2025年、企業の経営層はCIOにどのような役割を期待するのか。調査レポートや有識者の意見を基に、CIOが注目すべき要素を4つ紹介する。
調査会社Gartnerによると、2025年の世界のIT支出は5兆7400億ドルに達し、2024年と比べて9.3%増加する見通しだ。IT支出が増加する中、企業の経営層はCIO(最高情報責任者)に新たな役割を期待している。前編に続き、CIOに期待される新たな役割と、役割に影響を与える要因を紹介する。
マネジメントコンサルティング会社Swingtideのプレジデントを務めるダイアン・カルコ氏によると、ベンダーとの関係構築が、CIOに託された新たな役割だ。
過去にCIOを務めた経験を持つカルコ氏は、「CIOは企業の中で幾つものベンダーとの関係を構築する立場にあることを認識する必要がある」と指摘する。
カルコ氏は「必ずしもCIO全員がベンダーとの関係構築の役割に応えられているわけではない」と説明する。同氏によると、ベンダーとの契約内容の見直しや主要なベンダーとの関係構築を十分にできてないCIOがいる。ベンダーとの関係構築に注力できなければ、得られるはずの支援を受けられなくなる恐れがある。
調査会社Gartnerによると、2025年にCIOに期待される役割の一つに「イノベーションの推進」がある。これは、世界中のCIOなど経営幹部(CxO)を対象とした年次調査レポート「2025 CIO Agenda」で明らかにしたものだ。同レポートは、売上高17.6兆ドル、IT支出3510億ドルの企業で働く3100人のCIOに調査した結果に基づく。
イノベーションの推進はCIOの役割として新しい要件ではない。ただし企業の経営層は2025年、CIOに人工知能(AI)技術を使った試験的な取り組みではなく、具体的な成果を求めるという。言い換えれば、ビジネスニーズに効果的に対処したり、成果を計測可能な方法でイノベーションを推進したりすることが期待されている。
「CIOは、計測可能な成果をもたらすイノベーションを生み出すことで、企業の目標達成を後押しする存在となる」。オンライン研修ベンダーSkillsoftのCIOであるオーラ・デイリー氏はこう説明する。イノベーション関連のIT支出の優先順位付けはCIOにとって重要な職務であり、投資額の増額を求めるのであれば、どのようなビジネスケースに使うのかを示すことが求められる。
デイリー氏によると、かつてはIT戦略と事業戦略の間には境界線が存在した。しかし「その境界線は曖昧になってきている」という。同氏は「IT戦略と事業戦略を一体化させる必要がある」と述べる。
一部のCIOは、売り上げや収益といった事業の成功度を測る指標に責任を持ち、説明するようになっている。そうしたCIOは顕著な成果を上げているという指摘もある。
Gartnerの調査レポート「2025 CIO Agenda」は、3100人のCIOに加えてIT以外の領域を指揮する1100人のCxOも調査した。その結果、IT部門の運用や変革を共同で担うCIOやCxOを意味する「デジタルバンガード」という存在を見出した。デジタルバンガードの71%は、イノベーションの目標を達成した、もしくは目標を上回る成果を上げたことが分かった。
「縦割り型の業務遂行は終わりだ。これから重要なのは、IT戦略と事業戦略を一致させるだけでなく、一体化し、相互に強化し合うことだ」。不動産会社Parkway Corporationのシニアバイスプレジデント、CIO、CMO(最高マーケティング責任者)であるRJ・ジュリアーノ氏はこう述べる。
ジュリアーノ氏は、2025年にこの傾向は支配的になると見ている。将来的には、CIOに従来型の役割を担わせるのではなく、企業の成長に直接貢献する役割を期待する企業は増加するという。同氏もこの課題に取り組み、成功を収めている。
モンタナ大学(University of Montana)でCIOを務めるザック・ロスミラー氏は、自身の業務に影響を与える要因の一つとしてサイバーセキュリティを挙げる。進化する脅威から大学のデータとITシステムを保護するためには、「終わりのない取り組みが必要だ」と指摘する。
ロスミラー氏によると、AI技術を悪用したサイバー攻撃は進化し続けている。2025年には攻撃がより洗練され、複雑になると予測する。
ロスミラー氏の懸念はCIOに共通するものだ。Gartnerの2025年版「The CIO Report」は、2025年のCIOの課題の一つとしてサイバーセキュリティを挙げている。
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