The FAのCIOに聞くデータ活用と意思決定【前編】
イングランドサッカー協会が「GCP」の導入と「アジャイル」に積極的な理由
イングランドサッカー協会(The FA)のCIOは自身を「大のサッカーファンではない」と評する。そのような人物はどのようにリーダーシップを発揮し、各チームの監督やメンバーをITでけん引しているのか。
イングランドサッカー協会(The FA)でCIO(最高情報責任者)を務めるクレイグ・ドナルド氏は自身を「大のサッカーファンではない」という。同氏は協会やサッカーチームの運営に、小規模な変更を短期間のうちに繰り返す「アジャイル」型の開発手法やGoogleのクラウドサービス群「Google Cloud Platform」(GCP)など、さまざまな技術を採用している。同氏へのインタビューを基に、イングランドサッカー協会はどのような技術を活用し、どのような成果を挙げたのか探る。
「サッカーはそれほど」のCIOはイングランドのサッカーチームをどう支えているのか
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ドナルド氏が注力するのが「正しい文化の醸成」だ。The FAは自組織や各チームが目標を達成するために必要な考え方や価値観、行動を共有する文化を作り出すことに取り組んでいる。大のサッカーファンではない同氏にとって、イングランドの各チームが実践するマネジメント手法を取り入れることは難しい。それでも同氏の取り組みは、イングランド女子代表監督サリナ・ヴィーフマン氏と男子代表監督ガレス・サウスゲート氏をはじめとするリーダーたちからの共感を呼んでいる。
「目の前の課題に集中し解決すればよい」のではなく「どのように課題を解決するかを考えられるようにする」――ドナルドが従業員を支援するための方法論だ。「この方法論を成功させられるかどうかは、『他者とどのようにコミュニケーションを取り、どのような人材を組織に引き寄せるか』にかかっている」。ドナルド氏はこう説明する。
「Google Cloud Platform」を導入しシステムを簡素化
ドナルド氏は2019年にComputer Weeklyのインタビューで、The FAの運営と技術の活用について語った。同氏はThe FAのデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む際に、業務の簡素化とエンゲージメントの向上に重点を置いてきた。具体的には主要なITシステムの改善に加え、「Whole Game System」(WGS)の開発、Googleのクラウドサービス群「Google Cloud Platform」(GCP)の導入を進めた。WGSは、アマチュアからプロまであらゆるサッカーチームの関係者が、選手の登録や試合結果、今後の試合スケジュールなどをオンラインで管理するためのシステムだ。
ドナルド氏によるとWGSは「既にレガシーシステムになっている」という。アマチュアチームの選手登録画面で、40~50人を超える同時アクセスに耐えられなかったためだ。
WGSの代わりに開発したのが「PFF」(Platform For Football)だ。3万人以上が同時アクセス可能で、応答時間は1秒以下となっている。約80%のユーザーがPFFを「良い」または「非常に良い」と評価しているとドナルド氏は説明する。PFFによって、サッカーチームの担当者はPCの前で事務作業をする時間よりも、試合を楽しむ時間を長く確保できるようになったためだ。
データを意思決定につなげる
ドナルド氏が2019年のインタビューで紹介したもう一つのシステムが、選手のデータに関わる「PPS」(Player Performance System)だ。イングランドの各代表チームに所属する選手の体重や身長といったフィジカルデータや試合データ、医療に関わる情報を蓄積し選手情報の可視化に役立てる。
PPSのデータに基づき、選手のパフォーマンス管理の分析と意思決定を実施するためのシステムとして「Helix Platform」も開発した。同システムにはGCPのデータウェアハウス(DWH)「BigQuery」やデータベースサービス「Cloud SQL」を活用している。ドナルド氏はHelix Platformを「イングランド代表チームの運営に不可欠なツールだ」と評価する。
Helix Platformからはさまざまな気付きを得たとドナルド氏は説明する。例えばイングランド代表チームの合宿準備で「選手に必要な物品の種類の多さには驚かされた」という。
Helix Platformの強みは、バックエンドからフロントエンドまでエンドツーエンドの開発ができることで、開発スピードを高めている点だ。「Helix Platformの技術はイングランドのサッカーチームに競争上の優位性を提供すると考えている」ドナルド氏はこう話す。Helix PlatformはITコンサルティング企業Cognizant Technology SolutionsをはじめとしたITベンダーと連携しながら開発を進めているという。2017年11月、The FAはCognizant Technology SolutionsとDX推進に関するパートナーシップ締結を発表。2023年9月にはパートナーシップ契約を延長することを明らかにした。
「The FAのIT部門には約80人の従業員が在籍している一方で、ITベンダーからは約200人のスタッフが支援に関わっている」とドナルド氏は話す。
後編も引き続き、ドナルド氏の取り組みを紹介する。
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