CIOの中には、経営層からAIツールの導入や運用を期待される人もいる。AIの導入・運用をする上で、知っておきたいトレンドを2つ紹介する。
人工知能(AI)ツールの進化が進む中、CIO(最高情報責任者)の中には経営層からAIツールの導入や運用、成果の評価を期待される人がいる。前編と中編では、AIツールの導入や運用のために「まず注意すべき点」を紹介したが、CIOが考慮したいトレンドは他にもある。前編、中編に続き、2つ紹介する。
AIの利用で増大するエネルギーの消費量もCIOにとっては懸念事項だ。ハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する事業者)は、従来型のエネルギー源や冷却方法からの脱却を検討している。
Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud、Microsoftといった主要なクラウドベンダーは、原子力発電をエネルギー源として検討している。風力や太陽光などの再生可能エネルギーの活用を進めるベンダーもある。
エネルギー関連の予算を見直す企業の動きもある。調査会社Gartnerは2024年10月に開催したカンファレンス「Gartner IT Symposium/Xpo」で、そのような動向を紹介した。同社の予測によると、経済誌「Fortune」による企業ランキング「Fortune 500」に選ばれた企業は2027年までに、運用経費(OPEX)のうち5000億ドルをマイクログリッド(特定の地域に送配電の施設を設置し、企業や企業グループに電力を供給するシステム)に投入する見通しだ。
コンサルティング企業RHR InternationalのCIO、ブライアン・グリーンバーグ氏は、「生成AIの利用が増加するにつれて消費電力も増加するため、さまざまな企業が独自の発電施設の構築を検討し始めている」と説明する。
さまざまな企業のCIOが、生成AIのユーザー企業としてこの動きに注目している。グリーンバーグ氏もその一人だ。同氏によると、生成AIツールやクラウドサービスを契約する上で、クラウドベンダーのエネルギー消費に対するアプローチと環境への影響評価は判断材料になる。
グリーンバーグ氏によると、再生可能エネルギーや原子力発電といった革新的な分野に投資するクラウドベンダーを選択することで得られるメリットがある。エネルギーコストの削減やスケーラビリティ(拡張性)、持続可能性といった点だ。
「クラウドベンダーを評価する項目にこれらを含めることで、自社のESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みを強化できるだけでなく、CIOとして企業全体の成長に貢献できる」とグリーンバーグ氏は説明する。
CIOは生成AIの導入や活用だけではなく、他のプロジェクトも並行して進める必要がある。運輸会社FORWARDISのCIO、アビナヤ・タイ氏は、この課題に直面している。
FORWARDISは、紙ベースか表計算ツール「Microsoft Excel」を使って取り組んできた顧客の需要管理を、新システムへ移行するデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めている。タイ氏は「DXの案件自体が骨の折れる案件である一方、経営層や取締役会からはAIの取り組みへの問い合わせもある」と述べる。
タイ氏は、迅速に導入でき、差し迫った従業員のニーズに応えられる、費用対効果の高い生成AIツールに焦点を当てることにした。例えばITベンダーDecisionsのAIソフトウェアを導入し、会議内容の要約に役立てている。Web会議ツール「Microsoft Teams」やオフィススイート「Microsoft 365」と連携できるため、従業員のトレーニングを抑えることができたという。
法律事務所Mayer BrownのグローバルCIO、エベット・パストリザ・クリフト氏も、生成AIの取り組みとDXの両方を進めている。Mayer Brownは、既存システムのクラウドサービスへの移行を計画している。
クリフト氏によると、生成AIの導入はDXの案件を加速させる可能性がある。生成AIを使って定型的な反復作業を自動化することで、別の業務に注力できるからだ。
「両方に取り組むのは挑戦的な試みだが、いずれもビジネス上の重要な事項だ。どちらか一方を犠牲にすべきではない」(クリフト氏)
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