AI向けのプロセッサ市場で支配的な立ち位置を築いてきた半導体ベンダーはNVIDIAだ。そこにAdvanced Micro Devices(AMD)とGoogleが、新たなプロセッサを携えてやって来る。その影響とは。
半導体ベンダーのAdvanced Micro Devices(AMD)と、汎用(はんよう)的なAIモデル「Gemini」を披露したクラウドベンダーGoogleは2023年12月、AI(人工知能)分野の競争激化を予感させる興味深い取り組みをそれぞれ発表した。新たな戦いの場になりつつあるのは、AI向けのGPU(グラフィックス処理ユニット)で支配的な立場を築いてきたNVIDIAが存在する市場だ。
データセンター向けのプロセッサ市場では、AI関連の処理を高速化する分野が、半導体やデータセンターを手掛けるベンダーにとっての、新たな戦いの場になりつつある。AMDとGoogleは2023年12月、AI関連の処理を高速化する”AIアクセラレーター”として、それぞれ「AMD Instinct MI300」と「Cloud TPU v5p」を発表した。どちらもデータセンター向けのプロセッサとして、大規模言語モデル(LLM)のトレーニングなど、AI関連タスクの処理速度を向上させるものだ。
AI関連のタスクでは、CPUに隣接するチップ(半導体集積回路)がその処理を担うのが一般的だ。AMDのAIアクセラレーターでは、このチップはGPUとなる。同社はGPUを搭載するAIアクセラレーターをAPU(アクセラレーテッド処理ユニット)と呼んでいる。GoogleのAIアクセラレーターでは、そのチップはGoogleがAI向けに特化して開発した独自プロセッサ「TPU」(テンソル処理ユニット)になる。
NVIDIAはゲーミング(ハードウェアをゲーム向けに最適化すること)の分野における技術をAI向けに進化させ、AI分野で支配的な立ち位置を築いたGPUベンダーだ。AMDはそのNVIDIAに追い付くことを目指している。
1530億個のトランジスタを搭載するAMD Instinct MI300は、ユーザー企業に何をもたらすのか。AMDのCEOリサ・スー氏は同アクセラレータについて「AI関連の演算処理をこれまでよりもはるかに高速に実行できる」と説明している。Dell TechnologiesやHewlett Packard Enterprise(HPE)、Microsoft、Meta Platforms、Oracle、Databricksといった企業が、AMDのアクセラレーターを自社製品やサービスで運用中か、テスト中だという。
スー氏は「生成AI(ジェネレーティブAI)はデータセンターにおいて最も要求の厳しい用途の一つだ」と強調する。「AIモデルのトレーニングに数十億個にも及ぶパラメーター(学習において最適化を実施するための変数)を使い、その処理を担うハードウェアが必要になる」(同氏)
AIモデルのトレーニングにおいては、コンピューティングを強化するほど、AIモデルの答えをより精度の高いものにしやすくなる。「その中心的な役割をGPUが担う。答えは極めてシンプルだ」とスー氏は語る。
調査会社Futurum Researchの創設者であるダニエル・ニューマン氏は、AIアクセラレーターで鍵になるのはハードウェアだと指摘する。AIアクセラレーターに求められるのは、もはや処理速度の速さだけではない。「開発者独自のLLMをハードウェアに結び付ける“オープンソースソフトウェア(OSS)のプラットフォーム”としての役割が求められている」(同氏)
NVIDIAがAI向けのプロセッサ市場で強固な立場を築いている現状において重要なのは「AMDが、OSSを使う競争力のある製品を携えて市場に参入したことだ」とニューマン氏は話す。問題は処理速度だけではない。可用性や実用性、機能の問題もある。「これからAI分野では、OSSを中心にした協力体制が必要だということを世界が認識することになるだろう」(同氏)
次回は、GoogleのTPUを中心に取り上げる。
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