Oracleからの移管
「Java EE」の後継「Jakarta EE」が公開、両者の違いは?
Oracleから「Java EE」を譲り受けたEclipse Foundationが、2019年9月にJava EEの互換版「Jakarta EE」をリリースした。その詳細や今後の開発方針を関係者に聞いた。
統合開発環境(IDE)「Eclipse」を管理する非営利団体Eclipse Foundationは2019年9月10日、Oracleから譲り受けた「Java」の企業向け仕様「Java EE」のバージョン8と完全互換性を持つ「Jakarta EE」バージョン8を公開した。これにより、OracleからEclipse FoundationへのJava EEの移管が完了したことになる。
Eclipse Foundationはバーチャルカンファレンス「JakartaOne Livestream」において、Jakarta EE 8と、その軽量版「Web Profile」を発表した。Eclipse Foundationのエグゼクティブディレクターを務めるマイク・ミリンコビッチ氏は「これは業界にとって大きなニュースだ」と強調する。この発表により、Java EEに関する知的財産、プログラム、仕様がOracleからEclipse Foundationに移り、コミュニティーがプロジェクトを主導することになると、同氏は説明する。
「クラウドネイティブなJava」の実現を目指す
Java EEは、Eclipse Foundationの管理下に置かれることによって、クラウドネイティブ環境でのアプリケーション開発の要件を満たす方向へ進む。Eclipse Foundationは資料「Fulfilling the Vision for Open Source, Cloud Native Java」(オープンソースでクラウドネイティブなJavaの実現)を公開し、その中でクラウドネイティブなJavaとその重要性、Jakarta EEの今後の方向性を説明している。
「これはJakarta EEプロジェクトの大きな第一歩であり、絶妙のタイミングだった」。クラウド環境での開発に特化したプログラミング言語を手掛ける新興企業xqiz.itで、創業者兼CEOを務めるキャメロン・パーディー氏は、Jakarta EE 8についてこう語る。「次の『Jakarta EE 9』が出て初めてこのプロジェクトの真価が証明され、仕様公開の間隔やクラウド適性などが明らかになるだろう」
既存のJavaシステムをクラウドやハイブリッドクラウドに移行したい企業にとっても、今回の発表は大きな意味を持つ。ミリンコビッチ氏によると、IBMやその傘下にあるRed Hatなどのメンバーが主導するEclipse Foundationは、そうした企業の要望に応えていくという。「Javaアプリケーションを、マイクロサービスアーキテクチャや『Docker』『Kubernetes』など新しい技術を使ったアプリケーションに生かしたいと考える開発者は多い。これを機会に、今後20年のアプリケーション開発におけるJavaへの需要と関心を再生したい」(同氏)
「Java」という名前は使えない
2019年9月時点で、Eclipse FoundationはまだJakarta EEのロードマップを発表していない。短期的な目標は、標準版である「Java Standard Edition」(Java SE)のサポートを、最低でも「Long Term Support」(長期サポート)版リリースである「Java SE 11」と互換性を持つようアップグレードすることだ。Jakarta EE 8は現在、「Java SE 8」と互換性がある。
Eclipse FoundationがOracleから要望を受けている項目は多数ある。中でも「これから数週間から数カ月で決定したい優先事項の一つ」だとミリンコビッチ氏が語るのが、名前空間(機能やオブジェクトの命名規則)だ。Java EEの移管交渉の中で、OracleはEclipse Foundationによる「javax」パッケージ(機能群)の名前空間の修正や、Javaの商標の使用を認めなかった。「Java」という名前は既存の仕様名称も含め、Jakarta EEでは使用できない。同氏によると、javaxからJakartaへの移行は、全てを一斉に変更する「ビッグバン」式か、段階的に移行するかのどちらかになるという。
Javaコミュニティーへの貢献
競合する大企業同士が、新しい仕様を支援するために協力し合ったことも大きな成果だ。Jakarta EEの開発や普及を推進するワーキンググループ「Jakarta EE Working Group」にはIBM、Payara Services、Red Hat、富士通、Tomitribeが中心メンバーとして加わっている。
業界分析企業RedMonkのアナリストであるスティーブン・オグレイディ氏は次のように話す。「Eclipse Foundationが主導して多様な参加企業を取りまとめ、Javaコミュニティーをクラウドネイティブの方向へ導いたことは大きな成果だ。Javaコミュニティーほど巨大になると、ほんのわずかな進路変更にも想像を絶する労力が必要となる。これを成し遂げたのはEclipse Foundationの功績だ」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
なぜOpenAIやAnthropicのAIは「脱走」したのか 情シスが迫られるエージェント統制
-
5
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
6
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
7
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
8
ANAが専用回線から移行した「NaaS」の全貌 ネットワーク準備が数カ月から数週間に
-
9
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
10
「プログラマー不要論」にThe Linux Foundationが示した答え
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー