さまざまな選択肢があったクラウドサービス市場は、現在では主要3サービスが市場の大部分を占めている。これを受け、規制当局はある理由から主要ベンダーが意図的に独占状態を作っているとして調査を進めている。
2010年代初め、企業には、データを委ねるパブリッククラウドベンダーの選択肢がもっと幅広くあった。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Googleの他、HPE(Hewlett Packard Enterprise)やDell Technologies、Rackspace Technologyが企業向けにそうした事業を扱っていた。
2010年代後半にはHPやDell、Rackspaceなどが競争に敗れ、パブリッククラウド分野から撤退した。これによりクラウドインフラサービス市場は、AWSの同名サービス群が先頭に立って「Microsoft Azure」と「Google Cloud」がその後に続く“三つどもえ”の戦いになった。
こうした状況を受け、英国の規制当局は主要クラウドベンダーが意図的に“クラウドサービスをやめにくい状態”を作り出しているとして調査に乗り出している。具体的には何が“問題の焦点”になっているのか。
調査会社Synergy Research Groupが2024年2月始めに公開したデータによると、AWSが世界全体のクラウドインフラサービス市場の31%を占め、Microsoftが24%、Google Cloudが11%でその後を追っている。
市場全体の約3分の2がたった3社によって支配されているため、AWSとMicrosoft、Googleのような企業がクラウドインフラサービス市場に対して持っている支配力が、世界各国における規制当局の監視対象になりつつある。約150億ポンドのクラウドサービス市場を抱える英国でも同様の状況であることは、意外なことではない。
英国情報通信庁(Ofcom)は2022年9月に英国のクラウドサービス市場を調査すると発表した。調査の目的は、市場競争力の維持を目的とした「2002年企業法」(Enterprise Act 2002)に基づいて「クラウドサービスにおける競争の強さと市場における主要企業のポジションを評価する」ことだった。
Ofcomは調査途中の2023年4月に、英国の消費者と企業に経済的不利益をもたらす恐れがある反競争的行為があるとして、特にAWSとMicrosoftを名指しした中間報告を発表した。
報告書は、クラウドサービスはユーザーがベンダーを切り替えるための機能を制限していると指摘している。新規にクラウドインフラを選択する際は、ユーザーは複数の選択肢があるが、一度選択したクラウドインフラからの移行が困難となっているという。
別の調査でも、ユーザーが別のクラウドサービスへの乗り換えや、他社サービスとの連携を妨げられている証拠が、調査から明らかになっていた。
これらの調査結果を受けて、Ofcomは、2023年10月に英国のクラウドサービス市場に関する最終報告をした際、独占禁止法違反のさらなる調査のために市場を英国競争市場庁(CMA)の手に委ねることを明らかにした。AWSとMicrosoftは異議を唱えた。
中編では公正な競争においてメガクラウドにどのような問題があるかを解説する。
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