英国の規制当局が発表した調査結果によると、AppleとGoogleが開発者に課している“ある制約”がブラウザ市場の競争を阻害する要因になる恐れがある。どのような制約なのか。
英国競争市場庁(CMA)は2025年3月12日(現地時間)、「モバイルブラウザとクラウドゲーミングに関する最終報告書」(Mobile Browsers and Cloud Gaming Summary of final decision)を発表した。報告書によると、AppleとGoogleがサードパーティーベンダーやアプリケーション開発者に課している制約がモバイルブラウザ市場の競争を妨げ、イノベーションを阻害している可能性がある。
最終報告書によると、AppleのOS「iOS」で動作するサードパーティー製のWebブラウザは、Appleが開発するHTMLレンダリングエンジン「WebKit」を使用しなければならず、Webブラウザの機能を狭めているという。
CMAは報告書の中で、「AppleのWebブラウザ『Safari』は、競合するWebブラウザと比較して、iOSやWebKitの主要な機能に優先的もしくは早期にアクセス可能だった」と指摘。このことが「市場競争とイノベーションに悪影響を及ぼしている」と批判した。
CMAの調査では、AppleがプログレッシブWebアプリケーション(PWA)の開発を抑制している可能性も判明した。PWAは、WebサイトやWebブラウザベースのアプリケーションをネイティブアプリケーションのように動作させるものだ。報告書によると、PWAは「開発者にとって低コストで開発が容易」とされている。どのOSでも実行でき、アプリケーションストア経由で配信する必要がないためだ。PWAの場合、Appleはアプリケーションストア「App Store」で課している手数料を得ることはできない。
Appleは「他のHTMLレンダリングエンジンの使用を許可すると、セキュリティ、プライバシー、処理性能などの点でリスクが生じる可能性がある」と主張したが、CMAは「これらのリスクは他の方法で軽減できる」と判断した。
報告書によると、他のHTMLレンダリングエンジンはセキュリティ面でもWebKitと同等の性能を示している。「Appleが現在許可している頻度よりも頻繁にセキュリティアップデートを実装できない」など、Appleが課す制約によって、他のWebブラウザの機能向上が妨げられているという。
CMAが指摘したもう一つの問題は、iOS向けアプリケーション内でブラウジング機能を提供できないことだ。これはGoogleのOS「Android」では可能な機能だ。Appleによると、アプリケーションがWebKitを含むApple独自の技術を使用する必要があるため、iOSではアプリケーション内のブラウジング機能を開発できない。
CMAは、Googleの製品設計についても「Webブラウザの市場競争を著しく困難にしている」と指摘する。「Androidを搭載したモバイルデバイスでは、Googleが特定のアプリケーションをエンドユーザーの画面上で目立つように配置したり、“デフォルト”のオプションとして扱ったりすることができる」という。
CMAの独立調査グループの議長であるマーゴ・デイリー氏は「詳細な調査の結果、異なるモバイルブラウザ間の競争が適切に機能しておらず、英国の技術革新を妨げていることが分かった。CMAが今回示した調査結果は、今後の調査にも役立つ」と述べる。
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
新人の早期戦力化を図るためにも効率的かつ効果的な指導・育成が求められるが、この実践には多くの課題が付いて回る。新人育成を取り巻く課題について解説した上で、業務の可視化に焦点を当て、効果的な指導につながるポイントを紹介する。
業務の質とスピードを向上させ、より高い価値創造を実現するため、データ仮想化プラットフォームを導入した東京エレクトロン。保守・運用を支えるパートナー企業と連携し、より高度なデータ活用への挑戦を続けている。
借入金の返済能力を適切に把握することは、利益やキャッシュを生み出す経営に舵を切るなど、経営上の意思決定を下す上で必要な要素だ。返済能力を算出する上で、間違いやすい点を確認しながら、適切な指標について解説する。
老舗企業であるメガネの田中チェーンは、デジタル技術を活用し、多くの課題を抱えていたヘルプデスク業務の変革に着手した。課題を解決するために同社が選定したのは、あるサービスデスクツールだった。本資料で同社の取り組みを紹介する。
2019年にベトナム・オフショア事業を立ち上げたデザインワン・ジャパン。同社は、新規顧客の開拓・獲得に向けIT案件特化型のビジネスマッチングサービスを利用し、新規案件の受注につなげている。本資料では同社の取り組みを紹介する。
2025年の「IT導入補助金」で中堅・中小が導入すべき2つのツール (2025/3/31)
申請業務のシステム化が難しい理由とその解決策とは (2024/9/27)
運用・管理はお任せ 生成AIを安全に活用できるRPAプラットフォーム (2024/5/16)
オンライン研修で情報処理安全確保支援士の取得と維持を支援 (2024/2/1)
セキュリティ対策にDX 情シスが「やりたくてもできない」状況から脱するには? (2024/1/29)
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「AIエージェント」はデジタルマーケティングをどう高度化するのか
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」の大型アップ...
「政府」「メディア」への信頼度は日本が最低 どうしてこうなった?
「信頼」に関する年次消費者意識調査の結果から、日本においても社会的な不満・憤りが大...