ネットワークの安定運用は、業務停止やサービス遅延を防ぐ生命線となる。ネットワークの信頼性確保において重要なプロトコルの基本を理解しよう。
業務停止やサービス遅延を防ぐ上で、ネットワークを安定的に運用することは極めて重要だ。ネットワークの信頼性を確保するには、ハードウェアだけでなく、通信を制御するネットワークプロトコルに関する知識も欠かせない。
ネットワークプロトコルは、データをネットワーク上でどのように送信するかを規定するルールとなる。そのルールがあることで、ネットワークで接続するデバイスが効率的に通信し、円滑に情報交換をすることが可能になる。本稿はネットワークの信頼性を支える主要なプロトコルとして、
の3つを取り上げ、それぞれの役割や実装上の注意点などを解説する。
ネットワーク通信の基盤となるネットワークプロトコルは、ネットワークの信頼性を維持する上で欠かせない。中でもFHRP、OSPF、BGPは、それぞれ異なる階層でネットワークの可用性と経路制御を担う重要なプロトコルだ。
FHRPは、ルーターやゲートウェイの障害が発生した際に備えて、トラフィックをバックアップデバイスへ自動的に切り替える「冗長化」のためのプロトコルだ。FHRPには、ベンダー固有の実装と、「Virtual Router Redundancy Protocol」(VRRP)のような、標準化された非ベンダー実装が存在する。
VRRPは、複数のルーターが1つの仮想IPアドレスを共有する仕組みだ。通常は「プライマリーデバイス」が仮想IPアドレスを使って処理する。万が一、プライマリーデバイスが障害を起こした場合、バックアップデバイスが仮想IPを引き継ぎ、自動的にルーティング処理を継続する。復旧時にはプライマリーデバイスが処理を再開する。
VRRPを構成する際は、L2(レイヤー2)スイッチ間の冗長構成によるループを防ぐためのプロトコル「Spanning Tree Protocol」(STP)の設定も考慮しなければならない。ネットワークの安定性を保つには、VRRPのプライマリースイッチをSTPのルートスイッチにも設定するのが望ましい。
「オブジェクトトラッキング」機能を用いれば、VRRPの対象外のインタフェース(非VRRP)も監視できる。これらのインタフェースがダウンした場合も、バックアップデバイスに自動で切り替えられるようになり、信頼性を一段と高めることが可能だ。
OSPFは、ルーターのリンク障害を迅速に検出し、「ダイクストラ法」あるいは「SPFアルゴリズム」で最適なルートを再計算できる。再計算されたルート情報は、リンクステート広告(LSA)パケットを用いて、他のルーターに通知される。
ただし、OSPFにはスケーラビリティの課題がある。OSPFは、全てのルーターにパケットをばらまく「フラッディング方式」でLSAを配信する。そのため、ネットワーク規模が大きくなると帯域幅を消費し、ルーターのCPU負荷が増える。特に、数百台規模のルーターが存在する大規模エンタープライズネットワークでは、1つのリンク障害でも全ネットワーク全体に影響が及び、全てのルーターがルート再計算を余儀なくされる可能性がある。
この問題への対処法として、ネットワークをOSPFエリアに分割し、不必要な更新の伝播を抑える方法を推奨する。
BGPはインターネットルーティングの中核を担うプロトコルだ。ネットワークを管理する際、複数のルーターを共通ルールでまとめて、AS(自律システム:単一ポリシーで制御されるネットワークの集合)を構成する。各ASには、通常インターネットサービスプロバイダー(ISP)によって管理固有の番号(AS番号)が割り当てられる。これによりAS同士が相互接続し、ルーティング制御を維持できる。
BGPを構成する際、物理インタフェースではなくループバックインタフェース上で、AS内部のBGPネイバーシップ(隣接関係)を確立する必要がある。
一方でBGPにもスケーラビリティの課題がある。全てのルーターが互いにBGPネイバーシップを形成しなければならない点だ。この問題を緩和する代表的な手法は次のとおり。
次回は、ネットワークのパフォーマンスを最適化するための戦略を解説する。
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