Googleの「Chrome」売却が“あり得ない”これだけの理由米司法省が是正案を提出

米司法省がGoogleに是正案を提出した。Webブラウザ「Chrome」売却や「Android」の分割を主題とするものだ。有識者はこの動きをどのように捉えているのか。

2024年11月22日 16時20分 公開
[Makenzie HollandTechTarget]

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 米司法省(DOJ)は2024年11月20日(現地時間)、Googleに対してWebブラウザ「Google Chrome」(以下、Chrome)の売却やモバイルOS「Android」の分割を求める是正案を米連邦地方裁判所に提出した。オンライン検索市場で高いシェアを誇るGoogle検索に対して、米連邦地裁が反トラスト法(独占禁止法)違反を認定したためだ。一方、Chromeの売却は実現しないと主張する有識者もいる。その理由は何か。

Chromeの売却は“あり得えない”といえる理由

 コーネル大学(Cornell University)ロースクールの教授エリック・ホーヴェンカンプ氏は米TechTarget編集部に対し、「独占禁止法に関する裁判で裁判所が事業の分割を命じることはほとんどない」と話す。「企業の独占行為を抑制する上でより簡易な方法がある場合、裁判所はそちらを選ぶ傾向にある」(ホーヴェンカンプ氏)

 「ほとんどの裁判官は、人気も利用する価値もあるサービスを提供するGoogleの事業を解体することを望んでいない」とホーヴェンカンプ氏は付け加える。「企業の悪質な行為を排除しながら、事業そのものは維持させる可能性がある」(同氏)

 是正案は、Googleによる競合企業や市場参入者への出資、買収を禁じる提案も盛り込む。Googleが自社サービスを優遇する行為や第三者との排他的契約を結ぶことを防止するほか、オンライン検索市場の競争を促す重要なデータを公開することも求めた。是正案の監督を務めるのは、連邦地方裁判所判事アミット・メータ氏だ。同氏は2024年8月、Googleがオンライン検索市場における独占を違法に維持していると判決を下した。

 司法省の是正案に対し、Googleのグローバルアフェアーズ担当プレジデントおよび最高法務責任者であるケント・ウォーカー氏は2024年11月に声明を公開した。「DOJの提案は過激で、介入的な政策を押し付けるものだ。米国の技術分野での国際的なリーダーシップを損ねるものでもある」と反論する。さらに「是正案は裁判所の決定をはるかに超えたものであり、人々の日常生活で愛用されているGoogleの製品やサービス群、特に検索以外の製品やサービスにも影響を与える」と指摘する。

トランプ新政権が及ぼす影響は

 「Webサイトやアプリケーション、検索エンジン、ソーシャルメディア、オンライン広告、電子商取引(EC)、クラウドサービスといったオンラインエコシステムを構成するさまざまな要素に与える影響を分析し切れていない」。情報技術・イノベーション財団(ITIF:Information Technology and Innovation Foundation)のバイスプレジデント兼ディレクター、ダニエル・カストロ氏は是正案をこう批判する。「DOJは競争の構造的な問題に対処するよりも、単に事業を壊そうとしているだけに見える」

 DOJの是正案が人工知能(AI)に言及していることにも、カストロ氏は懸念を示す。是正案は、GoogleがAI技術を用いる新たな検索サービス企業を買収することを禁じている。他社には存在しない制限をGoogleに課せば、Googleの競争力が制限され、他の企業と同じ条件で競争することが難しくなる。

 2024年11月の米国大統領選で当選したドナルド・トランプ氏が率いる新政権の動きが、DOJの是正案に影響を与える可能性もある。Googleは12月に独自の救済策を提出する予定であり、この訴訟は2025年まで続く見込みだ。

 「トランプ新政権はDOJの戦略を覆す可能性が高い」。マーケティング企業「SOCi」のマーケットインサイト部門のディレクター、ダミアン・ロリソン氏はこう述べる。

 DOJが勝訴すれば、Googleには大きな打撃となる。「政府が標的にしている他の大手IT企業にも同様の厳しい規制が適用される恐れがある」とロリソン氏は指摘する。

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