「生成AIをうまく実装できない」の原因は? 知識不足だけではない4大問題生成AIの実装はどこまで進んだ?【後編】

ビジネスにおける生成AIの導入が進むと同時に、企業は幾つかの課題に直面している。意思決定者への調査を基に、主要な問題を4つ紹介する。

2025年01月09日 05時00分 公開
[Lev CraigTechTarget]

関連キーワード

人工知能


 ビジネスにおける生成AI(AI:人工知能)活用が進むにつれて、そのメリットと共に導入時の課題も明らかになりつつある。米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)が企業のIT部門と業務部門の意思決定者800人以上を対象に実施した調査を基に、生成AI実装を進める組織が直面する4つの課題を解説する。

「生成AI」実装が進む中で見えてきた“4つの課題”

会員登録(無料)が必要です

 ESGは2024年9月、調査レポート「The State of the Generative AI Market: Widespread Transformation Continues」を発表。企業のIT部門と業務部門の意思決定者800人以上を対象に、生成AIの活用状況について聞いた。

知識やスキルの不足

 生成AI導入の最大の課題は依然として専門知識とスキルの不足だ。ESGの調査では、41%の企業が「生成AIの取り組みをけん引する人材の確保」に苦労している。AIスキルを持つ人材の不足は以前から指摘されており、近年の生成AIブームで人材を巡る競争は激化している。特に中小企業や技術面で後れを取っている企業にとって、AI人材の獲得は一層困難になっている。

データ品質の欠如

 データ品質の欠如は、AIプロジェクトの成功を妨げる長年の課題であり、プロジェクトが成熟するにつれてその重要性は一層高まる。AIモデルのトレーニングに使用されるデータには、正確性と信頼性が不可欠だ。しかし、多くの企業が保有するデータは一元的に管理されていなかったり、AIモデルが扱える形式で保存されていなかったりするケースが依然として多い。

レガシーシステムとの連携

 レガシーシステムは旧式のインフラやプログラミング言語で構築されている傾向にあり、最新のAIツールとの統合にはさまざまな課題が伴う。調査では、回答者の約65%が「生成AIアプリケーションを支えるためにインフラを変更または近代化する必要がある」と答えている。

 2023年、ほとんどの企業は生成AI活用の初期段階にあり、概念実証(PoC)に取り組んでいた。PoCでは通常、小規模かつ独立したアプリケーションを設計し、限られたデータセットを使用して、既存システムから切り離された環境で実施される傾向があった。昨今、生成AIの本格導入が進むにつれ、既存システムとの連携が必要不可欠になっている。

法規制の問題

 生成AIが本番環境に導入されるにつれ、法規制に関する懸念も高まっている。2024年には、「欧州(EU)AI規正法」のようなAI技術に特化した法令が施行された。米国の著作権法やEUのGDPR(一般データ保護規則)など、既存の規制を生成AIシステムにどう適用するか理解することも必要だ。

 回答者の約4分の3は、生成AIの導入がデータプライバシーやセキュリティにもたらすリスクに懸念を示した。特に金融や医療といった規制が厳格な業界では、企業は既存の法令を順守するだけでなく、将来的な法規制の動向を予測して対策を講じることが求められる。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 株式会社ライトウェル

製造業の研究開発部門における文書検索・分析を効率化する方法とは?

製造業の研究開発部門においては情報収集も主要業務の1つだが、「必要な社内文書をすぐに見つけられない」といった悩みも聞かれる。そこで検索エンジンと生成AIを組み合わせた、文書の検索・分析システムに注目したい。

市場調査・トレンド ジェネシスクラウドサービス株式会社

AIベースのオーケストレーションで顧客体験(CX)を飛躍的に高める方法とは?

ビジネスにおいて顧客体験(CX)の向上はますます重要になっているが、従業員も含めて、全体で体験の品質を向上させるCX戦略が必要になる。そこで注目されているのが、AIをベースにしたオーケストレーションだ。

製品資料 Nishika株式会社

多くの時間や労力がかかる議事録の作成、どう効率化する?

議事録の作成は、多くの企業にとって時間や労力の負担が大きく、情報共有の停滞や業務効率の低下につながる課題となっている。このような課題を改善する方法として注目されているのが、クラウド型AI議事録作成ツールだ。

製品資料 DeepLジャパン合同会社

高い精度と自然なニュアンスで簡単に多言語翻訳、言語特化型AI「DeepL」の実力

自動車業界は、多数の国・地域にまたがるサプライチェーンで構成される。それだけに、正確なコミュニケーションは重要な課題の1つだ。その解決策として注目される、DeepLが提供する言語特化型AIはどのように自動車業界を支えるのか。

製品資料 SB C&S株式会社

今さら聞けない「生成AI」、ビジネス活用のために押さえておくべき基礎知識

生成AIが急速に普及する一方で、安心安全にメリットを享受するには、正しい理解と準備が必要となる。AIアシスタントとして今注目される「Copilot for Microsoft 365」「Azure OpenAI Service」などを例に、基礎知識や活用方法を解説する。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
メインフレームを支える人材の高齢化が進み、企業の基幹IT運用に大きなリスクが迫っている。一方で、メインフレームは再評価の時を迎えている。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...