アプリケーションをクラウドサービスへ移行させる際、ベンダーロックインの影響を抑えるには、移行前の綿密な計画が必要だ。それはなぜなのか。“失敗例”を基に解説する。
あるベンダーのクラウドサービスで構築したアプリケーションを、何らかの事情で他ベンダーのクラウドサービスに移行させたくなることがある。こうした移行を難しくするのが、特定ベンダーに過度に依存する「ベンダーロックイン」だ。ベンダーロックインの影響を抑える上で、クラウドサービスの採用前に検討すべきことが幾つかある。
クラウドサービスを契約する前に、そもそも自社のアプリケーションのインフラとして、クラウドサービスを利用すべきかどうかを確認すべきだ。IT調査会社Everest Groupのプリンシパルを務めるユガル・ジョシー氏は「将来にわたるクラウドサービスの利用方針を決めていないのであれば、クラウドサービスの導入を一度見直すべきだ」と語る。
いったんクラウドサービスに移行させたアプリケーションを、オンプレミスインフラに戻す「脱クラウド」(オンプレミス回帰)には、相応のコストが掛かる。クラウドサービスへの移行のメリットとTCO(総所有コスト)を、事前に徹底的に分析することが必要だ。こうした分析をすることで、アプリケーションによってはクラウドサービス移行によるメリットよりも、コンプライアンスのリスクやコストが高まるといったデメリットの方が大きいことが判明することがある。
アプリケーション開発ツールを手掛けるAzul Systemsで、自社製品の開発を担当しているエリック・コストロー氏は、300個のアプリケーションのクラウドサービス移行を計画するユーザー企業と仕事をしたことがある。このユーザー企業は、クラウドストレージで扱うデータがどれほどの量になるかを予想していなかった。そのため5個のアプリケーションを移行した段階で、クラウドストレージの利用料金が、1年分の予算に達してしまったという。
こうしたコストの増大を許容できるかどうかは、場合による。「クラウドサービスのコストは、インフラの調達効率向上や管理負荷軽減、スケーラビリティ向上といったメリットと比較する必要がある」。ERP(統合業務)パッケージベンダーVormittag Associates(VAI)で、最高情報責任者(CIO)を務めるケビン・ビースリー氏はこう語る。
さまざまな観点からクラウドサービスを検討し、実際にクラウドサービス移行に踏み切る場合、どのようにすればベンダーロックインの影響を抑えることができるのか。第3回はアプリケーションの移植性を向上させる方法を説明する。
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