いまだ不人気の無線LAN規格「Wi-Fi 7」の知られざる“すごい性能”企業での無線LAN刷新が加速するか

無線LANの業界団体WBAは、「Wi-Fi 7」の実証実験の結果を公表。企業での活用においてWi-Fi 7がもたらし得る利点と変革の可能性を説明した。

2025年07月11日 07時15分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

 企業での活用も期待される「Wi-Fi 7」(IEEE 802.11be)は、データ伝送速度の高速化やセキュリティの強化、ユーザー体験の向上などを目指す無線LAN新規格だが、これまでのところ導入実績は限定的だ。

 そうした中、無線LANの業界団体Wireless Broadband Alliance(WBA)は、企業での利用を想定したWi-Fi 7の実証実験を実施。スループット(データ伝送速度)や遅延、高負荷アプリケーションへの耐性などに関するその結果は、Wi-Fi 7の導入が今後加速する可能性が十分あることを示唆するものだった。

実証実験で新たに分かった「Wi-Fi 7」の実用性能

 WBAの実証実験は、通信事業者AT&T、通信インフラ製品ベンダーCommScope、半導体ベンダーIntelらと協力し、WBAが主導して実際の企業環境で実施したものだ。実験の主な目的は、Wi-Fi 7の実用性能を評価することであり、特にXR(拡張現実)、AI(人工知能)技術、クラウドコンピューティング、産業用IoT(IIoT)といった用途における有効性を調査した。

 実証実験では、異なる周波数とチャネル(データ送受信用の周波数帯)におけるデータ伝送速度、遅延、信号範囲に焦点を当て、テスト環境と実際の企業環境の両方でWi-Fi 7の能力を評価した。「Wi-Fi 6」(IEEE 802.11ax)の拡張版である「Wi-Fi 6E」との比較を通じて、5GHz帯および6GHz帯における通信速度と通信範囲の関係性についても検証された。6GHz帯、Wi-Fi 6Eから新たに利用可能になった周波数帯であり、既存の5GHz帯よりも広いチャネル幅を活用できることが期待される。

 WBAによると、実証実験では以下の実用性能が明らかになった。

  • Wi-Fi 7は5GHzの40MHzチャネルを使用した場合、Wi-Fi 6Eのほぼ2倍のデータ伝送速度を実現
  • 6GHz帯の160MHzチャネルでは、無線LANアクセスポイント(AP)から約12メートル(40フィート)離れた場所でも1Gbps以上のデータ伝送速度を持続
  • マルチリンクオペレーション(MLO)により、2Gbpsのダウンリンク速度と混雑の低減を実現
    • MLOは、1つの無線LANデバイスで異なる複数の周波数やチャネルで同時にデータを送受信する技術。
  • AR(拡張現実)とVR(仮想現実)、Web会議、自動化などの次世代アプリケーションを支える低遅延と効率性の向上を確認
  • 数千の接続デバイスを含む高密度環境に対応できる信頼性を確認

 今回の実証実験では、新旧さまざまなデバイスとの接続性も検証され、スマートオフィス、製造業、医療分野、没入型デジタル環境における接続課題の解消に向けたWi-Fi 7の有効性が示された。WBAは、このような高密度の商用Wi-Fi 7ネットワークで主力となる6GHz帯の160MHzチャネルに焦点を当てる一方、Wi-Fi 7がテレワークや消費者向けの小規模ネットワークで使われる320MHzチャネルも利用可能であることを強調している。

 WBAは、リアルタイムな共同作業、Web会議、AI主導の自動化、AR/VRアプリケーションを重視する企業にとって、Wi-Fi 7の低遅延とデータ伝送速度の向上が、性能のボトルネックのない「シームレス」な体験をもたらすと述べている。Wi-Fi 7が、現在も多くの旧世代デバイスが利用している5GHz帯ネットワークでも顕著な改善をもたらすことが確認され、企業がネットワークインフラをアップグレードする際にも、後方互換性とスムーズな移行が可能であるとしている。

 実証実験の結果を受けて、WBAは今後も企業におけるWi-Fi 7の導入と活用支援を進める方針だ。WBAのCEOであるティアゴ・ロドリゲス氏は、「Wi-Fi 7は単なる進化ではなく、企業向け無線接続におけるゲームチェンジャーだ」と述べる。「Wi-Fi 7の導入が進むにつれて、企業はテレワーク、没入体験、AI技術を活用した自動化など、あらゆる領域で実際にメリットを感じられるようになる。WBAは、Wi-Fi 7の可能性を最大限に引き出すために必要なデータと知見の提供に尽力する」(ロドリゲス氏)

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翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(株式会社リーフレイン)

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