iPhoneの市場独占だけじゃない Appleが訴えられた“これだけの理由”Appleの訴訟の歴史を振り返る【後編】

Appleはさまざまな訴訟を経験してきた。規制当局や企業、消費者はさまざまな理由で同社を訴えてきたのだ。その歴史をまとめた。

2024年07月06日 07時00分 公開
[Sean Michael KernerTechTarget]

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 米司法省(DOJ)は2024年3月21日(現地時間)、Appleを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴した。同社がスマートフォン市場における「iPhone」の独占的な地位を利用し、公正な競争を妨げたというのが理由だ。

 これはAppleにとって初めての訴訟ではない。同社は過去にさまざまな訴訟を経験してきた。規制当局や企業、消費者は何を理由に同社を訴えたのか。その歴史をまとめた。

企業や消費者は、何を理由にAppleを訴えてきたのか

2010年、DOJは従業員の給与を巡ってAppleの他にGoogle、Intel、Adobeなどを反トラスト法違反の疑いで提訴。これら企業が優秀な人材の奪い合いを制限する契約を相互に交わした結果、従業員が雇用機会を得る機会が失われていると主張した。

その6年後の2016年、DOJはAppleに対して、電子書籍の価格操作を巡って反トラスト法違反の疑いで提訴した。このときは、AppleがDOJに4億5000万ドルを支払った。

iPhoneのバッテリー管理や、故障が続出していたクライアントデバイス「MacBook」のバタフライキーボードの設計を巡り、消費者もAppleを提訴している。オンラインゲーム「Fortnite」を開発するEpic Gamesや音楽配信サービス「Spotify」を運営するSpotify Technologyなども、アプリケーションストア「App Store」の非競争的な問題を争点にAppleを訴えた。

 Appleに対する反トラスト法違反の疑いの訴訟は、次の通りだ。

Appleの「iPod」「iTunes」を巡る独禁法違反訴訟

2005年の訴訟では、Appleが携帯型音楽プレーヤー「iPod」の販売と音楽ストア「iTunes Store」での楽曲の販売において違法行為を実施し、連邦および州の反トラスト法に違反したとされた。

AppleとAT&T Mobilityを相手取った独禁法違反の集団訴訟

2007年の訴訟では、Appleと通信事業者のAT&T MobilityがiPhoneに関する独占契約を結んだとされ、これが反トラスト法違反に当たると申し立てられた。

欧州での独占禁止法違反調査

EU(欧州連合)は、AppleがApp Storeでの音楽ストリーミングアプリケーションの配信に関して、市場で支配的な地位を乱用していると主張。独占禁止法違反の疑いで、2001年に調査を始めた。

電子書籍の価格操作を巡る訴訟

2016年、Appleが5社の大手出版社と共謀して電子書籍の価格を引き上げたとして提訴された。

Epic Gamesによる訴訟

2020年、Epic GamesはApp Store以外ではモバイルOS「iOS」向けアプリケーションの配信が妨げられているとして、Appleを提訴した。この訴訟では、iOS搭載デバイスを使用するエンドユーザーがアプリケーション内でアイテムを購入するためには、Appleのアプリケーション内決済システムを使用しなければならないことも争点になっている。

 消費者によるAppleに対する集団訴訟には、次のような事例がある。

テクニカルサポートに関する集団訴訟

2016年の訴訟は「Maldonado v. Apple」と呼ばれている。消費者がAppleのサポートサービス「AppleCare」と「AppleCare+」を巡って提訴した。消費者はAppleに対し、AppleCareが保証するレベルのサービスを提供していないと主張した。

iPodのバッテリー持続時間に関する集団訴訟

2003年に起きた訴訟では、AppleがiPodの内蔵充電式バッテリーの能力を偽って伝えていると提訴された。

iPodとiPhoneのプライバシーに関する集団訴訟

Appleがプライバシー設定に反し、同意なくエンドユーザーのアクティビティー(行動履歴)を記録していると訴えられている。

iTunesの価格切り替えに関する集団訴訟

2009年、AppleがiTunes StoreでiTunesギフトカードを販売し、エンドユーザーは1曲当たり0.99ドルで購入できると説明したにもかかわらず、カード販売後に特定の曲の価格を1.29ドルに値上げしたとして訴えられた。

iPhoneの速度低下に関する集団訴訟

2018年の「Batterygate」と呼ばれる訴訟では、特定モデルのiPhoneのiOSアップデートによって、処理速度が低下し、バッテリーが劣化すると申し立てられた。

 取引慣行の面でも、Appleは2021年に集団訴訟を受けている。

取引慣行に関する訴訟

 この訴訟では、AppleとAmazon.comがEC(電子商取引)サイト「Amazon Marketplace」からApple製品の再販業者を事実上排除する契約を結び、再販業者の競争を阻害したことでiPhoneとiPadの価格高騰を招いたとされている。

 Appleは名誉毀損(きそん)でも提訴されている。

名誉棄損に関する訴訟

 1994年、Appleと天文学者カール・セーガン氏の名誉毀損を巡る訴訟が始まった。AppleがPC「Power Macintosh 7100」の社内コードネームに同氏の名前(Carl Sagan)を使用したことが要因だ。このコードネームは、同氏のキャッチフレーズ「無数の」(billions and billions)に由来し、Appleに無数の利益をもたらすよう願いを込めて名付けられた。

 訴えを受け、Appleはコードネームを「Butt-Head Astronomer」(まぬけな天文学者)の略である「BHA」に変更したが、セーガン氏はこの名前も名誉毀損に当たるとして提訴している。

 Appleは、商標に関しても、次のように提訴されている。

「Apple Music」の商標の取り消し

Appleによる商標「Apple Music」の使用を巡り、ジャズミュージシャンのチャールズ・ベルティーニ氏との訴訟に発展した。同氏は1985年から自身のコンサートに「Apple Jazz」ブランドを使用しており、「Apple Music」の商標を登録したAppleに反発し、2016年に提訴している。

Apple Corpsの商標

1978年以降、複数回の訴訟が繰り広げられた。英国のロックバンドBeatlesが設立した会社Apple Corpsは、Appleによる「Apple」という名称とそのロゴの使用がApple Corpsの商標を侵害していると主張した。

ドメイン名を巡る争い

Appleは、Appleの商標を侵害すると考えられるさまざまなドメイン名を巡る訴訟を複数経験している。2002年には「appleimac.com」、2005年には「itunes.co.uk」、2012年には「iPhone5.com」について、ドメイン名を巡る訴訟が起きている。

Appleは著作権を巡る争いとも無縁ではない。創設当初の事例を以下に挙げる。

Apple対MicrosoftおよびHewlett-Packard Company

1998年、AppleはMicrosoftとHewlett-Packard Companyに対し、両社がAppleの著作権を侵害しているとして提訴した。MicrosoftのOS「Windows 2.0」のオーバーラップウィンドウ(画面上でウィンドウ同士を重ねられる機能)やサイズ変更可能なウィンドウが著作権を侵害していると主張した。

Xerox対Apple

1989年、Xerox CorporationはAppleのGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)が同社の著作権を侵害しているとして提訴した。

 Appleは特許に関する訴訟を複数回経験しており、関連する技術や係争相手もさまざまだ。幾つかの事例を以下に挙げる。

Apple対Samsung

2011年、Appleはスマートフォンとタブレットのデザインおよび機能に関連する特許を侵害しているとして、Samsung Electronicsを訴えた。

Masimo対Apple

2023年、MasimoはAppleのスマートウォッチで使われている血中の酸素濃度を測定するセンサーの技術が特許を侵害しているとして提訴した。


以上の事例では、ほぼ全ての訴訟で和解が成立している。

DOJによる訴訟は何をもたらすのか

 2024年3月のDOJによる訴訟は、スマートフォン市場に影響を及ぼす可能性がある。

 訴訟の背景には、競争が促されないことにある。DOJが勝訴すれば、スマートフォン市場での競争が激化することが考えられる。メッセージの送受信の点では、他社デバイスとの相互運用性に影響が及ぶ。Appleはメッセージングアプリケーション「iMessage」を提供し、エンドユーザーの囲い込みを実施しているが、この関係性が変わり得る。

 今回の訴訟では、アプリケーションのサブスクリプションやアプリケーション内での購買に対し、Appleが開発者に課している手数料についても、DOJが言及している。こうした手数料はエンドユーザーに転嫁されるケースがあるため、この慣行が変わればアプリケーションやサービスの価格が下がる可能性がある。

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