消費者がサブスクリプションや会員登録を一度のクリックで解約できるようにする「Click-to-Cancel」を米連邦取引委員会が発表し、業界団体が異議を唱えている。双方の言い分は。
米連邦取引委員会(FTC)は2024年10月16日(現地時間)、消費者がサブスクリプション(定期契約)や会員登録を一度のクリックで解約できるようにする「Click-to-Cancel」の最終規則を発表した。消費者がサブスクリプションの契約や会員登録の申し込みと同程度、解約や退会をしやすくなるように企業に求めるものだ。連邦政府官報への公示から6カ月後 に発効される見通しだ。
このルールを巡って、業界団体が2024年10月23日(現地時間)、ルールの発効を阻止するための訴訟を起こした。双方の言い分は。
Click to Cancelの発表を受けて、ケーブルテレビ局やインターネットサービスプロバイダー(ISP)、全米自営業者連盟(NFIB:National Federation of Independent Business)をはじめとする業界団体は2024年10月23日、ルールの発効を阻止するため訴訟を起こした。
裁判の争点は、FTCがその法的権限の範囲を超えてClick to Cancelを制定したかどうか、連邦法が義務付けている公聴会やコメントの募集を実施しなかったかどうかだ。
広告主とパブリッシャーのコンソーシアムであるインターネット広告業界団体IAB(Interactive Advertising Bureau)は、FTCがClick to Cancelの経済的影響評価を適切に実施しなかったと批判する。IABの公共政策担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、ラーティーズ・ティフィス氏によると、Click to Cancelに準拠するには莫大(ばくだい)な費用がかかり、一部の中小企業は倒産に追い込まれる可能性がある。IABが提出した影響評価報告書をFTCが考慮しなかったとも同氏は主張する。
Click-to-Cancelの最終規則は、解約や退会に関するルール以外に、「ネガティブオプションルール」(Negative Option Rule)にも言及している。ネガティブオプションとは、消費者が明示的にサブスクリプションの契約や会員登録を解除しない限り、契約した状態が自動的に更新される仕組みだ。ネガティブオプションルールは、企業がネガティブオプションを前提とした商品やサービスを販売する際に、消費者に重要な情報を偽って伝えないように求めている。
ネガティブオプションルールを含む最終規則は230ページに及び、詳細な要件が定められている。こうしたルールを「Click to Cancelとまとめて呼ぶのは、内容を単純化し過ぎだ」とティフィス氏は指摘する。Click to Cancelが発効すれば、企業は割引セールを実施したり特別価格を設定したりすることが難しくなり、収益予測を立てづらいと同氏は説明する。
一方、FTCは消費者保護の観点からClick to Cancelは不可欠なルールだと主張する。
「企業が顧客の意思に反して支払いを続けさせるビジネスモデルは、米国人の経済的自由に対する脅威だ」。FTCのスポークスマン、ダグラス・ファラー氏は米TechTargetの取材にこう答える。「Click to Cancelは常識的な内容であり、法廷で闘う準備ができている」(同氏)
「FTCはClick to Cancelについて慎重に検討を進め、業界の意見を取り入れるべきだったというIABの主張は一理ある」――調査会社コンステレーションリサーチのバイスプレジデント兼プリンシパルアナリスト、リズ・ミラー氏はこう指摘する。一方、消費者保護の観点から、Click to Cancelに反対する立場を取ることは難しいと同氏は説明する。
「Click to Cancelの判決に関わらず、解約時に面倒な手続きを要求したり、解約を阻止するために延々と営業トークをしたりしない企業は、そうではない企業よりも結果的に成功する」とミラー氏はみている。
「一部の企業は、製品やサービスの解約ができない状態を作り出し、『6カ月間無料』といった理由で消費者を引き止めれば成功と考えている」とミラー氏は述べる。「この考え方は『LTV』(顧客生涯価値)や顧客体験(CX)への影響を考慮していない。クロスセル(関連商品の売り込み)やアップセル(上位モデルや高機能の提案)の可能性がなくなるだけだ」(ミラー氏)
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
中小企業にマーケティングオートメーションは本当に必要? ベンダー4社がぶっちゃけトーク
導入や初期設計の難しさから挫折してしまう企業も少なくないMAツールを中小企業に使いこ...
Metaに潰されないために残された生き残りの道は?――2025年のSNS大予測(Snapchat編)
若年層に人気のSnapchatだが、大人にはあまり浸透していない。一方で、AR(拡張現実)開...
「猛暑」「米騒動」「インバウンド」の影響は? 2024年に最も売り上げが伸びたものランキング
小売店の推定販売金額の伸びから、日用消費財の中で何が売れたのかを振り返るランキング...