米司法省がGoogleに是正案を提出した。Webブラウザ「Chrome」売却や「Android」の分割を主題とするものだ。有識者はこの動きをどのように捉えているのか。
米司法省(DOJ)は2024年11月20日(現地時間)、Googleに対してWebブラウザ「Google Chrome」(以下、Chrome)の売却やモバイルOS「Android」の分割を求める是正案を米連邦地方裁判所に提出した。オンライン検索市場で高いシェアを誇るGoogle検索に対して、米連邦地裁が反トラスト法(独占禁止法)違反を認定したためだ。一方、Chromeの売却は実現しないと主張する有識者もいる。その理由は何か。
コーネル大学(Cornell University)ロースクールの教授エリック・ホーヴェンカンプ氏は米TechTarget編集部に対し、「独占禁止法に関する裁判で裁判所が事業の分割を命じることはほとんどない」と話す。「企業の独占行為を抑制する上でより簡易な方法がある場合、裁判所はそちらを選ぶ傾向にある」(ホーヴェンカンプ氏)
「ほとんどの裁判官は、人気も利用する価値もあるサービスを提供するGoogleの事業を解体することを望んでいない」とホーヴェンカンプ氏は付け加える。「企業の悪質な行為を排除しながら、事業そのものは維持させる可能性がある」(同氏)
是正案は、Googleによる競合企業や市場参入者への出資、買収を禁じる提案も盛り込む。Googleが自社サービスを優遇する行為や第三者との排他的契約を結ぶことを防止するほか、オンライン検索市場の競争を促す重要なデータを公開することも求めた。是正案の監督を務めるのは、連邦地方裁判所判事アミット・メータ氏だ。同氏は2024年8月、Googleがオンライン検索市場における独占を違法に維持していると判決を下した。
司法省の是正案に対し、Googleのグローバルアフェアーズ担当プレジデントおよび最高法務責任者であるケント・ウォーカー氏は2024年11月に声明を公開した。「DOJの提案は過激で、介入的な政策を押し付けるものだ。米国の技術分野での国際的なリーダーシップを損ねるものでもある」と反論する。さらに「是正案は裁判所の決定をはるかに超えたものであり、人々の日常生活で愛用されているGoogleの製品やサービス群、特に検索以外の製品やサービスにも影響を与える」と指摘する。
「Webサイトやアプリケーション、検索エンジン、ソーシャルメディア、オンライン広告、電子商取引(EC)、クラウドサービスといったオンラインエコシステムを構成するさまざまな要素に与える影響を分析し切れていない」。情報技術・イノベーション財団(ITIF:Information Technology and Innovation Foundation)のバイスプレジデント兼ディレクター、ダニエル・カストロ氏は是正案をこう批判する。「DOJは競争の構造的な問題に対処するよりも、単に事業を壊そうとしているだけに見える」
DOJの是正案が人工知能(AI)に言及していることにも、カストロ氏は懸念を示す。是正案は、GoogleがAI技術を用いる新たな検索サービス企業を買収することを禁じている。他社には存在しない制限をGoogleに課せば、Googleの競争力が制限され、他の企業と同じ条件で競争することが難しくなる。
2024年11月の米国大統領選で当選したドナルド・トランプ氏が率いる新政権の動きが、DOJの是正案に影響を与える可能性もある。Googleは12月に独自の救済策を提出する予定であり、この訴訟は2025年まで続く見込みだ。
「トランプ新政権はDOJの戦略を覆す可能性が高い」。マーケティング企業「SOCi」のマーケットインサイト部門のディレクター、ダミアン・ロリソン氏はこう述べる。
DOJが勝訴すれば、Googleには大きな打撃となる。「政府が標的にしている他の大手IT企業にも同様の厳しい規制が適用される恐れがある」とロリソン氏は指摘する。
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
複雑なITアーキテクチャの管理に加えて、イノベーション創出のサポート、サービスおよびリソース提供の迅速化を求められるITチーム。この状況から脱却するためには、自社にとって最適な形のIT自動化戦略の実践が不可欠となる。
管理職の対話型マネジメントによる組織力の活性化を目的に、「1on1」を導入する企業が増えている。しかし、さまざまな課題も浮上している。最先端のAI技術で、客観的に1on1を分析し、PDCAを回して改善ができる1on1支援ツールを紹介する。
EC関連の年間売り上げが400億円を超えるなど、「個客」本位のアプローチが実を結びつつある三越伊勢丹グループ。好調の要因の1つが、2021年に導入したオブザーバビリティプラットフォームの活用だ。同社の取り組みを詳しく紹介する。
店舗運営において多様な決済手段に対応すべく決済端末の見直しを進めている事業者は多い。顧客の決済体験を向上させるには、自社に適した端末選びが重要だ。5種類の決済端末を取り上げ、会計スタイルごとの利用方法やメリットを紹介する。
イタリアンレストランなど16の飲食店を運営するCLASSIC HD INC.。同社は飲食業界において、従業員の高い定着率と長い勤続年数を実現する仕組みを構築し、データ分析と情報共有を活用して経営の意思決定や業務改善を迅速化しているという。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...