クラウドストレージの利用料金が想定以上になってしまう場合がある。そうした事態はなぜ発生してしまうのか。クラウドサービスの契約に特有の注意点を紹介する。
クラウドストレージをはじめとするクラウドサービスはしばしば、コスト削減の手段として位置付けられることがある。データセンターの利用料金やハードウェアの購入コスト、人件費などを削減できる場合があるからだ。実際には、クラウドサービスによってコストを削減できることもあれば、できないこともある。
「迅速に拡張可能」というのがクラウドサービスの利点だ。だがその利点が、コストをコントロールしにくくする要因になることがある。この問題を掘り下げ、過剰なコストが発生する理由を考えてみよう。
複数のクラウドサービスを使う「マルチクラウド」や、オンプレミスインフラとクラウドサービスを使う「ハイブリッドクラウド」を採用する動きが広がっている。インフラが複雑な構成になる場合、重要なのはコストのコントロールだ。
ハイパーコンバージドインフラ(HCI)ベンダーNutanixが2022年1月に発表した調査レポート「Enterprise cloud index 2021」によると、「3年以内にマルチクラウドで運用することを想定している」と回答した組織は64%だった(調査は2021年8月〜9月に、IT部門の意思決定者1700人を対象に実施)。同時に、43%の組織がマルチクラウドの課題として「コスト管理」を挙げた。
料金を支払えば必要な分のリソースを迅速に利用できることがクラウドサービスのメリットだ。例えばクラウドストレージを使えば、データセンターを自前で用意する必要はなく、将来を見越して余分な容量にお金を払う必要もない。ただしこのメリットには対価が発生する。
クラウドサービスのコストをコントロールしようとする際、落とし穴になるポイントが幾つかある。クラウドベンダーは、前払いの契約や長期契約をするユーザー企業に割引を提供している。その割引を考慮して利用料金を予測することは簡単ではない。「割引はクラウドサービスの従量課金モデルを覆すものだ」と主張する専門家もいる。
「クラウドサービスの利用料金は、基本的に利用を確約するほどお得になる」と、ITコンサルティング企業PA Consulting Groupのデジタルエキスパート、スティーブン・エドワーズ氏は語る。ユーザー企業がより多くの容量を契約しようとする場合、クラウドベンダーはユーザー企業により良い割引を与える傾向にあるという。
ストレージベンダーPure Storageで欧州・中東・アフリカ(EMEA)のCTO(最高技術責任者)を務めるパトリック・スミス氏は、割引がユーザー企業を大規模な契約へと促していると指摘する。その結果として、ライセンスを購入し過ぎたり、クラウドサービスへの移行を早まったりする事態が発生する。
「割引を前提にした契約の特徴は、決まった速度でクラウドサービスに移行しなければならないことだ」とスミス氏は言う。もし十分に速く導入できなければ、割引は減少し、想定外のコストが発生することになる。
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