AppleとGoogleが開発者に“ある制約”を課している? 規制当局が監視の目モバイルブラウザの市場競争を阻害?

英国の規制当局が発表した調査結果によると、AppleとGoogleが開発者に課している“ある制約”がブラウザ市場の競争を阻害する要因になる恐れがある。どのような制約なのか。

2025年03月17日 07時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

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 英国競争市場庁(CMA)は2025年3月12日(現地時間)、「モバイルブラウザとクラウドゲーミングに関する最終報告書」(Mobile Browsers and Cloud Gaming Summary of final decision)を発表した。報告書によると、AppleとGoogleがサードパーティーベンダーやアプリケーション開発者に課している制約がモバイルブラウザ市場の競争を妨げ、イノベーションを阻害している可能性がある。

AppleとGoogleが課している制約とは?

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 最終報告書によると、AppleのOS「iOS」で動作するサードパーティー製のWebブラウザは、Appleが開発するHTMLレンダリングエンジン「WebKit」を使用しなければならず、Webブラウザの機能を狭めているという。

 CMAは報告書の中で、「AppleのWebブラウザ『Safari』は、競合するWebブラウザと比較して、iOSやWebKitの主要な機能に優先的もしくは早期にアクセス可能だった」と指摘。このことが「市場競争とイノベーションに悪影響を及ぼしている」と批判した。

 CMAの調査では、AppleがプログレッシブWebアプリケーション(PWA)の開発を抑制している可能性も判明した。PWAは、WebサイトやWebブラウザベースのアプリケーションをネイティブアプリケーションのように動作させるものだ。報告書によると、PWAは「開発者にとって低コストで開発が容易」とされている。どのOSでも実行でき、アプリケーションストア経由で配信する必要がないためだ。PWAの場合、Appleはアプリケーションストア「App Store」で課している手数料を得ることはできない。

 Appleは「他のHTMLレンダリングエンジンの使用を許可すると、セキュリティ、プライバシー、処理性能などの点でリスクが生じる可能性がある」と主張したが、CMAは「これらのリスクは他の方法で軽減できる」と判断した。

 報告書によると、他のHTMLレンダリングエンジンはセキュリティ面でもWebKitと同等の性能を示している。「Appleが現在許可している頻度よりも頻繁にセキュリティアップデートを実装できない」など、Appleが課す制約によって、他のWebブラウザの機能向上が妨げられているという。

 CMAが指摘したもう一つの問題は、iOS向けアプリケーション内でブラウジング機能を提供できないことだ。これはGoogleのOS「Android」では可能な機能だ。Appleによると、アプリケーションがWebKitを含むApple独自の技術を使用する必要があるため、iOSではアプリケーション内のブラウジング機能を開発できない。

 CMAは、Googleの製品設計についても「Webブラウザの市場競争を著しく困難にしている」と指摘する。「Androidを搭載したモバイルデバイスでは、Googleが特定のアプリケーションをエンドユーザーの画面上で目立つように配置したり、“デフォルト”のオプションとして扱ったりすることができる」という。

 CMAの独立調査グループの議長であるマーゴ・デイリー氏は「詳細な調査の結果、異なるモバイルブラウザ間の競争が適切に機能しておらず、英国の技術革新を妨げていることが分かった。CMAが今回示した調査結果は、今後の調査にも役立つ」と述べる。

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