Anthropicが発表した最新モデル「Claude Opus 4」と「Claude Sonnet 4」は、開発現場におけるAI活用の新しいフェーズの到来を示している。その特徴と戦略を解説する。
人工知能(AI)ベンダーAnthropicは2025年5月、同社の主力モデル「Claude」シリーズの最新版として、「Claude Opus 4」および「Claude Sonnet 4」を発表した。両モデルは特にコーディング支援に強みを持ち、ソフトウェア開発現場での活用が期待される。
今回のアップデートが意味するのは、単なるベンチマークスコアの改善ではない。開発におけるAI活用が、“単なるコード生成”の枠を超え、新たなフェーズへと進化している状況を示すものだ。本稿はClaude 4の技術的な進化と、その背景にあるAnthropicの戦略を解説する。
Claude Opus 4とClaude Sonnet 4は、いずれも深い思考に基づく出力と高速な応答の両方を実現する“ハイブリッドモデル”として位置付けられている。
上位モデルにあたるClaude Opus 4は、コーディングに最適化されており、複雑かつ長時間に及ぶタスクや、AIエージェントを用いたマルチステップ処理に最適化されているのが特徴だ。Anthropicの検証では、Claude Opus 4はソースコードのリファクタリング(ソースコードの動作を変えずに内部構造を整理すること)を約7時間連続で自律的に実施できたという。Claude Sonnet 4は、「Claude 3.7 Sonnet」の後継にあたり、コーディングと推論性能をバランスよく兼ね備えた汎用(はんよう)モデルとして設計されている。
有料プランのユーザーはこれら2つのモデルを利用でき、無料ユーザーはClaude Sonnet 4のみ利用可能だ。API(アプリケーションプログラミングインタフェース)経由での利用にも対応しており、Amazon Web Services(AWS)の「Amazon Bedrock」やGoogleの「Vertex AI」といったAI開発プラットフォームから利用可能だ。
従来のClaudeでは、思考プロセス全体を開示していたのに対し、新モデルでは思考の要約のみをまとめて開示する形式(thinking summaries)に変更されている。ITコンサルティング企業The Field CTOのCEOで創業者のアンディ・トゥライ氏は次のように説明する。「思考要約の仕組みは、AIが主観的な判断を行う業務や、判断根拠の説明責任が求められる場面において、AIの透明性や可観測性を担保する重要な機能となる」
他にも、両モデルには新機能「ツールの使用を伴う拡張思考」(extended thinking with tool use)が搭載されている。AIモデルは深く思考すると同時に、Web検索などの外部ツールを並行して使用できるようになった。
新モデルの発表と同じタイミングで、Anthropicは「Anthropic API」への開発者向け新機能追加を発表した。これにより、より高度なAIエージェントの構築が可能になるという。
調査会社The Futurum Groupのバイスプレジデント兼アナリストを務めるブラッドリー・シムニン氏は、開発現場におけるニーズの変化について言及する。「『ソースコードを書いてほしい』というようなシンプルな依頼は減少し、代わりに『設計を一緒に考えてほしい』『課題の背景を整理するのを手伝ってほしい』といった要望が増えている」。今やAIには、解決策の提示から設計、初期実装まで、一貫した支援が求められるようになっている。
Claude Opus 4は、従来モデルに比べて長大なソースコードや設計書の解析能力が向上している。そのため、コード補完やドキュメント生成にとどまらず、レガシーコードの保守といったより高度で複雑なタスクを担うことが期待されている。
加えて、Claude Opus 4は「思考モード」と「ツール使用モード」を状況に応じて自律的に切り替えることができる。これにより、単なるChain-of-Thought(CoT:思考の連鎖)を超えて、外部ツールとの統合や長期的な意思決定を含むより高度なAIエージェント的な振る舞いが可能になる。
「OpenAIやGoogleのように頻繁にAIモデルをアップデートして話題を集める企業と比べて、Anthropicはより慎重かつ着実なアプローチを取っているように見える」とシムニン氏は話す。Anthropicのような企業にとって最も重要なのは、短期的な注目を集めることではなく、企業の意思決定層からの信頼を獲得することだ。その意味で、現在のような慎重な戦略は非常に理にかなっているという。
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(株式会社リーフレイン)
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