ビジネスにおける生成AIの導入が進むと同時に、企業は幾つかの課題に直面している。意思決定者への調査を基に、主要な問題を4つ紹介する。
ビジネスにおける生成AI(AI:人工知能)活用が進むにつれて、そのメリットと共に導入時の課題も明らかになりつつある。米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)が企業のIT部門と業務部門の意思決定者800人以上を対象に実施した調査を基に、生成AI実装を進める組織が直面する4つの課題を解説する。
ESGは2024年9月、調査レポート「The State of the Generative AI Market: Widespread Transformation Continues」を発表。企業のIT部門と業務部門の意思決定者800人以上を対象に、生成AIの活用状況について聞いた。
生成AI導入の最大の課題は依然として専門知識とスキルの不足だ。ESGの調査では、41%の企業が「生成AIの取り組みをけん引する人材の確保」に苦労している。AIスキルを持つ人材の不足は以前から指摘されており、近年の生成AIブームで人材を巡る競争は激化している。特に中小企業や技術面で後れを取っている企業にとって、AI人材の獲得は一層困難になっている。
データ品質の欠如は、AIプロジェクトの成功を妨げる長年の課題であり、プロジェクトが成熟するにつれてその重要性は一層高まる。AIモデルのトレーニングに使用されるデータには、正確性と信頼性が不可欠だ。しかし、多くの企業が保有するデータは一元的に管理されていなかったり、AIモデルが扱える形式で保存されていなかったりするケースが依然として多い。
レガシーシステムは旧式のインフラやプログラミング言語で構築されている傾向にあり、最新のAIツールとの統合にはさまざまな課題が伴う。調査では、回答者の約65%が「生成AIアプリケーションを支えるためにインフラを変更または近代化する必要がある」と答えている。
2023年、ほとんどの企業は生成AI活用の初期段階にあり、概念実証(PoC)に取り組んでいた。PoCでは通常、小規模かつ独立したアプリケーションを設計し、限られたデータセットを使用して、既存システムから切り離された環境で実施される傾向があった。昨今、生成AIの本格導入が進むにつれ、既存システムとの連携が必要不可欠になっている。
生成AIが本番環境に導入されるにつれ、法規制に関する懸念も高まっている。2024年には、「欧州(EU)AI規正法」のようなAI技術に特化した法令が施行された。米国の著作権法やEUのGDPR(一般データ保護規則)など、既存の規制を生成AIシステムにどう適用するか理解することも必要だ。
回答者の約4分の3は、生成AIの導入がデータプライバシーやセキュリティにもたらすリスクに懸念を示した。特に金融や医療といった規制が厳格な業界では、企業は既存の法令を順守するだけでなく、将来的な法規制の動向を予測して対策を講じることが求められる。
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