生成AIに足りないのはやはり“あれ”? 浮き彫りになる「職場の本音」生成AI導入の実態と隔たり

企業におけるAI導入が進んでいるものの、その導入状況や受け入れ意識は職場によってばらつきがあるようだ。調査で見えたAI導入の意外な実態や、従業員の本音を紹介する。

2025年06月09日 07時30分 公開
[Don FluckingerTechTarget]

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 ビジネスにおける生成AI(AI:人工知能)活用が着実に広がりつつあるが、その導入状況は業種や業界によって差があるようだ。コンサルティング企業Perficientと情報サービス企業Thomson Reutersが発表した調査レポートを基に、企業における生成AI導入の意外な実態や、従業員の生成AIに対する意識を考察する。

調査で分かった、AI導入の「意外な実態」と「職場の本音」

 Perficientは2025年5月、調査レポート「State of GenAI in the Workforce」を発表。業種や政府機関を問わず北米在住のオフィスワーカー1054人を対象に、生成AIの職場利用に対する活用状況を聞いた。その結果、回答者の26%が「全面導入済み」、28%が「一部導入済み」と回答した。使用する生成AIツールは、既製の生成AIツール、ローコード(最小限のソースコード記述)ツールで構築したもの、完全に独自開発したものに分かれていた。

 Perficientにとって予想外だったのは、従業員が生成AIに関するトレーニングをほとんど受けていないことだ。Perficientでエンタープライズデータ戦略責任者を務めるエリック・ウォーク氏は次のように話す。「回答者の約半数が、企業のIT部門から時折メールを受け取るだけで、それ以外に何の教育も受けていないと答えたのは驚きだ」。同社によると、AI導入を進める上で重要なのは、質の高い教育と導入支援だという。

 生成AIツール導入の成果として、32%が「アウトプットの品質が向上した」、17%が「アウトプットの量が増加した」、27%が「両方向上した」と回答した。特に、AIアシスタントのような存在が生成AI活用で高い成果を上げているという。生成AIツールのユーザーの約3分の2が「生成AI導入の成果は、8〜10年の実務経験を持つ人材の成果に匹敵する」と感じていることも分かった。

法律・税務分野におけるAI導入状況は?

 Thomson Reutersは、2025年4月に調査レポート「2025 Generative AI in Professional Services Report」を発表。2025年1〜2月にかけて、法律、税務・会計・監査、企業リスク・不正、政府の各専門職1702人を対象に、生成AIの導入状況とその意識について調査した。

 調査では、回答者の22%が生成AIを「既に導入済み」、18%が「導入予定」、32%が「検討中」、28%が「導入予定なし」と回答した。導入済みの割合は2024年の12%からほぼ倍増しており、全体の約90%が「自身の専門領域でも生成AIは活用可能である」と考えている。一方、「活用すべきだ」と考える人の割合はそれよりも少なく、政府関係者では半数未満、法律関係者でも約60%にとどまった。

 生成AI導入に前向きな回答者は、「低付加価値業務の自動化」「業務プロセスの簡素化」「時間の節約」といった理由を挙げている。一方で生成AI導入に慎重な回答者は、「信頼性や正確性が不十分」「人間味や直感の欠如」「人間による監督や規制が必要」といった懸念を示した。

 税務担当者の半数が「生成AIは自分の仕事にとって無視できない脅威だ」と回答しており、法律関係者の約3分の2も同様の認識を持っている。法律関係者にとって最大の懸念は、生成AIが無資格者による法律業務をオンラインで助長する可能性にあり、73%が懸念を表明している。

 「弁護士や税理士、リスクマネジャーは生成AIによって定型業務を自動化し、より戦略的な業務に時間を充てたいと考えている。その一方で、経営判断や組織の評判に関わる高度な業務については、生成AIをまだ信用していない」。Thomson Reutersで法人部門プレジデントを務めるローラ・クレイトン・マクドネル氏はこう見解を述べる。

 人々は私生活でAIベンダーOpenAIのAIチャットbot「ChatGPT』をためらいなく使うのに対し、職場での使用については慎重になる傾向がある。「私生活と仕事における生成AIとの接し方のギャップが浮き彫りになっている」(マクドネル氏)

<翻訳・編集協力:雨輝(リーフレイン)>

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