“大ヒット商品”に隠された「画像生成AI」の秘密とは? デザイナーが明かすAI×ファッションの可能性【前編】

クリエイティブ分野でのAI活用には賛否両論がある中で、“ある画像生成AI”を使ってヒット商品を生んでいるデザイナーがいる。デザイン制作に生成AIをどう活用しているのか。

2024年04月12日 08時30分 公開
[Esther AjaoTechTarget]

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 ビジネスにおける生成AI(エンドユーザーの指示を基にテキストや画像、音声などのデータを生成する人工知能技術)の活用が急速に進み、その活用分野はファッション業界にも広がっている。

 2023年12月に開催されたカンファレンス「AI Summit New York 2023」では、生成AIを駆使してデザイン制作を手掛けるファッションデザイナーOpé M氏が壇上に上がった。同氏は、ある「画像生成AI」を使ってヒット商品が生まれるようになった経緯や、生成AIとの向き合い方を語った。

“大ヒット商品”誕生の裏には「あの画像生成AI」があった

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 ナイジェリア出身で、近年はニューヨークで活動するOpé氏は従来、生成AIや仮想空間「メタバース」といった技術がファッション業界にもたらす影響に関心を寄せていた。同氏はまず、AIベンダーOpenAIの画像生成AIサービス「Dall-E」でデザインの生成を始めた後、別の画像生成サービス「Midjourney」を使うようになった。

 AIツールの扱いに慣れてきた頃、2023年4月にニューヨークで開催された「New York AI Fashion Week 2023」のコンペティションに応募。アパレルブランドのRevolveと提携して、Midjourneyで生成したデザインを発表し、3位に入賞した。Opé氏のデザインは、RevolveのWebサイトで瞬く間に売り切れたという。

 入賞は期待していなかった、とOpé氏はコメントする。当時、同氏はAI技術によるビジュアルコミュニケーションの変革に着目していた。写真や画像を用いたビジュアルコミュニケーションは、アイデアの提案や共有といったデザイナーの業務に欠かせない。生成AIでイメージの生成や調整をすることで、そうしたコミュニケーションは効率的かつ円滑になる。

 Opé氏が着実に実績を積む中で、生成AIを使ったデザイン手法を非難する人もいたという。生成AIで成功するアーティストがいる一方で、生成AIを創造性や仕事を脅かす存在と見なすアーティストも存在する。「AIベンダーはアーティストの作品を盗んでいる」という声も一部で上がっている。

 これらの批判に対してOpé氏は懐疑的だ。同氏の考えでは、生成AIはあくまでアシスタントで、デザイナーの仕事を奪う存在ではない。「生成AIは、アイデアの提案や共有など、コミュニケーションに関わる作業を助けてくれる存在だ」(同氏)


 中編は、ファッション業界のユーザー体験向上に生成AIを活用する取り組みについて解説する。

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