AIによる効率化は、より自由な時間をもたらすと期待されてきた。しかし実際には、AIの導入が労働環境の悪化を招く可能性もある。
自由――それはあらゆる技術革新の原動力だ。人類は「効率化」を追求することで、自由な時間を手に入れようと夢見てきた。とりわけAI(人工知能)技術は、労働を効率化し、自由な時間をもたらす「解放の旗手」として称賛されてきた。
しかし、現実はどうだろうか。人間は退屈で反復的なタスクから解放され、より創造的で価値の高い業務に取り組み、ワークライフバランスも手に入る――そうした期待は遠のいているように思える。
なぜAI技術の導入が進むにもかかわらず、労働時間が減るどころか長時間労働を強いられ、終わりのない生産性向上を追い続けることになるのか。
AIスタートアップGreptileの事例を考えてみよう。同社は「競争力の維持」を名目に、従業員に週84時間の労働を強制しているという。これは単なる一企業の事例ではなく、「AIが職場をどのように変革しているか」を象徴する出来事だ。
ベンチャーキャピタル(VC)による資金調達競争が激化する中で、企業は生き残りをかけて過酷な労働環境を受け入れざるを得なくなっている。結果として、従業員は仕事に追われ、仕事とプライベートの境界はますます曖昧になっている。
企業は、AIモデルが24時間休むことなく稼働し、常に分析、最適化、予測できると知ると、次第に人間の従業員にも同じことを求めるようになる。しかし、人間の生産性には限界があり、機械のように休みなく働き続けることはできない。
表面的には、AIツールは本来の目的通り業務効率化を実現している。その一方で、多くの職場ではAIが新たなプレッシャーの源となっている。皮肉なことに、AIツールは従業員の負担を軽減するどころか、むしろ従業員からより多くの成果を引き出すための道具として利用されているのだ。
AIツールを活用することで、企業は社員の作業スピードや生産量を詳細に記録・分析できるようになった。このデータは、従業員の働きぶりを細かく監視し、厳しく評価するための手段として使われている。従業員は単に「どのような成果を出したか」だけでなく、「どれだけ効率的に成果を出したか」まで厳しく評価される。結果、労働者へのプレッシャーは増大し、労働負担はさらに重くなっていく。
誰でも、人間がコンピュータのように効率よく働くことなど不可能だと知っている。コンピュータは睡眠も食事も必要としない。それにもかかわらず、企業の管理職はAIを「従業員を管理するためのツール」として使い、常時オンラインで応答できるよう求め、休息の余地を奪っている。AIが「もっと仕事ができる」と示せば、企業はさらなる成果を要求する。それが従業員の健康や幸福を犠牲にしようとも、意に介さないのだ。
次回は、AIによる業務効率化に取り組む上での注意点について考える。
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