「Anthropic」が提案する“業界標準”への期待と懐疑論AIとデータソースの接続を効率化?

AIエージェントを外部のデータソースに接続するプロトコル「Model Context Protocol」を、Anthropicが発表した。データソースによって異なる接続方法を一本化できる一方、一部の有識者は懸念も示す。どのような懸念か。

2024年11月29日 05時00分 公開
[Esther AjaoTechTarget]

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 AI(人工知能)技術ベンダーAnthropicは2024年11月26日(現地時間)、AIエージェントを外部のデータソースに接続するオープンソースのプロトコル「Model Context Protocol」(以下、MCP)を発表した。

 昨今、さまざまな生成AIベンダーが、タスクを与えると自律的に手順を考えて実行する「自律型AIエージェント」を開発している。開発者はAIエージェントが参照するデータソースごとに接続方法を最適化する必要があったが、MCPを活用すればAIエージェントとさまざまなデータソースを単一のプロトコルで接続できるようになるとAnthropicは見込む。

 しかし、一部の有識者は“ある懸念”も示す。どのような懸念なのか。

有識者が示す“ある懸念”とは?

 Anthropicは、開発者向けに3つのコンポーネントを公開した。開発者はMCPサーバを通じてデータを公開するか、これらのサーバに接続するアプリケーション「MCPクライアント」を構築することで、AIエージェントとデータソースを接続できる。

  • MCPの仕様とSDK(ソフトウェア開発キット)
  • AIチャットbot「Claude」のデスクトップアプリケーションを使用したローカルMCPサーバのサポート
  • MCPサーバのオープンソースリポジトリ

 Anthropicは、MCPによって「最先端の生成AIモデルがより高精度の応答を生成できるように支援する」と説明する。

 しかし、米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)のプリンシパルアナリスト、マーク・ベキュー氏は「MCPを業界の標準プロトコルと定めることは単独のベンダーだけでは不可能だ」と指摘する。ベキュー氏は「標準プロトコルであると定めるには、ユーザーのコミュニティーがその取り組みに賛同し、協力し合う必要がある」と主張する。

 標準であるという認証は、IBMやMeta Platformsなどが共同で発足した「AI Alliance」のようなコミュニティーが実施するのが望ましいと、ベキュー氏は主張する。単独のベンダーによるのではなく、複数ベンダーが合意の上、取り決めるものだからだ。

 Anthropicは、MCPを共同のオープンソースプロジェクトにすることを約束し、他ベンダーからのフィードバックを期待していると説明する。

データセキュリティの懸念も浮上

 このような懸念はあるが、AIモデルをデータソースに効率よく接続したい開発者にとってMCPは役立つと、南カリフォルニア大学(University of Southern California)でコンピュータサイエンス分野のアソシエートプロフェッサーを務めるショーン・レン氏は述べる。同氏はブロックチェーンとAI技術のベンダー、Sahara AIのCEOも務める。

 ただし、Anthropicはエンドユーザーのプライバシー保護やデータセキュリティについては言及していないとレン氏は指摘する。レン氏によると、MCP自体はオープンソースだが、エンドユーザーはAnthropicのClaudeを通じてデータにアクセスせざるを得ない。

 レン氏は「エンドユーザーはMCPを使用する際に注意が必要だ」と主張する。「エンドユーザーのプライベートなデータへのアクセスを許可することになる。Anthropicがそれらのデータを他の用途に使用するかどうか、明確な説明がない」と同氏は続ける。

 Anthropicの広報担当者は「Anthropicは、デフォルトではエンドユーザーのデータを学習に使用していない。エンドユーザーがアップロードしたデータが、AIモデルの学習に使用されることはない」と弁明する。

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