「WildFly」「JBoss EAP」の基本的な違いは? Java2大APサーバ比較歴史から探る相違点と類似点

「Java」のアプリケーションサーバ「WildFly」と「Red Hat JBoss Enterprise Application Platform」(JBoss EAP)は何が違うのか。両者には共通する部分は多いものの、明確な違いがある。

2020年10月26日 05時00分 公開
[Cameron McKenzieTechTarget]

 「WildFly」と「Red Hat JBoss Enterprise Application Platform」(JBoss EAP)という、Red Hatが管理する2つのアプリケーションサーバ(APサーバ)がある。両者は何が違うのか。

 JBoss EAPのオープンソースソフトウェア(OSS)版は、以前「JBoss Application Server」(JBoss AS)という名称だった。この2つの名称が似ていたことが、あまりにも広範に混乱を引き起こした結果、Red HatはJBoss ASの名称をWildFlyに変更した。

 かつてJBoss EAPの新しいバージョンはJBoss ASをベースに構築されていた。それはJBoss ASの名称がWildFlyに変わった現在も変わらない。以下でWildFlyとJBoss EAPの歴史を整理し、両者の類似点と相違点を紹介しよう。

WildFlyとJBoss EAPの関係

 JBoss EAPは「Jakarta EE」準拠のプロプライエタリアプリケーションサーバで、Red Hatが商用サポートを提供する。Jakarta EEとは、プログラミング言語および開発・実行環境「Java」の企業向け仕様群「Java Enterprise Edition」(Java EE)のオープンソース版で、Java EEと互換性を持つ。単純に言えばJBoss EAPはWildFlyの商用版にすぎない。

 Red Hatでアプリケーション開発・デプロイ支援ミドルウェア「Red Hat Runtimes」の技術製品マネジャーを務めるジェームス・フォークナー氏によると、WildFlyはJBoss EAPを構築する土台となるアップストリーム(上流)プロジェクトだ。「JBoss EAPの新機能の多くは、まずWildFlyで実装される」(フォークナー氏)

 JBoss ASの最後のメジャーバージョンは「JBoss AS 7」だった。このバージョンが準拠していたのは「Java EE 6」だ。WildFlyに名前を変えた最初のバージョン番号は8で、「Java EE 7」に準拠していた。2020年6月公開の「WildFly 20」は「Jakarta EE 8」準拠であると同時に「Java EE 8」に準拠している。

WildFlyとJBoss EAPの相違点

 開発者は、WildFlyを「JBoss EAPの新機能が生まれる土台」だと考えることができる。WildFlyは、ソフトウェアの開発プロセスを自動化する「継続的デリバリー」(CD)モデルを採用しているため、JBoss EAPよりもバージョンの更新が頻繁だ。つまりWildFlyユーザーは、JBoss EAPに新機能が加わったバージョンの公開を待たずに、その新機能を使ったり、最新バージョンについてのフィードバックを提供する機会を得たりできる。WildFlyと比べて、JBoss EAPのバージョンアップ頻度ははるかに少ない。

表 WildFlyとJBossの違い
名称 WildFly JBoss EAP
ベンダー Red Hat
Java EEとJakarta EEへの準拠
ライセンス GNU Lesser General Public License(LGPL)
サブスクリプション形式の料金体系
利用可能言語 Java
Eclipse MicroProfile 組み込み済み 拡張パックが必要

 API(アプリケーションプログラミングインタフェース)の観点から見たWildFlyとJBoss EAPの大きな違いは「Eclipse MicroProfile」の利用方法にある。Eclipse MicroProfileは、マイクロサービスアーキテクチャ(独立性の高い小規模のサービスを組み合わせるアプリケーション構造)に基づいたJavaアプリケーションを開発するための仕様群だ。WildFlyはEclipse MicroProfileに基づく機能を利用するためのAPIを標準で含む。JBoss EAPでEclipse MicroProfile準拠のAPIを利用するには、そのための拡張パック「JBoss EAP XP」(Eclipse MicroProfile Expansion Pack)をインストールしなければならない。

 WildFlyとJBoss EAPの違いで重要な要素は他にもある。Red HatがJBoss EAPだけにサブスクリプション形式の課金体系を提供している点だ。他の要素はアプリケーションサーバを比較する際の一般的な項目にすぎない。WildFlyとJBoss EAPは相違点よりも共通点の方が多いと言える。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬩幢ス「隴取得�ス�ク陷エ�・�ス�。鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�、鬩幢ス「隴主�讓滂ソス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス�ス�ス�ス

製品資料 サイボウズ株式会社

「ERP×ノーコードツール」のアプローチを推進するためのポイントとは?

DXが進み、レガシーシステムからの脱却が喫緊の課題となっている今。「ERP×ノーコードツール」のアプローチで基幹システムの刷新に取り組む企業が増えている。そのアプローチを推進するに当たってのポイントを解説する。

事例 サイボウズ株式会社

ローコード/ノーコード開発ツールで実現する、変化に強い組織の作り方

DXの本質は、デジタル技術を駆使して変化に適応する能力を身につけることにある。その手段の1つとして注目を集めているのが、ローコード/ノーコード開発ツールだ。京王グループなどの事例とともに、その特徴やメリットを紹介する。

事例 サイボウズ株式会社

ノーコードツールでDX人材を育成、京セラや日本航空などの事例に学ぶ効果の実態

DX人材の重要性が高まる中、ノーコードツールの活用によって業務改革と人材育成を両立しようとする動きが活発化している。年間約780時間の工数削減を実現した京セラをはじめとする5社の事例を基に、その実態を探る。

事例 アステリア株式会社

ものづくり現場で「足かせ」のアナログ業務、9社の事例に学ぶ業務改善の秘訣

急速に進化するデジタル技術は、製造業などのものづくりの現場にもさまざまな恩恵をもたらしている。しかし、設備点検業務や棚卸業務などの立ち仕事や移動が多い現場では、いまだにアナログ業務が残存し、効率化の妨げとなっているという。

事例 アステリア株式会社

工場・倉庫の「隙間業務」をデジタル化、11社の事例に学ぶ現場DX

あらゆる業界でDXの重要性が増しているが、工場や倉庫の中にはデジタル化が後回しにされている隙間業務が多数ある。その理由を明らかにした上で、それらの業務をモバイルアプリでデジタル化し、現場DXを推進する9社の事例を紹介する。

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

「WildFly」「JBoss EAP」の基本的な違いは? Java2大APサーバ比較:歴史から探る相違点と類似点 - TechTargetジャパン システム開発 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

TechTarget郢ァ�ク郢晢ス」郢昜サ」ホヲ 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

鬩幢ス「隴取得�ス�ク陷エ�・�ス�。鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�、鬩幢ス「隴主�讓滂ソス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ゥ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ュ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ー

2025/05/12 UPDATE

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。