「CIOはすぐ辞める」が当たり前? 短命リーダーが活躍している理由とはCIOの在任期間が短い理由【前編】

組織のIT戦略を担うCIOは、在任期間が短くなりがちだ。こうした傾向が生まれる背景には、CIOが持つ役割やITの性質がある。どういうことなのか。

2025年02月14日 08時15分 公開
[Neil PriceTechTarget]

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 最高情報責任者(CIO)の平均在任期間は3〜5年程度と、比較的短い傾向にある――。IT人材紹介企業Harvey Nashは、1998年から2023年にかけて実施した年次調査をまとめたレポート「2023 Nash Squared Digital Leadership Report」でその傾向を示した。こうした傾向はなぜ生まれるのか。

CIOがすぐ辞めてしまう理由

 Harvey Nashは2023年6月から8月にかけて、86カ国2104人のIT系経営層を対象とした調査を実施し、その結果を2023 Nash Squared Digital Leadership Reportに反映している。2023年の調査結果によると、CIOの72%は在任期間が5年以下だった。2年以下だったというCIOは37%に上る。例外やこれに当てはまらない場合もあり、在任期間が10年以上であるCIOは17%いた。

 在任期間の短さには理由がある。技術は変化のペースが速く、常に進化している。ほとんどの組織はデジタル化や変革の途上にある。CIOは業務アプリケーションのクラウド化、AI(人工知能)技術や自動化技術の導入など、変革の重要な段階において組織のかじ取りを担うために就任し、持続可能な未来へと組織を導くことが役目だ。

 変革に終わりがないのと同様に、CIOの職務もそこでは終わらない。変革には「完了」という概念はない。技術は時とともに進化し、変化し続ける。

 CIOは、重要な開発・導入プロジェクトを成功させることを主な使命として就任する。そのプロジェクトが終われば、新たな挑戦を始めたいという気持ちが芽生えてくるのは自然なことだ。CIOに就任する人は、概して別の組織における変革の実績を買われて採用されており、そうした変革を起こし続けたいと考えるものだ。

組織の規模や業種による違い

 前述の通り、CIOの就任期間が短い組織ばかりではない。誰にでも個別の動機や優先事項、キャリア目標がある。役職に長くとどまって組織の変革を導きたいと考えるCIOもいる。集中的な変革期間を経た後は、その成果が定着し、日常業務に組み込まれていく過程を見届けたいと考えるCIOもいる。

 組織の規模や業種によっても事情は違う。従業員が数千人の大規模組織の場合、CIOの役割は短期的な変革の実現よりも、複雑な組織全体をまとめるリーダーシップが重視される傾向にある。これは本質的に、長期的な視点で組織の発展を導く役職であり、個別の変革プロジェクトでは配下の管理職が変革推進の実務を担う。スタートアップ(新興企業)などの小規模組織の場合、それよりも速く変化が進む傾向があり、段階が進むにつれて技術部門の責任者も入れ替わりやすくなる。新興のFinTech(金融とITの融合)企業よりも、大手金融機関の方がCIOの在任期間が長くなりがちだ。

 業種別に見ると、政府機関や公共機関は変化のペースが緩やかであるため、CIOの在任期間は比較的長い。民間企業には明確なパターンはなく、企業ごとの状況や技術の成熟度、経営目標によって異なる。


 次回は、CIOが組織および当人にとってどのような意味を持つのかを解説する。

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