「CIOは3年で辞める」説が常識に これからのIT部門はどうあるべき?CIOの在任期間が短い理由【後編】

CIOが短期間で転出することは、組織にとって脅威ではなく機会になり得る。どのような生かし方をすればよいのか。具体的な注意点を解説する。

2025年02月21日 08時15分 公開
[Neil PriceTechTarget]

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 最高情報責任者(CIO)の在任期間は比較的短い傾向にある。これを明らかにしたのは、IT人材紹介企業Harvey Nashが公開したレポート「2023 Nash Squared Digital Leadership Report」だ。同レポートは1998年から2023年にかけて実施した年次調査をまとめている。こうした傾向は、CIOという役職の「重要な技術変革プロジェクトを成功させる」役割から生じるものだ。プロジェクトの成功を見届けたCIOが、新たな変革を導くために別の組織に移りたくなる気持ちを抱くのも無理はない。

 本質的に在任期間が短くなりやすい特性を持つCIOを、組織が雇う上での考慮点は何か。同時に、CIOになりたい人は何に注意して行動すべきなのか。

「すぐ辞めるCIO」こそがチーム作りの鍵?

 組織にとって、重要な変革を導く適任者を見つけることは、その人物が数年で転出する可能性を認めることでもある。これは不安材料になり得る。過去の在任期間が3〜5年程度だったという理由で、組織が有力な候補者の採用を見送ることがある。だがそうした経歴はその人の個性そのものであり、優秀であることの証だ。採用時には率直に話し合い、採用後も継続的に互いの意見を確認することが望ましい。

 そもそも新しい技術的な優先事項や課題が浮上すれば、状況は変わるものだ。組織は固定的な考えにとらわれず、臨機応変に人材を採用する必要がある。

CIOになりたい人のための注意点

 IT分野の人材は、たいてい変化の速さに慣れている。在任期間の短さはIT系の役職全般に共通する特徴だ。常に新しいスキルを習得しなければならず、テキストや画像などを自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」のような、新しい重要技術も登場する。IT分野の人材が担う仕事は、技術の進化に合わせて変化している。

 ただしCIOあるいはCIO志望者だからといって、常に異動を繰り返す必要はない。CIOの職務は、従来の技術変革の推進から、より広範囲に及んでいる。2023 Nash Squared Digital Leadership Reportが参照する2023年の調査では、CIOやそれに相当するポストの68%が取締役会のメンバーだった。いまやCIOはIT部門だけではなく経営全体に関わり、事業戦略の立案にも携わる。在任期間はCIOの個人的な目標と、主要な経営目標の両方に関与する立場にあるのだ。

 キャリアの選択肢も広がっている。特定の目標のために短期で任命される暫定CIOや、複数組織で職務を分担するパートタイムCIOも一般的になりつつある。ベテランのCIOが非業務の執行取締役に転じ、新たな視点で貢献する場合もある。

変化に追随する

 CIOの在任期間の短さは今後も続く見通しだ。特に生成AIの台頭によって、技術が変化するスピードはますます加速している。これは良いことでも悪いことでもなく、単に技術変革の実体を反映しているものだ。組織とIT人材の両方に、そうした変化への即応力が求められる。

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