 確約利用料(CUD)
    • ユーザーが一定量あるいは一定期間のサービス利用を約束することで料金を割引く仕組み
  • データ移行に対するエグレス料金
    • クラウドサービスから外部のインフラにデータを送信するときにかかる料金
  • 相互運用性
    • 異なるベンダーのサービス同士を連動させるための特性
    • クラウドサービスの仕様が相互運用性を妨害している可能性がある

 これに加えてCMAは、「Microsoftのクラウドサービスにおけるライセンス慣行は反競争的だ」という苦情に関して、以下の疑いで調査している。

  • Microsoftが競合他社のクラウドサービスでMicrosoft製ソフトウェアを実行する顧客に対して、クラウドサービス群「Microsoft Azure」で実行する場合より高額な料金を請求している
  • MicrosoftがMicrosoft Azureで、他ベンダーのソフトウェアの費用について、Microsoft製ソフトウェアより高額な料金を請求している

 Microsoftは、自社のライセンス戦略がAWSやGoogleの競争力を損なうものではないと主張している。同社は2024年7月の公聴会でも、この主張を強調した。

競争するための「十分な余地」

 Microsoftは公聴会で、以下の点を主張した。

  • Microsoftのライセンス料は、競合他社のコストを実質的に引き上げるものではない
  • Microsoftと競争するための「十分な余地」がAWSとGoogleにはあるため、彼らのビジネスに悪影響は与えていない
  • AWSとGoogleの財務状況が好調であることは、両社のビジネスがMicrosoftから悪影響を受けていないことの証拠でもある

 Microsoftは、「AmazonとGoogleの成長と利益を見れば、彼らがMicrosoftのライセンスの支払いを負担できないとか、Microsoftが彼らを排除しているなどと主張するのは難しい」と述べている。さらに、「Microsoft製ソフトウェアのライセンス料は、AWSやGoogleのクラウドサービスの総収益と比較すればわずかなコストに過ぎず、彼らにとって重要ではない」とも同社は主張した。

 こうしたMicrosoftの主張に対して、AWSとGoogleは共に意義を唱えている。AWSが示唆するのは、財務面で苦しんでいるのはクラウドサービスベンダーではなく、AWSでMicrosoft製のソフトウェアを利用している顧客であることだ。

 AWSはCMAに提出した書類の中で、「AWSはMicrosoftのライセンス制限と、選択したクラウドサービスでソフトウェアを実行できないことについて顧客から苦情を受けている」と述べた。AWSによると、Microsoftのライセンス慣行は顧客がソフトウェアを実行する場所を制限するものであり、Microsoftの努力で容易に改善できる。

 AWSによれば、2019年以降、Microsoft製のソフトウェアには制限が課されており、2019年以前に購入したMicrosoftライセンスをAWS上で使用できなくなっている。「これは顧客に財務面で巨大な影響をもたらした」と、AWSは述べた。その上で、「Microsoft製品を購入する顧客は、それらを永久に利用可能かつ、彼らが選択したクラウドサービスベンダーのサービスで使用できるべきだ」とも指摘した。

Microsoftのライセンスがビジネスの損失に

 Googleは、「Microsoftのライセンスプログラム『Services Provider License Agreement』(SPLA)の条項を順守することでビジネスの損失につながった」と述べた。さらに、「Microsoft製のソフトウェアをGoogleのクラウドサービスで実行すると、Microsoft Azureで実行するより高額になる」と述べた。

 Googleによれば、SPLAには価格面以外にも制限が多数あるため、GoogleはMicrosoftと公平に競争できない。「SPLAによって顧客に特定のセキュリティアップデートを提供できず、これがビジネスの損失につながった」ともGoogleは主張している。

 Googleは、Microsoftがシステムのベンダーロックインを助長している可能性についても言及している。一般的にコードや設定が複雑なソフトウェアは、開発者が現状を把握したり修正したりすることが難しいため、他のベンダー製品への移行を妨げる。Microsoftのソフトウェアが非常に複雑であるために、顧客がMicrosoftのソフトウェアやその上のレイヤーで実行しているアプリケーションの移行を妨げている可能性がある。

 Googleによれば、大半の中小企業はMicrosoft製のソフトウェアを別のベンダーのソフトウェアに移行する余裕がない。「つまり、Microsoftにベンダーロックインされる」とGoogleは述べている。

 Microsoftのクラウドサービスに関するライセンスを調査している組織はCMAに限らない。世界各国の規制当局や監視機関がMicrosoftを調査している。

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