MicrosoftのOS「Windows」向けのプロセッサとしてはIntelのCPUが広く知られている。その状況にNVIDIAが挑戦状を出す。Windows端末やプロセッサ分野に与える影響とは。
MicrosoftのOS「Windows」シリーズを搭載するノートPCやデスクトップPCのプロセッサとしては、IntelのCPUが広く知られている。その状況にGPU(グラフィックス処理装置)ベンダーのNVIDIAが競合として名乗りを上げて、Windows向けのArmプロセッサ(Armアーキテクチャを採用したCPU)を提供する計画が明らかになった。
NVIDIAは、人工知能(AI)技術分野で支配的な立場を確立しつつあるGPUベンダーだ。同社はAI関連の機能がクライアントOSにより強く関わるようになると見通し、Windows向けCPU市場への参入を計画しているのだと考えられる。具体的に同社がいつからWindows向けのArmプロセッサを提供するのかは明らかになっていないが、それでも今回のニュースが流れたタイミングで同社の株価は上昇した。
Windows搭載PCのプロセッサとしておなじみなのは、IntelのCPUだ。ビジネス向けと家庭向けを含めて、Windows搭載PCの市場にNVIDIAの計画がどのような影響を与えるのかはまだ分からない。同社が製造を計画するArmアーキテクチャのCPUとは、プロセッサ設計を手掛けるArmによる設計を採用したCPUを指す。Armアーキテクチャは、スマートフォンなどのモバイルデバイスのCPUとして広く採用されている。
Armプロセッサは「x86」のプロセッサよりも製造コストが安く、消費電力や発熱がより少なくなる傾向にあるため、デスクトップPCやノートPCにはArmプロセッサが適している、というのがArmプロセッサ支持者の見解だ。そうした利点をArmプロセッサにもたらしているのは、RISC(Reduced Instruction Set Computing:縮小命令セットコンピュータ)アーキテクチャだと言える。
何年にもわたってWindows用Armプロセッサを開発してきたのは、半導体製品ベンダーのQualcommだ。同社はWindows用Armプロセッサの製造に関する独占契約をMicrosoftと締結しているが、2025年までの間にこの契約の期限が切れる可能性がある。独占契約が終われば、Qualcommの他、IntelやAMD、NVIDIA、Microsoftを含めて、Armプロセッサ市場の覇権争いが始まるだろう。
NVIDIAはArmを買収する計画を2020年に発表したが、この計画は各国の規制当局によって阻止された。そうした中で、QualcommがWindows用ARMプロセッサの最先端を走り続けている。同社は2023年10月下旬、同社がハワイで開催したカンファレンスでもプロセッサの新製品を発表して話題を呼んだ。
こうした状況は、Armプロセッサが最終的にWindows用のプロセッサの標準になることを意味するわけではない。Appleはクライアントデバイス「Mac」にArmアーキテクチャの独自プロセッサを搭載するようになったという事実もあるが、Windows用のハードウェアベンダーが必ずそうした動きに追従するとは言えない。
調査会社Gartnerのアナリスト、アラン・プリーストリー氏は「プロセッサ市場では6カ月から9カ月ほどで新製品が登場しており、市場はダイナミックに動いている」と指摘する。プロセッサ市場の変化は速い。「Armプロセッサが台頭したからといって、Intelが立ち止まっているわけではない」とプリーストリー氏は語る。
NVIDIAと他の半導体製品ベンダーの違いを1つ挙げるとすれば、NVIDIAがAI分野で強固な立場を確立しつつあるプロセッサベンダーだという点だ。AI技術の利用が広がる中、プロセッサに負荷を掛けがちなAI関連のプロセスの処理、別のプロセッサに肩代わりさせる「オフロード」の重要性が高まりつつある。その手法の最先端を走っているのがNVIDIAだと言える。
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