消費者保護団体が70億ポンドの補償を求めてGoogleを提訴した。同団体はGoogleの広告モデルやAppleとの商業契約を問題視している。具体的にどのような点に問題があるのか。
米司法省(DOJ)がGoogleに対する反トラスト法(独占禁止法)訴訟で勝訴したことに続き、Googleに対して70億ポンドの補償を求める集団訴訟が起きた。消費者保護団体Consumer Voiceの共同創設者ニッキー・ストップフォード氏と法律事務所Hausfeld & Co が提訴した。Googleは取り下げを求めたが、英国競争審判所(CAT)は提訴自体は認めた。
Googleに対する訴えは2つの内容から成る。1つはGoogleの広告モデルとスポンサー付き検索に関するもの、もう1つはGoogleとAppleとの商業契約に関する内容だ。Googleのどのような点を問題視しているのか。
ストップフォード氏らが問題視する1つ目の内容は、広告主が自身の広告をGoogle検索結果の上位に表示させるためGoogleに料金を支払っている点だ。
競争・市場庁(CMA:Competition & Markets Authority)の市場調査レポート「オンラインプラットフォームとデジタル広告」(Online platforms and digital advertising)によると、Google検索事業の資本利益率は、2018年時点で約40%だった。CMAはこの値について「合理的な競争基準を上回っている」と結論付けている。
ストップフォード氏は「Googleは広告に高い料金を課している。広告料金が高いということは、そのコストが広告主の製品やサービスに反映されるということだ」と指摘する。
同氏によると、Google検索はオンライン検索のシェアの大部分を占め、広告主にとって選択肢はほとんどないという。「企業のほとんどが自社製品の宣伝にGoogleの広告を利用する結果、広告費用は高くなり、そのコストが製品価格に転嫁される。消費者が店頭で購入するかオンラインで購入するかにかかわらず、広告費用は商品の価格に上乗せされる」とストップフォード氏は主張する。同氏によると「消費者は約70億ポンドを余計に支払っている」という。
ストップフォード氏は、GoogleとAppleの商業契約も問題視する。同氏は「iPhoneをはじめとするAppleのデバイスでGoogleをデフォルトの検索エンジンにするために、GoogleはAppleに数十億ドルを支払っている」と指摘する。
これはGoogleに勝訴したDOJの主張と同様だ。米連邦地方裁判所は2024年8月、Alphabetがオンライン検索市場を独占しようとした行為は違法であるとの判決を出した。判事のアミット・メータ氏は、SamsungやAppleのスマートフォンでGoogle検索をデフォルトに設定するよう、数十億ドルを支払う契約を結んでいることを「反競争的」と判断した。
Googleが直面するもう一つの潜在的なリスクは、CMAが「2024年デジタル市場・競争・消費者法」(Digital Markets, Competition and Consumers Act、以下DMCCA)を基に主要なプロバイダーを規制する可能性があることだ。
CMAは、モバイルブラウザ市場への介入が必要かどうかを検討していると発表した。この方針は、AppleとGoogleの両方に影響を与え得る。CMAは2024年11月、「モバイルブラウザとクラウドゲーミングに関する暫定決定報告書」(Mobile Browsers and Cloud Gaming Provisional decision report)を発表し、モバイルブラウザに関する複数の技術が市場の競争を阻害していると指摘した。
報告書は「Appleのさまざまな方針が他ブラウザによるイノベーションを抑制している」と指摘する。報告書が挙げる問題点の一つは、AppleのOS「iOS」で動作するWebブラウザは、Appleが開発するHTMLレンダリングエンジン「WebKit」を使用しなければいけない点だ。このことが競合他社による機能提供を制限していると報告書は主張する。
AppleがWebKitを使用する競合モバイルブラウザに対し、AppleのWebブラウザ「Safari」と同程度の機能を提供するのを遅らせた、もしくはアクセスを拒否した可能性があるとも指摘している。
報告書によると、Googleの製品設計もWebブラウザの市場競争を「著しく困難」にしているという。DMCCAに基づき、CMAはAppleやGoogleの間で市場競争が機能しているかを検討できるようになる。
CMAの独立調査グループの議長を務めるマーゴ・デイリー氏は、「調査を通じて、モバイルブラウザ間の競争がうまく機能しておらず、英国のイノベーションが阻害されていることが浮き彫りになった」と述べる。
Appleは報告書に対して、次のように主張する。「Appleは、イノベーションが進む活気のある市場を信じている。われわれは全ての事業領域、地域で競争に直面している。われわれが常に重視しているのはエンドユーザーからの信頼だ。報告書の調査結果には同意できない」
Appleは「DMCCAに基づくCMAの将来的な介入が、エンドユーザーのプライバシーとセキュリティを損ねることを懸念している」とも指摘する。「Appleが他社と差別化する技術を開発することを妨げるとも懸念している」として、CMAと「建設的に協力していく」という。
世界中の数十億人がサービスを利用しているApple、Googleと、彼らを規制しようとする米国、英国の規制当局との対決の舞台が整った。
2024年3月に施行された欧州連合(EU)のデジタル市場法(DMA:Digital Markets Act)に基づき、GoogleはモバイルOS「Android」の仕様を変更した。この結果、エンドユーザーはデフォルトのWebブラウザや検索エンジン、決済プロバイダーを選択できるようになった。Appleも同様にiOSの仕様を変更した。
DOJは2024年11月、Googleに対してWebブラウザ「Google Chrome」(以下、Chrome)の売却やAndroidの分割を求める是正案を米連邦地方裁判所に提出した。
規制当局の調査とストップフォード氏の訴えには類似点がある。Googleの検索エンジンに関連するビジネス慣行の調査に加えて、DOJはGoogleがアドテクノロジー(広告技術)市場を独占しているかどうかも調査している。
AppleとGoogleの両社は、現状維持を選択する理由としてセキュリティを挙げる。2024年7月には、セキュリティベンダーCrowdStrikeのソフトウェアで不具合があり、MicrosoftのOS「Windows」搭載デバイスの世界的な障害が発生した。このことは市場の透明性と、大規模なセキュリティ障害のリスクのバランスを取る上で教訓になる。
しかし規制当局が問題視するのは、消費者が既存のモバイルブラウザの選択に満足しているかどうか、そしてインターネット検索とアドテクノロジー市場が混迷する中、メリットを得られているかどうかだ。
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