なぜ「Mac」は“業務用マシン”として扱いにくいのかmacOS管理者を救う「mSCP」とは【後編】

企業で「macOS」搭載デバイスを使う際、IT管理者にはクライアントデバイスやOSを適切に管理することが求められる。macOSを導入する場合は、そうした運用面での“ある問題”に向き合わなければならない。

2024年04月13日 08時00分 公開
[Robert SheldonTechTarget]

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 企業がAppleのクライアントOS「macOS」搭載デバイスである「Mac」を業務用のクライアントデバイスとして利用することは珍しいことではない。だがIT管理者の負担になってしまう“運用面でのある問題”があることから、企業はMacの導入をためらってしまうことがある。適切に運用するためには、macOSのどのような問題に向き合えばいいのか。

「Mac」が“業務用マシン”として扱いにくい理由

 企業がMacを利用する上で、OSのアップデートや自社のセキュリティ要件に合わせたセキュリティ設定を適用する作業は避けられない。企業がMacを運用する上では、そうしたセキュリティ設定の作業に手間が掛かってしまうことが問題になる。

 この問題を解消し得るオープンソースプロジェクトが「macOSセキュリティコンプライアンスプロジェクト」(mSCP)だ。mSCPは、セキュリティベースライン(システムのセキュリティを確保するための初期設定の集合)の作成に活用できるスクリプト(簡易プログラム)や設定プロファイル、ドキュメント、監査チェックリストといったリソースを提供する。

 macOSシステムのセキュリティを確保するには、設定反映用のスクリプト、設定プロファイル、設定に関するドキュメントが必要だ。mSCPはそのためのセキュリティベースライン(システムのセキュリティを確保するための初期設定の集合)、ルール、スクリプトなどのコンポーネントをIT管理者に提供する。mSCPは以下の目標を実現することを目指している。

  • AppleのOSやハードウェアの登場スケジュールに合わせ、セキュリティ設定に関するガイドラインを迅速に標準化、公開する
  • 企業が許容できるリスクに応じて幅広くカスタマイズできるセキュリティベースラインを作成する
  • 自社の要件に合わせてセキュリティベースラインをカスタマイズできるようにする
  • 従来個別の機関が実施していたコンプライアンスへの対処を1つのプロジェクトに集約する
  • IT担当者がどのツールを使用しているかにかかわらず、同じアプローチでセキュリティ設定、評価ができるようにする
  • セキュリティベースライン作成者の不要な作業を減らすため、作業用のテンプレートを作成する
  • Appleやサードパーティーが、Macユーザーのセキュリティに関するニーズを把握できるようにする

mSCPの使い方

 Appleは通常macOSの新バージョンを毎年公開する。つまりIT管理者は毎年セキュリティ設定を見直す必要があるということだ。mSCPのリソースは、IT管理者が自社システムのアップグレードとセキュリティ対策を高速化する上で有効だ。自社が従うべきコンプライアンス基準を選び、それに合わせてセキュリティベースラインをカスタマイズし、設定プロファイルとそれを適用するためのスクリプトを作成してMacに適用する、という一連の作業をスムーズに実行できる。

 設定プロファイルやスクリプトといったファイルを生成するには、GitHubのmSCPリポジトリをローカルのmacOS搭載デバイスにクローンする必要がある。「Python」「Ruby」といったプログラミング言語の実行環境や、必要に応じてIDE(統合開発環境)「Xcode」もインストールする。その後、ベースラインガイドを選択して必要なファイルを生成し、それをmacOSマシンに適用できる。

 特定バージョンのmacOSに合わせてセキュリティベースラインをカスタマイズすることも可能だ。mSCPのリソースを活用すると、対象バージョンに必要なファイルを自動生成できる。セキュリティ設定に関するドキュメントも自動生成できるため、これを社内のチームや監査担当者と共有するとよい。

 mSCPチームはリソースを継続的に評価・更新し、macOSのメジャーバージョン公開に合わせて新しいリソースを公開している。mSCPのリソースを利用しない場合、IT管理者は自身でコンプライアンス準拠のための作業プロセスを設計、テスト、実装、管理すしなければならない。mSCPのリソースを利用すれば、セキュリティベースラインや設定ルールの検証、管理をmSCPチームに任せることができるため、IT管理者は戦略的な取り組みに集中できるようになる。

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