AI規制は乱立したまま? 2025年に押さえておくべき生成AIのトレンド5選生成AIを取り巻く10大変化【後編】

「生成AIに関する法規制はこれからどうなるのか」など、2025年、生成AIの導入や活用を進める企業が知っておきたい生成AIのトレンドを5つ紹介する。

2025年03月29日 06時00分 公開
[Mary K. PrattTechTarget]

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 「生成AI」(AI:人工知能)に投資した分、どれほどの成果を得ることができるのか──。一部の経営層からそのような声が上がっていると複数の調査レポートが明らかにした。これは、生成AIの活用が、実験段階から投資対効果(ROU)を測るべき段階になりつつあることを示唆している。

 これから生成AIへの投資、成果の創出に取り組む経営層が知っておくべき情報にはどのようなものがあるのか。前編に続き、2025年の生成AIトレンド5選を紹介する。

2025年、生成AIのトレンドはこう変化する

6.AIエージェントが普及する

 コンサルティング企業Boston Consulting Group(BCG)のテクノロジー・デジタルアドバンテージ部門でグローバルリーダーを務めるブラド・ルキッチ氏は、2025年の重要事項として「AIエージェント」の展開を挙げる。AIエージェントとは、人間の直接的な介入なしに自律的に動作するプログラムを指す。

 BCGのグローバル調査「AI Radar」によると、回答者の67%は「AIによる変革の一環としてAIエージェントの導入を検討している」と回答している。同調査は2024年9月〜12月、企業の最高経営幹部(CxO)1803人を対象に実施した。

 コンサルティング企業/国際会計事務所KPMGが2025年1月に公開した調査レポート「AI Quarterly Pulse Survey」によると、「2025年は、企業全体でAI技術の活用を進める好機であり、その実現手段としてAIエージェントが注目されている」という。調査結果によると、51%の企業がAIエージェントの活用を検討している。この調査は、年間売り上げ10億ドル以上の米国企業の経営幹部や管理職100人を対象にしたものだ。

7.マルチモーダルAIの利用が拡大する

 「2025年、マルチモーダルAIの利用は拡大する」。DX支援を手掛けるグローバルサービス企業GenpactのグローバルAIプラクティス、イノベーション担当上級副社長、スリーカンス・メノン氏はこう指摘する。マルチモーダルAIは、テキストや音声などの数種類のデータを組み合わせて処理するAI技術だ。

 調査会社Gartnerも、メノン氏と同様の指摘をしている。同社が2024年9月に発表した予測によると、生成AIサービスにおけるマルチモーダルAIの割合は2023年時点では1%だったが、2027年には40%に増加する見通しだ。

8.「責任あるAI」への疑念は続く

 生成AIは社会のさまざまな場面で使われるようになった。一方、出力の精度や利用法には懸念が存在している。

 こうした懸念に対処し、倫理的かつ法的に許容される範囲で生成AIを使えるようにするため、「責任あるAI」(公平性や透明性、安全性の確保を考慮したAI技術)という考え方を具現化しようと取り組む企業が出てきた。

 メノン氏は「責任あるAIはますます重要になっている。ステークホルダーからの信頼を高めるからだ」と指摘する。

 インドのITサービス事業者HCL Technologies と科学技術誌『MIT Technology Review』傘下の『MIT Technology Review Insights』が2025年1月に発表した調査レポートによると、回答者の87%が責任あるAIの重要性を指摘している。これは、2024年11月、グローバルな企業の経営幹部や管理職250人に調査した結果に基づく。

9.AI規制は乱立した状態が続く

 米国やEU(欧州連合)など各国政府は、AIに関する規制の策定を進めている。

 ITコンサルティング企業Thoughtworksの最高AI責任者、マイク・メイソン氏は「2025年は『AI規制にどう対応するか』が関心事となる」と指摘する。

 メイソン氏によると、規制の内容は国や地域によって異なり、全てのAI規制に通用する生成AIの使い方や戦略を構築することは困難だ。そのため、企業は複数のアプローチを用意することになる。例えば、欧州連合(EU)の「AI法」(Artificial Intelligence Act)や米国のAI規制それぞれを順守するためのアプローチが必要となる。

10.生成AIがサイバーセキュリティに影響を与える

 サイバーセキュリティでは、生成AIを使った効率的なインシデントの検出や対処が実施可能だ。

 しかし、インディアナ大学ケリービジネススクール(Indiana University Kelley School of Business)の准教授でデータサイエンス・人工知能研究所所長のサガー・サムタニ氏は、「企業での生成AI活用はリスクもある」と指摘する。悪意のある攻撃者が多様な方法でAIモデル自体を攻撃する恐れがあるためだ。企業のセキュリティ部門の責任者や経営陣は、防御を強化する必要がある。

 BCGのルキッチ氏によると、一部の攻撃者は生成AIを悪用した攻撃を仕掛け、「既知の未知」(企業のセキュリティ部門が攻撃の存在自体は把握していても、その手法や攻撃を受けた場合の影響は分からない状態)を作り出すという、新たな攻撃法を見いだしている。

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