CPUだけの時代に終わりを告げる「DPU」「スマートNIC」とは何か?スマートNICによるプロセッサの負荷分散【第4回】

半導体ベンダーが「スマートNIC」に注力する背景にあるのは、CPUだけでは企業のニーズを満たせない現実だ。「DPU」を提供するNVIDIAの製品展開からもその点が分かる。DPUやスマートNICで何が変わるのか。

2022年08月05日 05時00分 公開
[Saqib JangTechTarget]

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 「スマートNIC」に共通した説明は“プロセッサを積んだNIC(ネットワークインタフェースカード)”となるが、これだけではスマートNICがなぜ必要なのか分かりにくい。半導体ベンダーはCPUに集中しがちな負荷を軽減したり、新用途を開発したりするため、スマートNICの分野でさまざまな取り組みを進めている。DPU(データ処理装置)を中心に展開するNVIDIAの取り組みは、その代表的なものだ。

“CPUだけ”の時代ではない――NVIDIAも注力の「DPU」「スマートNIC」とは?

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 NVIDIAがスマートNICとして提供する「ConnectX」は、以下の技術や機能を組み込んでいる。開発者はネットワーク仮想化やセキュリティ、ストレージなどの処理をスマートNICにオフロードしたり、ネットワーク機能を高速化したりできる。

  • CPUのオフロードを実現する標準機能
  • CPUを介さずデータ転送をする「RDMA」(Remote Direct Memory Access)をイーサネットで利用する技術「RoCE」(RDMA over Converged Ethernet)
  • 「IPsec」や「TLS」(Transport Layer Security)によるデータ通信の暗号化
  • 仮想化とスイッチングを取り入れた技術「ASAP2」(Accelerated Switch and Packet Processing)
  • 通信プロトコルNVMe(Non-Volatile Memory Express)をイーサネットで利用する技術「NVMe-oF」(NVMe over Fabrics)

 DPUである「BlueField」がConnectXシリーズの中核となっている。BlueFieldはArmアーキテクチャのCPUと、広い帯域幅のネットワークインタフェースを内蔵する。BlueFieldはプログラム可能で、機械学習などの人工知能(AI)技術やセキュリティ、通信、ストレージといった用途に応じてカスタマイズできる。

「NVIDIAのスマートNIC」活用例

 NVIDIAのスマートNICを特徴付ける要素、ASAP2は「ASIC」(Application-specific integrated circuit:特定用途向けにプログラムした半導体)内蔵のスイッチで通信データを処理する。ASAP2は、

  • インタフェース規格「PCI Express」(PCIe)で接続するデバイスに仮想化技術を取り入れる「SR-IOV」(シングルルートI/O仮想化)
  • ソフトウェアだけではなくハードウェアにも仮想化の役割を担わせることでI/Oを高速化する「VirtIO」

などを含め、ネットワークを高速化する各種機能を提供する。

 ConnectXはIPsecとTLSの暗号化機能を搭載することで、CPUからセキュリティ関連の負荷をオフロードすることを実現する。ソフトウェアでなくスマートNICがセキュリティの役割を直接担うことで処理の高速化が可能になる。

 機械学習分野で注目すべき点は「Socket Direct」という技術だ。Socket Directは、PCIeのインタフェースから複数のCPUに直接アクセスする仕組みであるため、CPUのバス(データ伝送路)を経由する場合よりも、機械学習関連の処理が高速化する可能性がある。

 ストレージとの接続においてはRoCEやNVMe-oFの他、GPU(グラフィックス処理装置)がNVMe接続のストレージに直接接続する「GPUDirect Storage」という技術もConnectXシリーズは提供する。これらの技術によって、ストレージのデータをより高速に利用できるようになる可能性がある。

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